事務局長談話

 
2017年05月30日
厚生労働省「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」報告書に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 逢見 直人

  1. 厚生労働省の「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」(座長:荒木尚志東京大学大学院法学政治学研究科教授)は、5月29日に報告書をとりまとめた。1年半におよぶ検討の中で、「解雇無効時における金銭救済制度」について、検討会における委員のコンセンサスは得られず、3論が並記された。このような中で、「労働者の多様な救済の選択肢の確保」として、今後、労働政策審議会などにおいて検討するとしたことは非常に遺憾である。

  2. 「報告書」は、 [1]都道府県労働局のあっせんや労働審判制度など、現行の個別労働関係紛争解決システムの改善とシステム間の連携、[2]解雇無効時における金銭救済制度、[3]個別労働関係紛争の予防や解決を促進するための方策を内容としている。特に、[2]については、過去に検討された、解雇無効の判決を要件とする「例1」、本検討会で新たに提示された、労働者が金銭の支払いを請求できる権利を実体法に規定する「例3」を中心に、検討会の議論状況を整理している。しかし、「報告書」を一読すれば、いずれの制度も、法技術的にも政策的にも、多くの課題があるのは明らかである。

  3. 解雇の金銭解決制度の創設は、「労働者の選択肢を増やす」とされるが、労働者は制度導入など求めてはいない。不当解雇であっても会社が解決金さえ支払えば解雇できるルールとは、一体誰を救済するためのものなのか、まったく理解できない。
     また、労働審判制度が柔軟かつ適切な紛争解決に貢献し、制度として有効に機能している中で、解雇の金銭解決制度を導入することは、現行の紛争解決システムに悪影響を及ぼしかねない。さらに、企業のリストラの手段として使われる懸念もある。何より、「金銭的予見可能性」を高めたいというニーズとは、いくら支払えば解雇できるのかという使用者側の都合にほかならない。
     しかし、「報告書」は、これらの労働者委員の主張があってもなお、制度導入の必要性があるとし、さらに検討を深めていくことが適当としている。

  4. いま必要なことは、長時間労働の是正や正規雇用と非正規雇用労働者の処遇格差などの問題を着実に解消し、すべての働く者が、安心して働ける見通しを持てる社会にすることであって、「カネさえ払えば首切り自由」の制度を創設することではない。連合は、引き続き、構成組織・地方連合会と一体となって、「解雇の金銭解決制度」の問題点を広く社会に訴え、その導入阻止に向けた取り組みを進める。 
     
    以  上