事務局長談話

 
2015年06月18日
規制改革会議「規制改革に関する第3次答申」に関する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 政府の規制改革会議(議長:岡素之・住友商事株式会社相談役)は6月16日、「規制改革に関する第3次答申」をとりまとめた。産業・企業や業界関係者からの意見・要望を取り上げる一方、働く者・生活者からの意見や不安を十分に聞かずに答申がとりまとめられたことは問題である。とりわけ、雇用や暮らしの安心・安全に関わる課題について問題のある内容を含んでおり、今後、働く者・生活者の代表の参画のもと、丁寧に検討を進めることを求める。

  2. 答申は、「労使双方が納得する雇用終了の在り方」として、解雇の金銭解決制度について言及している。現在でも裁判上の和解や労働審判制度において現実的には金銭解決を求めることが可能であり、答申された内容の詳細は不明であるが、不当解雇が行われた際にたとえ労働者が職場復帰を望んだとしてもその道が閉ざされることになりかねず、同制度の導入は不要である。

  3. 同制度は労働者側からの申立を前提としているものと思われるが、[1] 解雇事案はそれぞれの事案ごとに違法性の程度や背景が異なるにもかかわらず、仮に解決金の基準が一律に設定されてしまった場合には、個々の労働者がその不当な解雇でどのような精神的ダメージを受けたのか等を考慮したうえで解決金額を決定することができないことになるため、労働者にとって真に納得できる解決とはならない。[2] いったん制度が導入されてしまえば、派遣法の例にみられるようにその後、使用者に申立権が認められるといった規制緩和がなされる懸念がある。[3]「金銭さえ支払えば解雇できる」との風潮を広める懸念がある。

  4. 医療分野については、「医薬品」及び「医療情報の有効活用」等の規制緩和策が取り上げられている。これらについては、医薬品の安全性等やプライバシー保護の観点から、慎重に検討すべきである。
    土壌汚染対策法の見直しについては、健康被害の防止の観点からは自然由来の汚染土壌とそれ以外の汚染土壌を区別する理由がないため、現状を維持すべきである。
    地方創生に関わる規制改革については、地域のステークホルダーの参画と協働による知恵と実行力が成果のカギを握っており、規制緩和を自己目的化するのではなく地域の主体性を尊重した取り組みが重要である。

  5. 連合は、働く者の雇用と暮らしを守るとともに、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け有効な規制改革は進めていくとの立場から、今後の検討に積極的に関わっていく。労働者の救済に繋がらない解雇の金銭解決制度の導入については、構成組織・地方連合会と一体となって反対していく。


以上