事務局長談話

 
2022年12月23日
「2023年度政府予算案」の閣議決定に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.物価高騰に苦しむ低所得者層・中小企業への予算措置は不十分
 12月23日、政府は一般会計総額を過去最大の114兆円超とする2023年度予算案を閣議決定した。予算編成の基本方針では、足元の物価高を克服しつつ、わが国経済を一段高い成長経路に乗せていくとし、GXやDX、スタートアップなど成長分野への投資の拡大は示したものの、現下の原材料・エネルギー価格などの高騰に苦しむ低所得者層や中小企業に対する恒久的で実効性ある対策は示されず、不十分と言わざるを得ない。

2.構造課題の解決に向けた抜本的な対策も示されなかった
 わが国は、30年余にわたり平均賃金水準の向上が見られず、2022年の出生数が80万人を下回ることが見込まれるなど、経済・社会の構造課題の深刻さが増している。今次予算案ではこうした課題解決に向けた抜本的な対策を示す必要があるにもかかわらず、「こどもまんなか社会」の実現については、出産育児一時金の増額に留まり、肝心の財源議論は先送りとした。また、賃上げについては、「物価上昇を上回る継続した賃上げ」頼みで、中小企業の事業環境支援も価格転嫁の推進に留まっている。

3.安易に国債に依存し続ける財政運営は容認できず、財政規律の強化が必要
 さらに、本来、予算編成は、根拠となる政策と裏付けとなる財源が一体的に措置されるべきであり、情勢の変化に伴い新たな政策立案を行う際には、優先順位を付けたうえで、真に必要な政策に対して重点的に予算配分するなど、財政規律の強化と歳出構造の不断の見直しを行うべきと考える。しかしながら、今次予算総額は、巨額の予備費を含め、緊急対応としていたコロナ禍を上回る額となっている。すでに、長期債務残高は1,000兆円を超え、GDP比でも2倍を超える危機的な財政状況の中、弛緩した財政規律を放置し、財源を安易に国債に依存し続けることは、将来世代への負担のつけ回しであり、容認することはできない。

4.徹底した国会審議を通じて予算案の精査・修正を強く求めていく
 政府与党は、防衛力強化の財源確保策として3税を増税する方向性を示した。なかでも所得税は、新たな付加税を課すとともに、復興特別所得税率を引き下げたうえで課税期間を延長するとし、復興財源の一部転用ともとれる措置を示した。原子力災害被災地域の復興・再生は今後も中長期的な対応が必要であり、断じてその歩みに遅れが生じることはあってはならない。連合は、働く者・生活者の立場から、政党や連合フォーラム議員と連携・協力し、次期通常国会において、税制改正の議論とあわせ、例年以上に徹底した審議を求めるとともに、予算案の精査・修正を強く求めていく。

以 上