事務局長談話

 
2015年12月24日
「2016年度政府予算案」の閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 12月24日、政府は一般会計総額を96.7兆円とする2016年度予算案を閣議決定した。本予算案は、経済再生と財政健全化の両立をめざすとしているが、貧困や格差の拡大などの深刻な課題を是正する姿勢が不十分であり、働く者・生活者の声にこたえた内容とは言えない。デフレから脱却し経済の好循環を実現させるためには、適切な雇用・労働政策による雇用の安定と質の向上や、社会的セーフティネットの強化による現在と将来への不安解消などを通じ国民生活全体の底上げを行う必要がある。国会における与野党の真摯な議論を通じて、本予算案の修正を求める。

  2. 本予算案では、子ども・子育て支援新制度に5,900億円余が計上されたが、政府が社会保障・税一体改革の三党合意において財源確保に最大限努力するとした「1兆円超程度」には程遠く、極めて遺憾である。また、低所得の年金受給者に1人3万円の臨時給付金を支給する一方で子育て世帯臨時特例給付金を廃止し、急増する介護・保育サービスを担う職員の処遇改善は、施設整備の二の次にしている。政府のいう「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」の掛け声とはかけ離れた内容である。
    さらに、男女共同参画社会基本法にもとづく、暴力根絶やひとり親世帯の貧困支援などの人権確保対策にかかる予算措置も不十分である。

  3. 教育予算については、幼児教育において、年収360万円未満の世帯に対する同時就園要件の撤廃と、低所得のひとり親世帯等に対する第2子以降の保育料の無償化にとどまった。また、大学生向けの給付型奨学金の導入は見送られ、無利子奨学金の枠を拡充するとしているが、その規模は小さく、いずれも対策としては不十分である。貧困の連鎖を防ぎ、将来の社会・経済の担い手を育てるためにも、早期に、幼児教育の完全無償化および高等教育における給付型奨学金の導入を実現すべきである。

  4. 財政健全化に向けては、国の一般会計の基礎的財政収支(PB)を改善し、新規国債発行額も減額していることから、政府は財政健全化目標に大きく前進できたとしている。しかしこれらは、来年度の名目成長率を3.1%とする高い経済成長を前提とした試算であり、絵に描いた餅となる懸念がぬぐえない。将来世代へ負担を先送りしないためにも、政府の掲げる2020年度までのPB黒字化の目標達成に向けて、抜本的な財政構造の見直しを示す必要がある。

  5. 連合は、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」につながる政策の実行を求め、財政制度等審議会での意見反映や政府・政党への要請行動を展開してきた。引き続き、政策・制度要求の実現、その先にある「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて、全力で取り組んでいく。


以上