事務局長談話

 
2015年01月14日
医療保険制度改革骨子に対する談話
日本労働組合総連合会 事務局長 神津 里季生

  1.  1月13日、政府の社会保障制度改革推進本部で「医療保険制度改革骨子」が確認された。昨年12月の解散総選挙を受けて社会保障審議会医療保険部会が中断し、骨子(案)の取りまとめ議論がほとんど行われなかった中、同骨子には、後期高齢者支援金の全面総報酬割で生じる国費の多くを、市町村国保に対する財政支援に優先活用することが盛り込まれた。このような被用者保険による国費の肩代わりは、被用者保険関係5団体の強い反対を無視するものであり、断じて容認できない。

  2.  骨子には、社会保障制度改革プログラム法に沿って、医療保険の財政基盤を安定化しつつ負担の公平性を確保する観点から、主に7本の改革項目が盛り込まれている。この中で、[1]市町村国保に係る財政運営の責任主体を都道府県とし実務は主に市町村が担うこと、[2]協会けんぽに対する現行の国庫補助率を維持すること、[3]所得水準の高い国保組合への国庫補助率を引き下げることなどについては、連合の考え方に概ね一致している。しかし、高齢者医療のあり方に切り込むことなく、標準報酬月額・賞与額の上限引き上げ、協会けんぽに対する国庫補助削減の新たな特例措置や本則に定める国庫補助率の引き下げをはじめ、医療保険財政の辻褄合わせが目立つなど、問題が多い。

  3.  連合は、今回の医療保険制度改革にあたっては、負担の納得性・公平性の確保が重要であることを主張してきた。全面総報酬割の導入は、所得再分配機能の強化、短時間労働者の社会保険適用拡大への対応などの観点からやむを得ないと考える。しかし、被用者保険については、保険者側が様々な効率化の努力を行ってきた中で、効率的な医療提供への改革を講じることなく、現在の医療費の伸びを前提に、被用者保険にさらなる負担を求めることについては、被保険者からの納得は到底得られない。早急に高齢者医療の抜本改革を議論すべきである。

  4.  今後、「骨子」は医療保険制度改革関連法案として、第189通常国会に提出される予定である。国民皆保険と持続可能な医療保険制度の確立は、雇用安定と良質な雇用確保とともに国民生活の基盤であり、連合が求める「働くことを軸とする安心社会」の実現につながるものである。連合は、被用者保険と地域保険の2本建てにより、保険者機能を積極的に発揮できる持続可能な医療保険制度の確立に向けて、被用者保険関係団体と連携しながら、政府への働きかけを強めていく。


以上