事務局長談話

 
2015年01月20日
社会保障審議会企業年金部会における「議論の整理」とりまとめに対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1.  2015年1月16日、社会保障審議会企業年金部会は「議論の整理」をとりまとめた。中小企業の実施率の低さや非正規労働者が加入できていない問題に触れ、制度の普及・拡大や、所得代替率が長期的に減少していく見通しの公的年金制度を補完する役割の強化という方向性を示したことは評価する。しかし、現政権の「貯蓄から投資へ」が底流にある中、自助努力を前面に出すとともに、具体的な見直しは確定拠出年金(DC)が中心であり、老後の安定的な生活保障の確保につながるか、また、急務である厚生年金基金解散後の受け皿になり得るかという点では不十分である。

  2.  「議論の整理」では、中小企業向けの取り組みとして「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度の創設」、ライフコースの多様化への対応として「個人型DCの加入対象の第3号被保険者等への拡大」等が掲げられているが、実施後の検証が課題である。また、DCにおける運用商品提供のあり方(デフォルト商品の設定方法を含む)および数等について、基本的に、よりリスクをとる方向での見直しが示されていることは、問題である。加入者が過度なリスクを負わないよう、労使が仕組みの決定に関与し、十分に周知しながら加入者自身の意識も高める努力を行う必要がある。なお、継続投資教育の努力義務化や、ポータビリティの拡充が盛り込まれた点は評価できる。

  3.  連合は、確定給付企業年金(DB)が基本であること、その上で、中小企業労働者や非正規労働者を含めたすべての労働者が加入を選択でき、安定的な給付を受けられる制度を設け、普及・拡大をはかることが重要であること等を主張してきた。また、総合型厚生年金基金でガバナンスが機能しなかった教訓を踏まえ、企業年金の形態にかかわらず、事業主・加入者で構成する代議員会や労使協議の場の設置を義務付けるよう要請してきた。ガバナンス強化という方向性が確認され、DBにおける運用の基本方針の全文開示等は明記されたものの、労使の関与のあり方については意見の紹介にとどまっており、今後、具体化に向けた議論を行っていく必要がある。

  4.  今回の見直しにより、DBが企業型DCへ、企業型DCが個人型DCへと安易に流れないように、事業主に実施責任を果たさせるなど、労働組合は十分なチェック機能を働かせなければならない。あわせて、厚生年金基金の解散と、退職給付の他の企業年金制度等への確実な移行に向けて、労使協議を促進する必要がある。連合は、公的年金制度の機能強化を含め、すべての労働者の安定的な老後の生活保障の確保に向けて、企業年金制度のさらなる充実と普及・拡大に取り組んでいく。


以上