事務局長談話

 
2017年06月12日
「住宅宿泊事業法」の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人

  1. 6月9日、住宅宿泊事業法案が参議院本会議で賛成多数により可決・成立した。利用者の安心・安全の確保、悪質な仲介事業者の排除など、法的規制の内容については不十分な点があるものの、無許可営業の違法民泊が後を絶たない現状に照らせば、すべての民泊サービスの適正化、公正競争の観点から、新ルールにもとづいて違法営業の撲滅に向けた法整備がなされたことは前進である。

  2. 本法の成立により、これまで国家戦略特区以外では認められていなかった民泊が、2018年から、届出・登録や施設における安全面での対応など一定の要件を満たせば、年間180日を上限として全国で営業可能となる。国会審議では、違法民泊の取り締まり強化、宿泊者名簿の備え付けや本人確認の厳正な運用、安全衛生、防火などに関する事業者への指導強化、災害時における安全対策などを政府に求める附帯決議が衆参両院で付された。しかし、違法民泊撲滅のための厳格な監督制度の制定、旅館・ホテル業と同等の防火・避難の誘導義務、海外の小規模仲介業者への対応、営業可能日数の設定など地域の実情をふまえた地方自治体権限のあり方、地域住民とのトラブル防止に備えた責任規定など、残された課題も多い。

  3. 連合は、利用者・生活者の安全・安心の確保に向けて、生活衛生や安全に対する規制、違法行為の排除、仲介事業者の責任の所在などについて、法的対応が十分か精査したうえで国会審議がなされるよう、関係構成組織と連携しつつ、政府・政党への働きかけを行ってきた。また、地方連合会においても、地方自治体に対し、これまで、特区民泊を導入する際には、現行法で担保している施設利用者・近隣住民の安心・安全を同等以上の水準で確保することを要請してきた。

  4. 連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現のため、「民泊サービス」においても、経済合理性のみが先行し、生活者や利用者の安全・安心が置き去りにされることがあってはならないと考える。そのため、本法が施行される2018年までの間に、衆参両院で付された付帯決議が適正に履行されるよう、速やかに必要な措置を講じることを政府に求めるとともに、条例による年間営業可能日数の設定も含めて、残された課題解決に向けて、引き続き、関係構成組織や地方連合会と連携した取り組みを行っていく。
    以 上