事務局長談話

 
2023年11月30日
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議「最終報告書」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.新たな制度と特定技能制度の見直しの実効性確保にはなお懸念が残る
 11月30日、出入国在留管理庁の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」は、技能実習制度を見直した新たな制度の創設を含む「技能実習制度および特定技能制度の見直しに関する最終報告書」を取りまとめ、公表した。連合が求めてきた監理団体や登録支援機関の要件厳格化、行政機関による監督指導の強化、検討プロセスの透明性確保策などが盛り込まれた。一方、適切な処遇確保策や、新たな制度の具体的な受入れ分野など不透明な部分も残されており、見直しの実効性確保への懸念は残る。

2.人材育成のためには技能の適正評価とそれに応じた処遇確保の仕組みが必要
 技能実習制度は、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度となる。最終報告書は処遇を含めた人材育成モデルの策定を提起しているが、それだけでは技能の適正評価と処遇確保の実効性に欠ける。日本人との同等報酬要件を遵守し、技能の向上に応じた適正な賃金水準を確保する必要がある。また、就労「1年」経過後から本人意向の転籍を認める一方、地方・中小企業の人材確保への懸念などから、当分の間「1年を超える期間」を認める経過措置が示された。「当分の間」の経過措置が恒久化する恐れがあり、労働者保護の観点から問題がある。

3.検討プロセスの透明性確保に資する新たな会議体の設置は評価
 新たな制度における受入れ分野は、特定技能制度に合わせ、人材育成になじまない分野は対象にしないとしているが、受入れの必要性や妥当性から検討しなければ、安易かつなし崩し的な受入れ拡大も起こりうる。こうした懸念に対し、受入れ分野や人数、評価試験内容などを議論する、労使などが参画する新たな会議体の設置が明記されたことは検討プロセスの透明性確保の観点から評価する。新たな会議体の実効性確保に向けては、産業実態の把握など業所管省庁の機能強化も不可欠である。

4.連合は制度見直しの実効性確保と制度の適正運用に向けて取り組む
 今後は最終報告書を踏まえ、政府において法改正に向けた具体的検討が進められるが、外国人労働者の権利保護の後退はあってはならない。制度の履行確保に向け、新たな機構の体制強化や労働関係法令の遵守徹底など一層の取り組みが不可欠である。連合はビジネスと人権の観点を含め、外国人労働者の権利が守られ、安心して働ける社会の実現をめざし、構成組織、地方連合会一体となって取り組んでいく。

以 上