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労働者派遣法見直しに関する連合の考え方


このコーナーの目次


労働者派遣法見直しに関する連合の考え方

(連合第25回中央執行委員会確認/2007年9月13日)

I.はじめに

 非正規雇用の増大を伴って雇用・就業形態の多様化が進展した。この背景には、国際競争の強まりによる企業側のニーズだけでなく労働者の意識の変化もある。しかし一方で、やむを得ず非正規雇用で働く労働者も多く、不安定雇用や低賃金など雇用の二極化も生じている。とくに労働者派遣や請負労働については、ワーキング・プアの温床となるなど極めて深刻な状況にある。
  こうした中で、政府の経済財政諮問会議の民間議員は「労働ビッグバン」を提唱し、労働者派遣制度についても、期間制限の撤廃、業務制限の廃止、雇用申し込み義務の撤廃等を掲げた。また、規制改革会議再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォースも同様の趣旨の提言を公表している。
  労働政策審議会・職業安定分科会・労働力需給制度部会においても、2003年改正法施行後のフォローアップ等を行い、法改正も見据えた議論を開始した。
  労働者派遣法施行後20年を経過し、雇用における格差問題に直面しているいま、どのような雇用・就業形態であっても、誰もが健康に充実して働き続けられるよう、格差の拡大・固定化に歯止めをかけ、是正をはかる政策が重要である。連合は、労働者派遣制度創設の趣旨と実態とのかい離、労働者の置かれた状況を十分に踏まえ、派遣労働者の雇用の安定と公正処遇を柱に据えた見直しを求めていく。

II.労働者派遣をめぐる現状と問題点

1.労働者派遣法の制定・改正経緯
  職業安定法は労働者供給事業を原則として禁止しているが、1985年に労働者派遣法が制定され、労働者供給事業の禁止の例外として、労働者派遣事業が制度化された。特定労働者派遣事業(常用型派遣のみを行う事業)は届出制、一般労働者派遣事業(登録型派遣も行う事業)は許可制とされ、適用対象業務は業務の専門性・雇用管理の特殊性を考慮して13業務に限定されていた。
  しかし、1999年の法改正では、対象業務はポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に変更され、原則自由化された。さらに、2003年の法改正では、物の製造業務が対象となり、派遣期間制限の上限も延長された。こうした規制緩和と平成不況下でのリストラを背景に、派遣労働は大きく拡大した。

2.労働者派遣をめぐる問題点
(1) 雇用の不安定さ
  専門業務での常用型派遣では、安定した雇用の中でキャリア形成も可能である一方で、登録型派遣は、派遣就労している間のみ派遣元との雇用関係があるものであり有期雇用契約であることがほとんどであることに加えて、派遣期間と派遣契約期間と雇用契約期間が一致せず、短期の細切れ契約も見られるなど、雇用が不安定である。
※派遣労働者の声※
「雇用が不安定である」「将来の見通しが立たない」「収入が不安定である」
「解雇や雇止めが不安」「正社員になれない」「契約が細切れで先の見通しが立たない」

<厚生労働省アンケート、連合生活アンケート等より>

(2) 賃金等の処遇問題
  処遇については、正規雇用と比べて低い水準にある。専門26業務の常用型派遣は年収360万円程度である一方、登録型は年収250万円弱にとどまっている。また、勤続による昇給や一時金がないことや通勤費の取り扱いなどへの不満の声が強い。社会保険の加入は各種調査では改善傾向が見られるが、未だ加入が徹底されていない実態もある。教育訓練は派遣元に責任があるが、とくに登録型派遣では十分に実施されてはいない状況にある。
※派遣労働者の声※
「経済的に安心な老後生活を持てない」「生活費をまかなう収入を得られない」
「派遣のため社会に認めてもらえない」
「経験や能力に応じて時給をアップしてほしい」「通勤交通費を支給してほしい」

<UIゼンセン同盟アンケート等より>

(3) 労働現場への影響
  製造現場等を中心に、偽装請負・違法派遣が依然として行われている。これは、職業安定法・労働者派遣法違反であるだけでなく、労働基準法や労働安全衛生法上の使用者責任が曖昧となる点でも大きな問題である。また、労働者派遣や請負の活用による混在職場においては、労災発生や技術・技能の伝承への影響などの問題が生じている。
  ※派遣労働者の労災事故の増加※
  東京労働局の調査(2007年)によれば、2006年度の派遣労働者(派遣元が東京都内)の死亡災害は2人(前年ゼロ)、死傷災害は401人(前年比49.6%増加)となっている。

(4) 「日雇い派遣」「スポット派遣」
  携帯電話により派遣先の指定等を行う「日雇い派遣」「スポット派遣」が若者を中心に広がり、いわゆる「ネットカフェ難民」にもつながり社会問題化している。これは労働者派遣法が想定していなかった形態での事業であるとともに、その雇用の不安定さや劣悪な労働条件も指摘されている。

III.労働者派遣法見直しの視点

1.雇用の原則 
  労働基準法第5条は強制労働の禁止、第6条は「業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と中間搾取の排除を定め、職業安定法第44条は、労働の強制、中間搾取、使用者責任の不明確化などの弊害を伴いがちであることから、労働者供給事業を禁止している。そもそも民法においては、雇用は二当事者間の有償双務契約であり、労働者の承諾なく第三者にその権利を譲渡できないとし、直接雇用が雇用の基本原則であるとしている。
  また、人間らしい生活を享受できる雇用関係としては、解雇制限規定があった上での期間の定めのない雇用契約、一日8時間労働、社会・労働保険が適用されることなどが求められる。期間の定めのない雇用が原則であることは、今日の雇用社会における基本的な考え方である。
  法違反等の場合に立ち返る原則を明らかにするためにも、雇用の基本原則は期間の定めのない直接雇用であるとの原則を打ち立てるべきである。

2.常用代替防止と臨時的・一時的な労働力需給調整制度
  労働者派遣制度創設の趣旨は、常用代替防止の観点から専門性のある業務に限って労働者派遣を認めるというものである。また、99年改正後に解禁された一般業務については臨時的・一時的な労働力需給調整制度との位置づけであった。これらの考え方は今後も引き続き堅持するとともに、その趣旨を徹底すべきである。

3.均等待遇の理念
  雇用就業形態の多様化は、非正規労働者と正規労働者との間の格差を温存したまま進展し、ワーキング・プアの増大など雇用における二極化を招いている。この状況から脱却し、どのような雇用・就業形態であっても、働くすべての者が労働者としての尊厳が守られ、公正に処遇されるようにしなければならない。同一価値労働同一賃金原則の確立などにより、均等待遇の理念の実現をめざすべきである。

4.労働者保護の強化
  労働者派遣法は、労働者派遣事業に対する規制を行うとともに、派遣元・派遣先の講ずべき措置、労働基準法等の適用に関する特例等の規定を設け労働者の保護をはかるとしている。また労働基準法等は派遣労働者にも適用される。しかし、派遣元と派遣先の商取引契約である労働者派遣契約が実質的に労働者の雇用と労働条件を決定する中では、現行の労働者派遣法の規定だけでは、派遣労働者の保護は不十分である。労働者保護を強化する視点から見直すべきである。

5.派遣先責任の強化と派遣元の法令遵守
  現行の労働者派遣法では、労働基準法、労働安全衛生法等の各規定について、派遣元と派遣先の責任分担がなされているが、労働者保護の観点から、欧米における「共同雇用責任」も参考にしつつ、派遣先の責任を強化すべきである。また、派遣元は、教育訓練や雇用管理など名実ともに雇用主としての責任を果たせるものでなければならない。

6.労使関係ルールの確立
  職場における雇用・就業形態の多様化が進む中で、派遣労働者の受け入れや労働条件についても、派遣先労働組合が関与することが重要である。また、派遣元との関係だけでは解決できない課題もあることから、派遣労働者、派遣元、派遣先、派遣元労働組合、派遣先労働組合など、派遣労働者をめぐる労使関係のあり方について整理する必要がある。

IV.具体的な項目に関する考え方

1.制度の枠組み
  労働者派遣制度は、制度創設時はその対象業務は専門的な業務に限定されていた。しかし、99年改正でのネガティブリスト化により原則自由化され、2003年改正では物の製造業務も対象となった。こうした規制の緩和は、平成不況下のリストラと相まって、非正規雇用の拡大、雇用の二極化をもたらしている。
  また、現行法では特定派遣は届出制、一般派遣は許可制との違いはあるが、これ以外には常用型派遣と登録型派遣を区分けした法規制はなされていない。しかし、雇用の安定、能力開発、社会保険の加入等の面で登録型派遣で多く問題が生じている。
  これらの状況を踏まえ、労働者派遣制度の枠組みを見直す必要がある。

(1) あるべき方向

  • 1985年の創設当時の専門的な業務に限定したポジティブリスト方式とする。 ・常用型派遣を基本とした制度とする。

(2) 当面の対応

  • 一般業務については、登録型派遣を禁止する。
  • 専門26業務については、今日的に見て高度に専門的な業務か否かとの観点から見直しを行う。
  • 一般労働者派遣事業(登録型派遣)の許可要件の厳格化等を行う。

※参考※

2.期間制限等
  派遣先にとって労働者派遣(一般業務)は臨時的・一時的な労働力の需給調整制度であることを堅持し、派遣可能期間の上限は延長しない。また、期間の上限に加えて、労働者派遣の活用に関する事由を限定することも検討する。

3.直接雇用みなし規定の創設  
(1) 以下の場合について、派遣先の直接雇用と見なす規定を設ける。
[1] 無許可・無届出事業者から受け入れていた場合
[2] 許可基準を満たしていない事業者から受け入れていた場合
[3] 派遣先が特定行為を行い、当該派遣労働者を受け入れた場合
[4] 偽装請負の場合
[5] 禁止業務への派遣の場合

(2) 一般業務における登録型派遣が禁止されるまでの間は、登録型派遣であって派遣可能期間を超えて受け入れていた場合は派遣先の直接雇用とみなす規定にする。
なお、(1)(2)いずれも、直接雇用後の雇用は期間の定めのない雇用とする。

4.派遣先責任の強化
  労働基準法等の使用者責任については、派遣先が就労場所であることから、[1]時間外労働に関する責任、[2]労働安全衛生管理責任、[3]労働災害の補償責任等について、派遣先・派遣元の重複規定とする。
  また、社会・労働保険の加入については、派遣元が加入させているか否かを確認することを派遣先に義務づけるとともに、派遣元が社会保険料の納付義務を怠った場合には派遣先が補充責任として連帯債務を負うものとする。派遣元倒産時の未払い賃金については派遣先が賃金の立て替え払いすることを義務づける。

5.派遣労働者の均等・均衡待遇
 派遣労働者が安全に働き続けることができるよう、雇い入れ時の安全衛生教育や医師の面接指導等について、派遣先労働者と同様の取り扱いがされるよう派遣元・派遣先の重複規定として義務づける。また、賃金等の基本的労働条件についても、派遣先における同一職種の労働に従事する通常の労働者との均等・均衡待遇をめざし、派遣労働者の賃金を含めた均等待遇のあり方について、諸外国の法制度を参考にしつつ、速やかに検討する。

6.派遣先による特定行為の禁止
事前面接等、派遣先による派遣労働者の特定行為(特定を目的とする行為も含む)は引き続き禁止し、特定行為を行った場合は採用行為(職業紹介)があったものとみなし、それにより派遣労働者を受け入れた場合は直接雇用として採用したものとみなす。
また、派遣先と派遣労働者のミスマッチ防止の観点からは、就業条件の事前文書明示義務について、明示すべき事項を拡大(業務内容の詳細、ノルマの有無、引き継ぎの有無等)するとともに、例外規定(施行規則25条のただし書き)は削除する。

7.日雇い派遣に対する規制
  「日雇い派遣」「スポット派遣」については、建設業・警備業など禁止業務への派遣や、労働基準法第15条の労働条件の明示や労働者派遣法第34条の就業条件等の明示がなされていないケースも見られることから、実態を速やかに調査し、監督指導を強化して違法なケースを根絶する。短期間の派遣は職業紹介に整理することなども含めて引き続き検討する。

8.派遣先労働組合の関与と労使関係
 現行の派遣先労働組合等に対する労働者派遣の通知と意見聴取義務は、一般業務で1年を超える場合に限定せず、すべての業務について、労働者派遣を受け入れようとする際、期間、業務、人数、賃金、社会・労働保険の加入状況、派遣料金、派遣元事業者名等を派遣先労働組合等に通知・意見聴取することを義務とする。
  また、派遣労働者が所属する労働組合に対する派遣先の団体交渉応諾義務を明確化するとともに、派遣労働者・派遣元・派遣先・派遣元労働組合・派遣先労働組合などの労使関係のルールについて速やかに検討する。

9.事後チェック機能と罰則の強化
 行政による指導・監督を一層強化するとともに、「労働者派遣事業適正運営協力員制度」について、労災防止指導員も参考に、権限・機能を強化するなど実効性ある制度とする。
また、法違反に対する罰則の強化をはかり、違反した事業者の企業名公表措置の対象を拡大する。
10.許可基準の厳格化など派遣元事業者に対する規制
労働者派遣事業の許可基準について、「専ら派遣」の定義の明確化、貸金業等との兼業禁止、雇用管理や教育訓練等の基準の引き上げ、派遣元責任者の要件の見直し、更新時の審査は実績を評価するなど厳格化する。また、有料職業紹介と労働者派遣事業との均衡が図られるよう、有料職業紹介事業に準じて、契約単価と賃金の差(マージン)の上限規制を行う。
 
11.細切れ契約の防止
  派遣元指針で努力義務とされている派遣契約期間と雇用契約期間の一致を義務とし、短期の細切れな雇用契約の防止をはかる。

12.紹介予定派遣制度の改善
  紹介予定派遣については、派遣先で直接雇用される際の労働条件明示の時期が明確にされていないことや、雇用形態が有期雇用であること、派遣先の都合による採用内定の取り消し等のトラブルも発生している。そこで、紹介予定派遣については、紹介後の直接雇用は期間の定めのない雇用とすること、派遣就労時の労働条件を下回らないことを原則とする。派遣可能期間については、6か月を超えてはならないことを堅持し、法律上明確にする。また、直接雇用される際の労働条件明示の時期を明確化し、直接雇用した労働者について試用期間を設けることを禁止する。

以上

「労働者派遣法見直しに関する連合の考え方」補強について

(連合第4回中央執行委員会確認/2008年1月24日)

1.はじめに
  連合は、労働者派遣法見直しについて、「労働者派遣法見直しに関する連合の考え方」(第25回中央執行委員会/2007.9.13)を確認している。その中で、「日雇い派遣」については、「労働者派遣法が想定していなかった形態での事業である」と指摘し、「実態を速やかに調査し、監督指導を強化して違法なケースを根絶する」「短期間の派遣は職業紹介に整理することなども含めて引き続き検討する」としている。
  「日雇い派遣」については、さまざまな問題点が指摘され、労働者派遣制度の中でもとりわけ緊急な対応が求められる課題である。職業安定分科会労働力需給制度部会の「中間報告」(2007.12.25)においても、必要な省令、指針の整備について速やかに検討を行うべき、とされている。従って、「連合の考え方」を補強し、対応するものとする。

2.「日雇い派遣」をめぐる問題点
  「日雇い派遣」については、間接雇用であり、かつ、雇用期間が極めて短期間であることによる「不安定な雇用形態である」という本質的な問題がある。さらに、教育訓練が十分になされず技能形成ができない、等の実態がある。
  また、近年は、日雇い派遣が拡大する中で、以下のような、労働関係法等の規定に抵触する事態も生じている。
(1) 労働者派遣の禁止業務への派遣や二重派遣等(労働者派遣法第4条・第2条/職業安定法第44条)
(2) 賃金からの不透明な天引き(労基法第24条)
(3) 物品購入の強制(労基法第89条)
(4) 安全衛生措置や安全衛生教育が適切に講じられていない(労働安全衛生法)
(5) 社会・労働保険に加入させていない(健康保険法、雇用保険法等)
(6) 労働条件/就労条件が明示されていない(労基法第15条/労働者派遣法第34条)等
  さらに、直接雇用ではないためにマージンが発生している。職業紹介であれば事業者の手数料には上限規制(10.5%)があるが、労働者派遣事業にはマージン規制はされていない。当日のキャンセル、集合時間や待機時間の取り扱い、個人情報保護等についての問題も指摘されている。

3.「日雇い派遣」に対する考え方
  連合はすでに「労働者派遣法見直しに関する連合の考え方」において、労働者派遣制度は「常用型派遣を基本とする制度とすべき」とし、当面の対応として「一般業務については、登録型派遣を禁止する」としている。
  したがって、「日雇い派遣」(日々雇用の労働者派遣)は当然に禁止すべきである。日々雇用は、直接雇用で行うべきである。

以上

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