事務局長談話

 
2021年06月18日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2021」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.「誰一人として取り残さない包摂的な社会」の実現を
 6月18日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)を閣議決定した。方針では、感染症の克服と未来に向けた構造改革とともに、脱炭素化、デジタル化、地方創生、少子化対策の4分野を改めて重視する姿勢が示された。
 こうした課題への対応においては、マイナンバー制度活用を伴った様々なセーフティネットの強化、人材育成、「公正な移行」の確保などに向けた取り組みが不可欠である。また、コロナ禍で露呈した社会の脆弱性を是正し、方針で明記された「誰一人として取り残さない包摂的な社会」の実現に向け、具体策を示し実行していくことが重要である。

2.医療計画および地域医療構想の速やかな再検討と実現を
 少子化対策については、実施中の政策が羅列されているにとどまり、出生数の大幅な減少に対する危機感に欠ける内容と言わざるを得ない。感染症への対応として、病床や医療人材の確保に関する協力について、民間病院を含む医療機関に対し国や自治体が要請・指示できる仕組みを構築することは重要な課題である。国には、大規模災害への対応も念頭に、あらゆる設置主体の医療機関の参画による医療計画及び地域医療構想の速やかな見直しを含め、社会インフラとしての日本全体の医療提供体制のあり方を抜本的に改革することが求められる。

3.雇用・生活不安の払拭と経済好循環実現には、最低賃金の引き上げが不可欠
 最低賃金については、「感染症拡大前に我が国で引き上げてきた実績を踏まえて、より早期に全国加重平均1000円とすることを目指し、本年の引上げに取り組む」とされた。最低賃金近傍で働く労働者は解雇や勤務日数の減少で収入が激減するなど生活の困窮度は増しており、2年連続で引上げ幅が僅かにとどまることがあってはならない。厳しい経営環境下にある中小事業者が賃上げしやすい環境整備に不断の努力で取り組むとともに、社会を支える労働者の期待に応えるべく、公労使が最低賃金の果たす意義・役割を再認識した上で議論を尽くし、「誰もが時給1000円」を早期に実現した上で、ナショナルミニマムとしてふさわしい水準へと引き上げるべきである。

4.財政健全化は税・財政一体での課題解決を
 方針では、基礎的財政収支黒字化の目標を見直すことに含みを持たせた。長期化するコロナ禍の影響で経済は落ち込み、2025年の現行目標の達成は絶望的である。次世代の子どもたちへの負担の先送りを解消するために、税制の抜本改革による財源確保と一体で、財政健全化への道筋を示す必要がある。そのためにも、中長期的な財政運営の客観的評価と監視を行う、独立財政機関を設置すべきである。
 コロナ禍が社会経済構造の変化を加速させる中、連合は真に持続可能性と包摂性の確保に資する施策への政策資源の投入を引き続き強く求めるなど、連合のめざす「働くことを軸とする安心社会」の実現に向け取り組んでいく。

以 上