事務局長談話

 
2016年08月03日
「未来への投資を実現する経済対策」に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 8月2日、政府は、「一億総活躍社会の実現の加速」や「21世紀型のインフラ整備」など4つの柱からなる事業規模28.1兆円の経済対策を閣議決定した。安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスが限界を示しつつあるにもかかわらず、その加速を主眼とする経済対策の効果は甚だ疑問である。特に、雇用の逼迫感が増している中での大規模なインフラ投資を中心とする財政政策は、力強い消費の下支えにはなり得ず、健全で持続可能な経済発展の観点から問題が多い。人への投資をはじめ、暮らしの底上げ・底支え、格差是正に繋がる政策への転換を強く求める。

  2. 「一億総活躍社会の実現の加速」では、子育て・介護の環境整備のひとつとして、保育士の処遇改善を行うことが示された。しかし、保育士を女性職と見なすような性差別的な記載が見られることは問題である。全産業平均で月額約10万円の賃金差を早急に解消するために、政府の責任で安定財源を確保すべきである。介護人材についても同様の賃金差を解消することが急務であり、処遇改善が確実に行われなければならない。その際の保険料負担増への対応は、すべての被保険者に対して実施されるべきである。
    雇用保険では、「保険料や国庫負担の時限的引き下げ等」が示されたが、必要なのは給付の改善である。すでに暫定措置として引き下げられている国庫負担のさらなる引き下げは、雇用政策に対する政府の責任放棄に等しく論外である。国庫負担の引き下げ差額分を子育て・介護に充当する方向性も、労使が拠出する雇用保険料に対して政府が一方的に方針を打ち出すものであり、問題である。
    「育児休業期間の延長の実現」についても、単に育児休業の取得期間だけの延長ではなく、抜本的な待機児童対策や男性の育児休業の取得促進、性別役割分担意識を払拭する観点に立った両立支援制度の整備・充実を進めることが重要である。

  3. 中小企業・小規模事業者の経営力強化・生産性向上支援は、中小企業における付加価値創造の源泉が「人」であることを踏まえる必要がある。そのうえで、良質な雇用を生み出す意欲ある中小企業・小規模事業者をターゲットに、キャリアップ助成金をはじめ現行ある制度の申請の簡素化を含め、人への投資を中心に見直しや拡充をはかるべきである。下請等取引については、公正な取引慣行の実現に向け、取引関係全般に係る法令違反の取り締まりの強化や相談機能の充実をはかるための措置を行い、取引条件改善の実効性を高める必要がある。

  4. 連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けた「2017年度 連合の重点政策」を取りまとめ、政府・政党への要請行動を進めてきた。引き続き、政府に対して、働く者・生活者視点での政策への転換を求めていくとともに、臨時国会における与野党の真摯な議論を通じた補正予算案などの精査・修正を求める。


以上