2014年06月19日
「改正労働安全衛生法」の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生
- 6月19日、衆議院本会議において「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」が全会一致で可決、成立した。9年ぶりの法改正によって労働者の命や健康に関わる労働安全衛生対策が前進する点は評価できる。しかし、ストレスチェック制度の実施が従業員50人未満の事業場については当分の間努力義務とされたほか、職場の受動喫煙防止対策についてもすべての事業場における努力義務にとどまるなど、不十分な点もある。
- 改正法の主な内容は、[1]特別規則の対象にされていない化学物質のうち、一定のリスクがあるもの等について、事業者に危険性または有害性等の調査(リスクアセスメント)を義務づける、[2]労働者の心理的な負担の程度を把握するため、事業者に医師、保健師等による検査(ストレスチェック)の実施を義務づける(ただし、従業員50人未満の事業場については当分の間努力義務)、[3]労働者の受動喫煙を防止するため、事業者および事業場の実情に応じ適切な措置を講ずることを努力義務とする、[4]重大な労働災害を繰り返す企業に企業単位の改善計画を作成させ、改善をはからせる仕組みを創設する、等である。
- 職場のメンタルヘルス対策については、この改正を論議してきた労働政策審議会において、特に取り組みが遅れている小規模事業場の対策を促進するべきとの議論がなされ、建議および法律案要綱の取りまとめに至った経緯がある。本来、三者構成の労働政策審議会が答申した法律案要綱に則した法案が国会に提出され、国会審議において議論を深めるべきである。今回、法案提出前の与党の部会審査において、内容の一部修正を求められたことを受け、従業員50人未満の事業場については、ストレスチェックの実施が努力義務に変更されるとともに、労働者の受診義務に関する規定が削除されるなどしたことは、労働政策審議会の軽視や形骸化につながりかねず、極めて遺憾である。
- 今後、改正法の施行に向け、関連する政省令、指針等の審議が行われることになる。連合は、職場のメンタルヘルス対策について、労働者のプライバシー保護や不利益取り扱いの禁止が厳格に適用されるよう求めていくとともに、受動喫煙防止対策に関する国民的コンセンサスの形成や、取り組みが遅れている中小事業者を中心に必要な支援措置を求めるなど、改正法の実効性の確保をはかっていく。また、努力義務とされた事業場も含め、すべての事業場において改正法の内容が確実に実施されるよう労使の取り組みを進めていく。
以上