事務局長談話

 
2022年12月22日
政府の「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」策定に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.方針に「公正な移行」が加えられたことは高く評価。一方で、今後10年を見据えた
 
ロードマップに盛り込まれなかったことは残念
 12月22日、岸田首相を議長とする政府の「GX実行会議」(以下「実行会議」)は、「GX実現に向けた基本方針~今後10年を見据えたロードマップ~」(以下「方針」)をとりまとめた。「方針」に、連合が繰り返し求めた「公正な移行」の実現が、政策イニシアティブの柱の一つに加えられたことは高く評価するが、今後10年のロードマップには盛り込まれておらず、具体像が見えず残念である。また、「方針」に示された方向性を具現化するには課題も残されている。

2.失業なき労働移動の実現など、「公正な移行」の具体化に向けた社会対話の実施を
 連合は「実行会議」の中で、「公正な移行」においては、失業なき労働移動の実現はもとより、地域脱炭素化、産業移転にともなう地域経済のあり方を含めた分野横断的課題の深掘りが重要であると主張してきた。
 今後の政策立案と実施にあたっては、政労使を含む関係当事者が加わる社会対話の枠組みが国・地域・産業の各レベルで行われるべきである。特に「失業なき労働移動」の円滑な実現に向けては、社会保障や生活保障など重層的なセーフティネットの構築や中小・零細事業者の雇用への影響に対して、サプライチェーンだけでなく国や地域での目配りと強力な支援が必要であり、省庁横断的な政府の対応を期待したい。

3.「方針」に示された方向性を具現化するには、国民的な合意形成も必要
 また、「方針」には、政策の具現化にあたり、国民的な合意形成を要する課題も多々残されている。なかでもエネルギーの安定供給を大前提としたGXに向けた脱炭素の取り組みは、S+3Eの確保に加え、国民によるコスト負担増なども見込まれており、国民生活や企業、自治体などに密接する課題である。また、イノベーションを見込む具体的な投資・支援対象の設定や、成長志向型カーボンプライシングとしての排出権取引や賦課金の中長期にわたる具体的制度設計は、産業の成長にかかる重要な課題である。これらの個別政策の具現化に際しては、国が責任を持ち前面に立って国民、企業、自治体などに充分な説明を行い、国民的な合意形成を丁寧に進めるべきである。

4.連合自らも、国際組織と連携し、脱炭素の取り組みを推進
 連合は、引き続き、国際労働組合総連合(ITUC)との連帯を通じたグローバルレベルでの働きかけ、気候変動に強い職場づくりに向けた労使による課題提起と対話促進など、自らも「脱炭素」の取り組みを推進していく。

以 上