事務局長談話

 
2015年01月15日
「2015年度政府予算案」の閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1.  1月14日、政府は一般会計総額を当初予算としては過去最大の96.3兆円とする2015年度予算案を閣議決定した。予算案は、いわゆるアベノミクスが助長した格差を是正する姿勢がみられず、社会的セーフティネットの充実・強化による将来不安の解消、雇用の安定と質の向上などを通じ国民全体の底上げを求める、生活者・働く者の声に応えた内容とは言えない。底上げが進まなければ、経済の好循環も実現困難であり、財政健全化の道筋も描けない。

  2.  本予算案では、子ども・子育て支援新制度が予定通り実施とされ、待機児童解消加速化プランの推進が明記されたのは妥当であるが、1兆円超の財源が確保されていないことなど問題がある。
     また、介護については、地域医療介護総合確保基金の積み増しや処遇改善加算の拡充が盛り込まれたのは評価できるが、介護報酬本体の大幅な引き下げについては容認できない。
     医療保険では国保財政の肩代わりとして被用者の意向を無視した制度改革や国庫補助金の見直し、生活保護では住宅扶助基準と冬季加算の引き下げも盛り込まれていることや、10%への消費税引き上げ先送りにより介護や年金にかかる低所得者対策が不十分なことなどは、社会保障制度改革推進の方向とは相容れず、問題である。

  3.  さらに、雇用政策では、安易なリストラを誘発しかねない労働移動支援助成金が拡充される一方、景気縮小時に雇用維持をはかるための雇用調整助成金が縮小され、予算額が逆転した。雇用維持効果が高い雇用調整助成金は、急激な景気変動時に備え、今後も制度を維持した上で、柔軟かつ機動的な対応がはかられるべきである。
     また、公立小中学校の教職員を約4,000人削減するとしているが、教育の質の低下を招くことのないよう、計画的で安定的な教職員の配置を行う必要がある。

  4.  財政規律の観点では、2015年度の国・地方の基礎的財政収支赤字について、対GDP比半減という中期財政計画上の財政健全化目標の達成を見込んでいる。しかしながら、依然として2020年度における黒字化目標達成は非常に厳しい。政府は、目標達成への具体的な道筋を示す財政健全化計画を今夏までに明らかにするとしているが、将来世代に対してこれ以上負担のつけ回しを行ってはならない。

  5.  連合は、暮らしと雇用の安定・向上に真につながる予算編成を求め、財政制度等審議会での意見反映や政府・政党への要請行動を展開してきた。引き続き、すべての働く者の底上げ・底支えと格差是正をはかる政策・制度要求の実現に向けて、全力で取り組んでいく。


以上