事務局長談話

 
2022年12月19日
社会保障審議会医療保険部会における「議論の整理」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.すべての世代で公平な支え合いを強化する方向性は理解できる
 社会保障審議会医療保険部会(部会長:田辺国昭国立社会保障・人口問題研究所所長)は12月16日、「議論の整理」を取りまとめた。全世代型社会保障構築会議で示された論点を踏まえ、①出産育児一時金の引き上げと出産費用などの「見える化」、②前期高齢者財政調整の見直し、③医療費適正化計画の実効性確保などを内容とする。医療保険制度の持続可能性やすべての人への医療アクセスの確保が求められる中、医療費をすべての世代で公平に支え合う仕組みの強化の方向性は理解できる。

2.保険適用への契機として出産費用などの「見える化」を
 「議論の整理」では、出産育児一時金の50万円への引き上げとあわせて、医療機関ごとに出産費用などの「見える化」が盛り込まれた。連合はかねてより、希望する人が安心して子どもを産み育てることができる環境整備に向けて、負担軽減措置を講じつつ、正常分娩も含め、すべて健康保険適用(現物給付)とするよう求めてきた。部会での保険適用を求める意見も踏まえ、保険適用への契機として、妊婦やその家族のニーズをもとにしながら、分かりやすい情報提供のしくみを作るべきである。

3.前期高齢者財政調整への総報酬割導入は問題である
 高齢者医療制度では、後期高齢者(75歳以上)医療給付費の約4割を現役世代からの支援金が支えるとともに、前期高齢者(65~74歳)の医療給付費などについては保険者間の財政調整が行われている。そのため保険者によっては、高齢者医療への拠出金割合が約5割にのぼり、給付と負担の関係が不明確になっている。こうした中、「議論の整理」では、後期高齢者医療制度に続き、前期高齢者財政調整についても加入者数から「報酬水準に応じた調整」(総報酬割)へ一部見直すとされた。これには各保険者や労使の理解が不可欠であり、連合を含む被用者保険関係5団体は意見書提出などに取り組んだ。前期高齢者財政調整への総報酬割導入は、現役世代の給付と負担の関係をいっそう歪めるとともに、積極的な保険者機能発揮の観点からも問題である。

4.将来にわたり持続可能な医療保険制度の実現に向けて取り組む
 少子高齢化が進行する中でも、将来にわたり国民皆保険を堅持し、持続可能な医療保険制度を実現するためには、社会連帯を基本としつつ、制度の検証と不断の見直しが求められる。連合は、構成組織・地方連合会、連合「患者本位の医療を確立する連絡会」や被用者保険関係団体とともに、被保険者・患者・提供者の立場から、次期通常国会で予定される法改正の審議に向け、連合フォーラム議員と連携し、国会や世論喚起などの取り組みを強化していく。

以 上