事務局長談話

 
2025年12月05日
医療法等改正法の成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 神保 政史

1.地域医療構想の見直しなどは評価するものの、新たな保険者拠出は遺憾
 12月5日、参議院本会議において医療法等改正法が可決・成立した(衆議院では修正可決)。外来や在宅医療なども含む中長期を見据えた地域医療構想の見直しや、医師の地域偏在の是正に向けた規制の一部強化などは、地域で切れ目のない医療提供体制の構築を一歩前進させるものとして評価する。しかし、医師偏在対策の一環で新たに創設される医師手当事業の財源が「保険者からの拠出」とされたことをめぐり、審議では多くの疑問が呈されたにもかかわらず、撤回に至らなかったことは遺憾である。

2.医師の偏在是正は不十分。さらなる規制的手法を検討すべき
 地域医療構想の見直しに向けては、都道府県知事の権限が一部強化される。公立・公的・民間医療機関かを問わず、また入院医療だけでなく介護との連携も含む新たな地域医療構想の策定が進むことを期待する。医師の地域偏在対策としては、都道府県知事が医療機関に特定地域で不足している医療機能の提供を要請できる仕組みなどが創設されたが、十分とは言えない。加えて、診療科偏在への対策は盛り込まれず、遠隔医療の活用といった政府答弁にとどまっており、是正に向けてさらなる規制的手法を検討すべきである。

3.医師手当事業に関する検討規定・附帯決議の確実な履行を
 特定地域の医師への手当に財政支援を行う医師手当事業については、これまで地域医療を確保する財源は公費で補完してきた経緯や、保険給付との関係性が乏しい拠出であることを踏まえれば、その財源は公費とすべきである。衆議院では、立憲民主党・国民民主党が共同で、連合の考えに沿った修正案を提出した。保険者からの拠出とする財源確保策の撤回には至らなかったものの、立憲民主党・国民民主党議員の尽力により、事業実施において保険者が参画できる仕組みの検討規定が附則に追加された。また附帯決議には、安易に保険料財源を充てる前例としないことや、効果検証を行い必要な見直しを行うことなどが盛り込まれた。連合は政府に対し、検討規定や附帯決議を踏まえた施策の確実な履行を求める。

4.医療・介護・福祉等を担う人材のさらなる処遇改善が急務
 医療・介護・福祉等の社会保障サービスは、国民が安心して地域でくらし、働き続けられるようにするための基盤である。提供体制の持続可能性が人材確保の面で揺らいでいる今、命とくらしを守る仕事に見合った賃金水準となるよう、政府はさらなる処遇改善策を早急に実行すべきである。連合は、安心・安全で持続可能な社会保障の構築と処遇改善の実現に向けて、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上