事務局長談話

 
2015年07月10日
国家戦略特区制度を活用した外国人家事支援人材の受入れにあたっての談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 7月8日、参議院本会議において、特区制度を活用した外国人家事支援人材の受入れ措置を含む国家戦略特区法改正法案が可決、成立した。同法案では、外国人材が従事可能な「家事支援活動」の具体的内容等の根本事項の多くが政令委任事項として整理されており今回の措置の詳細が不明であるばかりか、単純労働分野における外国人労働者の受入れ解禁の道を開きかねず、大きな問題がある。

  2. 今回の措置は、国が定める「基準」に適合する機関と雇用契約を締結した外国人材が、「家事支援活動」を行うというものである。しかし、受入れ機関に求められる「基準」の内容や、受入れ可能な年限(=外国人材の在留可能期間)、受入れた外国人材の権利保護・救済のための行政の関与のあり方等が明らかとなっていない
    更には、外国人材が従事可能な「家事支援活動」の内容も、「炊事、洗濯その他の家事を代行し、又は補助する業務で政令で定めるものに従事する活動をいう」とされているのみで、今後の詳細設計如何によっては、単純労働解禁につながりかねない。わが国の外国人労働者受入れ基本方針は、専門的・技術的分野の人材を積極的に受入れるものであり、単純労働分野での受入れは認めていない。国内労働市場等に影響を与える単純労働解禁の道を開きかねない今回の措置が、国民的な議論がなされることなく決定に至ったことは容認できない。

  3. また、家事支援分野については、家庭内という閉鎖された場所での労働であることからハラスメント等の問題が起こりやすいため、ILOが「家事労働者の適切な仕事に関する条約」を採択しているが、日本は未批准である。家事支援分野での外国人材の受入れを行うのであれば、同条約の批准に向けた検討を進めることが先決である。
    加えて、今回の措置は、昨年開催された経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議において、「女性の活躍推進」の観点から一部の民間有識者議員が提案したことに端を発している。国内労働市場等に大きな影響を与えかねない措置であるにもかかわらず、政府として必要性(立法事実)の検証等を十分に行うことなく実施に至った点は立法プロセスの面からも問題である。また、そもそも「女性の活躍推進」の観点からいま政府が行うべきは、働き方の見直しや両立支援制度の拡充、待機児童の解消等、男女が育児や介護をしながら働き続けることのできる環境整備である。

  4. 今国会には外国人技能実習制度の見直しに関する法案も提出されている。連合は外国人を含むすべての労働者保護の後退を招くことのないよう、引き続き取り組みを進めていく。


以上