事務局長談話

 
2015年11月27日
「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 11月26日、政府は、「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」をまとめた。2020年ごろを目途とした経済政策や賃金・働き方のあり方、社会保障制度の見直しの方向性が示された。しかし、緊急対策の実現可能性や優先順位などの観点から疑問の多い内容が多く、特に「低年金受給者への支援」は場当たり的な政策であり、「安心につながる社会保障」にそぐわないものと言わざるを得ない。

  2. 基本的考え方では、少子高齢化という構造的な問題を先送りすることなく、真正面から取り組む姿勢と、包摂と多様性という観点が示されている点は評価できる。
    しかし、デフレ経済や少子化の根本的な要因には、貧困や雇用の質の劣化や仕事と生活の両立が困難な働き方・働かせ方の問題などがある。中小企業や非正規労働者の処遇改善と休み方・働き方改革の実現に一層力を入れるべきである。
    また、賃上げは、労使がたゆまぬ努力で得た成果の配分を交渉によって決めるものであり、政府が一方的にGDP600兆円という目標を掲げて働きかけを行うというのは違和感を覚える。

  3. 子育て支援制度の充実をはかる上では、女性の妊娠・出産による離職率が6割、非正規従業員では8割にのぼるなど、女性が継続して就業する環境が整っていないことや、男性労働者の恒常的な長時間労働の問題に対する具体策が見えない。
    また、男女がともに仕事と子育て・介護を両立しやすい環境を整備するため、育児・介護休業法の抜本的な見直しを行うとともに、限られた財源を待機児童ゼロの実現や就学前教育の完全無償化、認知症の急増等にも対応した介護支援サービスの拡充等に振り分けるべきである。

  4. 安心の社会保障については、保育・介護ともに人材確保に向けた職員の定着確保のため処遇改善こそ緊急に着手されるべきである。また、安心してサービスを利用できるためには専門職による質の確保は欠かせず、高齢者が住み慣れた地域で尊厳ある暮らしを最後まで続けられるよう地域包括ケアシステムの確立と、子ども子育て新制度の充実を確実に進める必要がある。そして、安心の社会保障のためには、社会保障と税の一体改革が確実に断行されなければならない。

  5. 連合は、すべての働く者の「底上げ・底支え」「格差是正」を実現するため、定昇込み4%程度の賃上げ目標を掲げて2016春季生活闘争に取り組むとともに、政策制度要求の実現、その先にある「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて、全力で取り組んでいく。


以上