事務局長談話

 
2013年06月07日
成長戦略(素案)に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 南雲 弘行

  1.  6月5日、政府の産業競争力会議(議長:安倍首相)は、「成長戦略(素案)」を取りまとめた。素案は、「攻めの経済政策」として、日本産業再興・戦略市場創造・国際展開戦略の3つのアクションプランを打ち出しており、これらのアクションプランの実行を通じて、日本経済を停滞から再生・飛躍させ、成長軌道へと定着させるとしている。

  2.  素案は、「三本の矢」の実施などを通じて、10年間平均で名目3%、実質2%の成長率の実現、10年後には1人当たり名目国民総所得の150万円以上拡大を目指すとしている。
     しかし、そこに示された目標の達成に向けた道筋は不明確であるばかりか、成長の果実が働く者にいかに分配されるかの言及がないなど、素案には、国民生活の底上げと格差社会の是正を通じて内需拡大の好循環をつくっていくという視点が乏しい。また、質の高い雇用の創出や社会的セーフティネットの強化など、内需拡大の前提となる具体的政策も欠如しており、問題である。

  3.  「日本産業再興プラン」では、雇用制度改革として「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」を掲げている。しかし、労働移動を促すのであれば、既存産業と比較して、より生産性が高く、働く者にとってより魅力のある処遇・労働条件が整備された新しい成長産業の創出が先決である。新しい成長産業が創出されていない段階で労働移動を促すことは、失業者の増大と社会の混乱を招くものであり許されない。
     また、女性の活躍推進に関しては、育児休業3年の推進などが提起されている。しかし、女性の活躍促進を妨げる最大の要因は、第1子の出産を契機として女性労働者の約6割が退職せざるを得ない環境にあることである。優先されなければならないのは、そのことに目を向けた政策であり、女性の社会参画を後退させるような施策ではない。
     加えて、労使等が拠出する公的年金積立金の運用のあり方を、労使不在の中で検討項目として掲げたことは極めて不適切である。年金積立金の運用は、長期的な観点から安全かつ効率的に行わなければならず、債券を中心に確実に行うべきである。

  4.  「戦略市場創造プラン」では、国民の「健康寿命」の延伸の観点から、都市部高齢者の地方での受け入れを検討するとしている。居住の自由を保障するとともに、政府の進める「地域包括ケアシステム」を逆行させないよう、十分慎重に取り扱うべきである。また、レセプトデータの民間活用の拡大に当たっては、個人情報保護の徹底が求められる。

  5.  今、政府に求められていることは、震災からの早期復興、そして日本経済の再生を確実に成し遂げ、すべての国民が将来に希望と安心を持てる道筋を示すことである。そのためには、良質な雇用の創出、ディーセント・ワークの実現、社会的セーフティネットと所得再分配機能の強化など、真に国民の暮らしと雇用の安定・向上につながる政策の実現が不可欠である。連合は、引き続き「働くことを軸とする安心社会」の実現にむけ、組織をあげて全力で取り組む。


以上