事務局長談話

 
2016年08月02日
厚生労働省「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会報告書に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 本日、「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会(座長:金丸恭文フューチャー株式会社代表取締役会長兼社長グループCEO)は、2035年を見据えた今後の労働政策に関する報告書を取りまとめた。本懇談会は、経済社会システムの変化などに対応し、一人ひとりの事情に応じた多様な働き方を可能とする政策の検討を行うために設置された、有識者懇談会である。今後の社会構造の変化を見据えた労働政策の検討は重要であり、報告書はその問題提起の1つとして受け止める。他方、働き方の自律化などを前提とした政策的視点などには疑問も残る。

  2. 報告書は、2035年の姿として、自律的で自由に働く者が増加し、働く者と企業が対等な立場で契約を結び、働く者の流動化が活発な未来を予測する。そしてこの未来を前提に、働くことを企業で雇用される労働だけでなく広く捉えた上での法的手当などが必要とする。具体的には、[1]働く人が働く場を適切に選択できる情報開示の仕組み、[2]環境変化に応じて労働契約の変更・再締結・解消ができる仕組み、[3]働く者の再挑戦を可能とするセーフティネットの必要性などを提起し、これら政策射程に自営的就業者も含むすべての働く者を置いている。

  3. クラウドワークなど必ずしも労働法上の保護が十分ではない働き方が広がっている現状や、2035年には超少子高齢化やAIなどの技術革新が一層進展していることを踏まえれば、改めてすべての働く者を対象とし、実効性のある法的保護の枠組みを構築していくことは重要である。また、働くことに関するセーフティネットを国の責任で整備・強化していくことも必要である。
     一方で、報告書は働き方の自律化・多様化・流動化を強調している側面があるが、いかなる時代にあっても働く者の「安定」は重要な政策的視点である。また、働く者が生身の人間である以上、企業との交渉力が対等となることはあり得ず、労使の力関係の非対称性の修正は労働政策上の重要課題であることは不変である。さらに、報告書の方向性に沿った具体策の工程表を策定すべき旨の提言もされているが、労働政策の方向性と具体策は労使参画の下で決定されるべきである。

  4. 今後、我が国が直面する社会構造の変化は、働く者にも大きな影響を及ぼすことが予想される。そのような状況にあっても、誰もが働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)ができ、安心して生活が送ることができる社会の実現が、労働政策の重要課題である。連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、地域から、職場から全力で運動を進めていく。