事務局長談話

 
2015年07月24日
「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の閣議決定に関する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 政府の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」(以下、「大綱」という。)が7月24日閣議決定された。その内容は、過労死等の事案分析や調査、過労死等を防止することの重要性に関する周知・啓発を進めることなどが盛り込まれてはいるものの、過重労働対策は既存の政策を中心とした内容にとどまり、過労死等防止対策推進法の目的である「過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現」に寄与するための対策としては実効性に欠け、全く不十分と言わざるを得ない。

  2. 大綱は、国会各会派の総意として提案され昨年6月に全会一致で可決・成立した同法に基づき、初めて策定された。連合は厚生労働省に設置された過労死等防止対策推進協議会に労働者代表委員として参画し、当事者代表委員(全国過労死を考える家族の会)や当事者を支援する弁護士の委員などとともに、実効ある対策の策定を求め積極的に発言を行ってきたが、我々の主張の多くが盛り込まれていない。

  3. 大綱は、[1]過労死等防止対策の「基本的考え方」として、「2020年までに週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%以下」とするなどの目標を掲げているが、これらは2010年に政府が設定した目標を踏襲したにすぎない、[2]重点政策として事業主が取り組むべき内容が抽象的な努力目標でしかなく不十分である、[3]教員など公務職場における具体的取り組みがほとんど盛り込まれていないなど、消極的な内容であり、過労死等防止対策の効果的推進を国の責務として規定する同法の要請に応えるものになっているとは言えない。

  4. 政府は、大綱に定められた調査研究に直ちに着手し、過重労働等の実態を詳細に分析し必要な対策を速やかに実施するとともに、事業主に対する啓発等の取り組みを強化し、働く者が過重労働によって命を失うような事態を防がなければならない。連合は、労働組合の役割として、自らの職場から過労死を出させない取り組みを引き続き行っていく。

  5. 政府は大綱を決定するに先立ち、労働時間制度の大幅な規制緩和を行う労働基準法等改正法案を、すでに今国会に提出している。同法案は、連合が強く求めてきた労働時間の量的上限規制勤務間インターバル規制の導入など実効ある長時間労働抑止策が盛り込まれていない一方で、裁量労働制の対象業務拡大や「高度プロフェッショナル制度」の創設など過重労働に歯止めがかからない内容となっており、過労死等防止対策推進法及び本大綱に矛盾した法案である。連合は、長時間・過重労働を助長する危険性が大きい労働基準法の改悪阻止に全力で取り組む。


以上