事務局長談話

 
2022年09月14日
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」の策定・公表に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 清水 秀行

1.サプライチェーン等における人権尊重を促すガイドライン策定を歓迎
 9月13日、政府は、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」を策定・公表した。企業活動のグローバル化に伴う負の影響である人権侵害に対する国内外の関心が高まり、企業の社会的責任のあり方が問われている。欧州を中心に人権デュー・ディリジェンス(人権への負の影響の防止・軽減・救済)の対応を義務化する法整備が相次ぐ中、日本においても取り組み強化に向けた第一歩として「ガイドライン」が策定されたことを歓迎する。

2.策定過程におけるステークホルダーとの連携には課題を残した
 「ガイドライン」が、日本で事業活動を行うすべての企業を対象とし、サプライヤーなど直接の取引先でない場合も含め、最大限、人権尊重に努めるべきとした点などについては評価できる。尊重すべき人権の範囲についても、ILOの中核的労働基準を含む国際的に認められた人権全般とされた。
 一方で、「ビジネスと人権に関する行動計画推進円卓会議」構成員との十分な連携が行われなかったなど、「ガイドライン」策定のプロセスには一定の課題も残った。政府には改めて関係省庁間の連携とステークホルダーとの対話を重視し、改善することを求める。

3.労働組合の関与が盛り込まれたことは重要
 連合は、人権デュー・ディリジェンスのあらゆる場面における労働組合の関与の重要性を主張してきた。労働組合は日常的な労使関係を通じ、労働者の声をくみ取りながら職場の労働安全衛生水準の向上やハラスメントの防止など、労働者の人権に関わる課題を提起し、課題解決に取り組んでいる。このことを踏まえれば、労働組合の関与が「ガイドライン」の随所に記載された点は非常に重要である。

4.連合も企業活動における人権保護の強化に取り組む
 「ガイドライン」の策定により、今後は中小企業を含めた取り組みの広がりと強化が期待される。人権デュー・ディリジェンスは、経営リスクの抑制や企業価値向上の視点で語られることも多いが、その本質は、人権尊重が当たり前の社会を実現していくことにある。そのために、労働組合も企業活動における特別なステークホルダーとして、サプライチェーンにおけるすべての労働者の人権保護に向けた取り組み強化が求められる。連合は引き続き政府の関係諸会議に参画し、他のステークホルダーとも連携して企業活動における人権保護の強化に向けて取り組んでいく。

以 上