事務局長談話

 
2015年11月20日
厚生労働省「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」報告に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 逢見 直人

  1. 厚生労働省の「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」(座長:荒木尚志東京大学大学院法学政治学研究科教授)は本日、報告書をとりまとめ、公表した。2000年の労働契約承継法の制定から10年余りが経過する中で、会社法の制定や事業譲渡など会社分割以外の事業再編に対応した労働者保護ルールが求められていた。報告書は、課題を整理しつつも、抜本的な法改正の提起に踏み込まなかった点は不十分である。

  2. 報告書は、会社分割に関しては、 [1]主従事労働者の判断基準について、「事業」に該当しない(有機的一体性のない)権利義務を会社分割の対象とすることが可能となったのに対し、承継法では労働者保護の観点から「事業」単位を維持する、[2]承継される不従事労働者も5条協議(※)の対象とする、[3]従前必要とされた「債務の履行の見込みがあること」の要件の緩和による、不採算事業とともに承継又は残留する労働者への対応として、債務の履行に関する事項が7条措置(※※)の対象であることの周知と5条協議の説明事項に追加する、[4]承継法によらない転籍合意と労働条件の変更は一律に無効とはせず、転籍合意方式による場合には承継法の手続きや異議申出権とその効果は排除できない旨の周知を図る等の考えを示している。また、事業譲渡における労働契約の承継ルールの導入については、慎重に考えるべきであるとした。

  3. 連合は、研究会におけるヒアリングにおいて、[1]事業譲渡についても承継法を適用すること、[2]分割契約等に承継の定めのある主従事労働者にも異議申出の機会を付与すべきこと、[3]分割による組織法上のメリットを享受しながら、転籍合意方式による労働契約の移転が行われていることに労働者保護の観点から法的に対応すべきことなどを主張した。報告書が、これらの課題に十分に応えていない点は極めて残念である。

  4. 今後、報告書を受けて、取るべき対応策について労使を含めた関係者による検討が行われることが見込まれる。連合は、2009年7月に「事業組織の再編における労働者保護に関する法律案要綱(案)」を策定した。引き続き、労働者保護の観点から、労働契約等の原則承継、労働組合との事前協議制等を内容とする法整備に向けて取り組みを進める。

    (※)平成12年商法等改正法附則第5条及び承継法指針では、分割会社は通知期限日までに、承継される事業に従事している労働者と会社分割に伴う労働契約の承継に関して協議するものとされている。

    (※※)承継法第7条及び承継法施行規則第4条等では、分割会社は、過半数労働組合又は過半数代表者との協議その他これに準ずる方法によって、雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとされている。