事務局長談話

 
2015年07月01日
「日本再興戦略」改訂2015に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1. 6月30日、政府は、「日本再興戦略」改訂2015を閣議決定した。その方向性は、産業・企業や業界関係者からの意見・要望を取り上げ、企業が世界で一番活躍しやすい国づくりをめざすというものであり、容認できるものではない。特に、労働者保護ルールの改悪につながる方針が引き続き盛り込まれたことは極めて遺憾である。

  2. 「雇用制度改革・人材力の強化」は、いわゆる解雇の金銭解決制度を導入する方針が明記されている。不当解雇を行って敗訴した使用者をも「救済」する制度が導入された場合、不当解雇が実質的に合法化されることとなる懸念が強いこと等から撤回すべきである。
    また、今国会に提出されている労働基準法改正案にのっとり、働き過ぎ防止のための取り組みを強化することとしているが、長時間労働是正に向けた実効性ある措置を欠いた同法案を前提としている以上、十分な効果を期待することはできない。むしろ過重労働を助長する「高度プロフェッショナル制度」の創設や企画業務型裁量労働制の対象拡大など、労働基準法の改悪を行わないよう強く求める。

  3. 「女性の活躍推進」については、人口減少の克服や労働力の確保が強調されており、問題である。働く者の人権が守られ、一人ひとりが性別に関係なく能力と個性が発揮できる環境を整備するとともに、働く女性の過半数を超える非正規労働者も含めた格差解消と底上げに資する内容とするべきである。
    また、待機児童解消に向けた保育士の確保については、まず保育士の処遇改善と安定雇用の促進に取り組むべきである。
    「中長期的な外国人材受入れの在り方検討」については、社会保障制度や労働市場への影響など、社会的統合にかかるコストの課題から、国民的なコンセンサス形成に向けた慎重な議論がなされるべきである。

  4. 「マイナンバー制度の活用」として、戸籍事務や旅券事務、証券分野等への利活用範囲の拡大が盛り込まれているが、制度開始前にも関わらずこのような利活用範囲を拡大することは、時期尚早かつ不適切である。政府は、個人情報の安全管理を含む制度の円滑な実施に万全を期するべきである。

  5. 連合は、すべての働く者の力を結集し、労働者保護ルールの改悪の動きに対峙していくとともに、引き続き、良質な雇用の創出、ディーセント・ワークの実現、社会的セーフティネットと所得再分配機能の強化など、働く者の雇用と暮らしの底上げにつながる政策への転換を政府に強く求めていく。


以上