事務局長談話

 
2015年01月23日
社会保障審議会年金部会における「議論の整理」とりまとめに対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1.  2015年1月21日、社会保障審議会年金部会は「議論の整理」をとりまとめた。2016年10月に予定されている短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大をさらに進めていく必要があるとの大きな方向性を示したことは評価できるものの、マクロ経済スライドについて、基礎年金部分も対象に、デフレ下を含めて賃金・物価の伸びにかかわらずフルに発動することが目指されていることは問題である。

  2.  「議論の整理」は、社会保障・税一体改革、国民会議報告書およびプログラム法で掲げられた検討課題について、2014年財政検証におけるオプション試算結果も踏まえて議論してきた内容をとりまとめたものである。法改正事項としては、適用拡大や、マクロ経済スライドの見直し、基礎年金の保険料拠出期間の45年への延長や国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除等が想定されている。適用拡大について、連合が主張した法施行日の前倒しは困難とされたものの、501人以上の規模要件に関して任意適用の可能性を示したことは評価できる。

  3.  マクロ経済スライドは、2004年改正で保険料収入・年金積立金・国庫負担から成る負担を固定し、その範囲内で給付費を賄えるよう、被保険者数の減少率と平均余命の延び率を勘案して年金額を自動調整する仕組みとして導入された。過去の物価下落時に年金額を据え置いた特例水準の2015年4月解消と同時に、初めて発動される見込みである。連合は、年金受給者や地域経済への影響を考慮し、調整は賃金・物価の伸びの範囲内にとどめること、また、基礎年金は対象から外すことなどを主張してきたが、将来世代の給付水準の確保のためにフル発動が選択肢から排除されなかったことは遺憾である。

  4.  厚生労働省は、2015年通常国会に必要な法案を提出する意向を示しており、他の重要法案の提出状況も踏まえ、政府内で検討し、与党と調整することとしている。なお、昨今、公的年金制度をめぐっては、年金積立金の運用に過度に依存する傾向が強くなっているが、収入の柱は保険料であり、信頼を高めつつ、負担と給付のあり方も含めて着実に制度改正を実施していくことが重要である。連合は、構成組織・地方連合会とともに、原則すべての雇用労働者への適用拡大等を進めつつ、老後の生活を支える安心と信頼の公的年金制度の構築に向けて、引き続き抜本的な改革を求めて取り組んでいく。


以上