事務局長談話

 
2016年04月13日
厚生労働省「組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」報告に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 厚生労働省の「組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」(座長:鎌田耕一東洋大学法学部教授)は本日、報告書をとりまとめ、公表した。2000年の労働契約承継法の制定から15年余りが経過し、会社法も整備されている中で、会社分割以外の事業再編に対応した労働者保護ルールが求められている。それにもかかわらず、報告書が、事業譲渡について法律上の規定に踏み込まなかった点は残念である。一方で、事業譲渡および合併(以下、「事業譲渡等」)に関する指針を新たに策定するとしたことは、前向きに評価したい。

  2. 報告書は、事業譲渡等に関しては、新たに指針を策定し、承継予定労働者から承諾を得る際の十分な説明および承諾に向けた協議が必要であることや、解雇に関して留意すべき事項、労働組合との集団的手続などについて会社が留意すべき事項を示すべきとした。会社分割に関しては、[1]承継される不従事労働者も「5条協議」(労働者との個別協議)の対象とする、[2]債務の履行の見込みについて「7条措置」(労働者全体の理解と協力を得る措置)および「5条協議」の説明事項に追加し、理解を得ることについて周知を行う、[3]転籍合意により労働契約を移転する場合であっても承継法の手続は省略できないことなどについて周知をはかるなどの考えを示し、承継法施行規則・承継法指針の改正などを行うこととした。

  3. 連合は、検討会において、[1]事業譲渡時における労使協議について、譲受会社も含め法的枠組みをつくるなど事業譲渡に関する法制化が必要であること、[2]債務超過分割などの場合における対応を念頭に、分割契約等に承継の定めのある主従事労働者にも異議申出権を付与すべきこと、[3]分割による組織法上のメリットを享受しながら転籍合意方式による労働契約の移転が行われていることに対して、労働者保護の観点から法的に対応すべきことなどを主張した。しかし、報告書はこれらの課題に十分には応えておらず、今後引き続き取り組む必要がある。

  4. 今後は「報告書」を踏まえて、事業譲渡等における指針および改正承継法施行規則・改正承継法指針が公布されることになる。事業譲渡における労働関係については、労働契約の承継、労働者・労働組合などとの事前協議、譲受会社が団体交渉に応じることに関する法的枠組みがないため、労働組合の解散を事業の譲受けの条件とすることや労働条件の大幅な引き下げなど、労働者の雇用と労働条件に大きな影響を及ぼしている実態もある。連合は、事業譲渡に限らず円滑な事業再編を行うには、労働組合との間の集団的手続などを行うことが不可欠であるとの認識に立ち、これらの指針の周知と活用を広く呼びかけていく。同時に、労働者保護の観点から、事業再編時における労働契約の原則承継、労働組合との事前協議などを内容とする法整備に向けて引き続き取り組みを進める。


以上