事務局長談話

 
2021年06月18日
政府の「成長戦略実行計画」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.「包摂的成長」に向け、多様な意見にもとづく実効性のある対応を
 6月18日、政府は「成長戦略実行計画」(以下、「実行計画」)を閣議決定した。デジタル化の推進やカーボンニュートラルの実現に向けた戦略などの重要課題とあわせ、産業構造転換に伴う失業なき労働移動への支援や、中小企業の生産性向上に向けた環境整備策など、この間連合が求めてきた項目が盛り込まれた点は評価ができる。今後、SDGsの理念でもある「包摂的成長」の実現に向け、多様な意見にもとづき、実態を十分に踏まえた実効性の伴う施策を講じていくことが求められる。

2.「公正な移行」の確保に向け、社会対話の実施が不可欠
 経済・社会のデジタル化や、カーボンニュートラルの実現は、持続可能で包摂的な社会を構築していく上で重要な取り組みであり、各施策を総動員し強力に推進していく必要がある。その際には、雇用などに対する負の影響を最小限にとどめる「公正な移行」を確保していく必要があり、労働組合を含む関係当事者との積極的な社会対話の実施が不可欠である。また、「実行計画」では、人材育成施策としてリカレント教育の充実などが示されているが、企業の教育訓練費が減少し続けていることなどを踏まえると、人的投資に対するインセンティブの付与や職業能力開発に向けた環境整備など、より踏み込んだ対応が必要である。とりわけ、経営基盤の弱い企業や立場の弱い労働者が変化に取り残されることのないよう、支援を充実させることが求められる。

3.労働者概念の早急な見直しと、実効性のある中小企業施策を
 「実行計画」では、フリーランス保護制度の検討について示されている。本年3月に「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」が策定されたが、従来の考え方を改めて提示したにすぎない。多様な働き方が進展していることを踏まえれば、「曖昧な雇用」で働く就業者を含めたすべての働く者の権利保護のため、労働者概念の早急な見直しが必要である。
 また、中小企業の経営基盤強化に向け、事業再構築補助金の不断の見直しや「中小企業の成長を通じた労働生産性向上」に向けた環境整備策が示されているが、労働生産性の向上には、中小・小規模事業者の製品等への労務費の価格転嫁力の向上が欠かせない。「パートナーシップ構築宣言」の拡大による大企業と中小企業の連携強化に取り組むとともに、国や地方自治体においては、各種施策の実効性を高めるための、秘匿性の高い相談窓口の設置など取り組みの強化と周知が必要である。

4.成長の基盤として「雇用と生活保障のセーフティネット」の構築を
 成長と分配の好循環に向け成長戦略が重要な役割を担うことは論を俟たない。しかし、真の「包摂的成長」を実現するためには、経済・社会のいかなる変化があっても安心して働き、暮らすことができる環境が不可欠であり、その基盤として「雇用と生活保障のセーフティネット」を政府・自治体が連携し構築していくことが求められる。
 連合は、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け、誰一人取り残されることのない「包摂」を理念に政策にさらに磨きをかけ、取り組みを加速していく。

以 上