事務局長談話

 
2022年12月13日
「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服取り扱いに関する検討会報告書」についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.給付審査等への影響に懸念も労働者への保険給付に対する影響は排除
 12月13日、労災保険給付の支給決定に対する事業主の不服取り扱いを検討する厚生労働省の検討会が報告書を取りまとめた。報告書では、①給付支給の決定に対する特定事業主による不服申立等を認めないという従来の解釈を維持したうえで、②労働保険料の決定の適否については、特定事業主の不服申立を認めるとし、③但し、不服申立が仮に認められたとしても、労働者への労災保険給付の支給決定は取り消さないとした。特定事業主による不服申し立て等が認められると、その後の賠償請求訴訟だけでなく、給付審査などへの影響も懸念されるが、一方で、不服申し立てが認められたとしても労働者への給付に対する影響は排除し、被災労働者やその家族の生活の安定を引き続き維持する方向性も示したものと受け止める。

2.事業主の原告適格を肯定する高裁判決は極めて遺憾
 一方、11月29日、東京高裁は、特定事業主の労災支給決定にかかる取消訴訟の原告適格を認め、原告適格を有しないとしていた一審判決を取り消し、差し戻す判決を出した。労災保険法は、被災労働者などの法的利益の保護をはかることのみを目的としており、事業主には支給決定に対する不服審査申し立て等の資格はない。事業主による反発を恐れて労災申請をためらう労働者もいる中で、事業主が労災支給処分に異論を唱える余地を拡大したことは極めて遺憾である。

3.労災保険制度を適切に運用することが重要
 労災保険給付は、被災労働者やその家族の生活を保障する柱となるものであり、その支給にあたっては、災害補償の迅速かつ公正・適切な実施のために法的安定性を保つ必要がある。連合は、労働災害の防止、事業者による「労災隠し」の撲滅などとともに、被災労働者のセーフティネットである労災保険制度のさらなる充実に向け、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上