事務局長談話

 
2021年05月12日
デジタル改革関連法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

1.持続可能で包摂的な社会の実現に向けた基盤構築を
 5月12日、デジタル改革関連法案が参議院本会議において与党などの賛成多数で可決・成立した。計6種64本からなる本法案には、デジタル庁新設のほか、緊急事態におけるマイナンバー利用範囲拡大、公金受取口座へのマイナンバーの任意登録、マイナンバーカードの利便性向上策、個人情報法制の一本化等が盛り込まれた。本法案の成立により、国や地方の行政手続きのオンライン化や社会のデジタル化を推進するとともに、国民のセーフティネットを整備することで、経済・社会構造の変化を踏まえつつ、持続可能で包摂的な社会の実現に向けた基盤構築につなげる必要がある。

2.自治体システムの標準化は評価も、「マイナンバー制度」の活用は不十分
 デジタル庁の新設により全国規模のクラウド移行に向けた標準化・共通化に関する企画と総合調整を行い、自治体システム仕様の統一に国が一定の予算措置を行うことが盛り込まれた。これは、給付金手続きの混乱を踏まえた自治体事務の効率化、国民の負担軽減に資するものとして評価できる。
 一方で、「マイナンバー制度」の活用に関しては不十分である。マイナンバーの利用範囲が感染症を含む緊急事態における公的給付に拡大されたことは評価できるが、マイナンバーと預貯金口座の紐付けは、公金受取口座の任意登録を求めるにとどまった。必要な層に的を絞った迅速な支援には、マイナンバーの活用による正確な所得捕捉とその前提となる「すべての預貯金口座」との紐付けによる、「給付付き税額控除」の導入が不可欠である。「税と給付の一体的運営の基盤」によるプッシュ型支援制度の構築にもつながるものとして、早急な制度化を求める。

3.徹底した個人情報保護策を
 個人情報保護法制を国・民間・地方で一本化することで、自治体間で災害時の支援などの情報共有が行いやすくなるとされるが、その実効性確保の前提は個人情報保護の厳格化であり、国会での附帯決議を踏まえた対応が求められる。経済・社会のデジタル化の進展に伴って、個人の権利・利益の保護を強化していくことは社会的な要請である。他方、個人情報の適正かつ効果的な活用は、新たな産業の創出や活力ある経済・社会および豊かな国民生活の実現に資する。国民の安心・安全のため、個人情報保護委員会の機能をさらに強化するなど、徹底した対策を講じると同時に、国民の懸念の払拭に向けた丁寧な説明を続けていくことが必要である。

4.デジタル化の推進により連合のめざす社会の実現に取り組む
 コロナ禍を契機にデジタル化が加速する中で、性別、年齢や障がいの有無、雇用形態、所得の大小などにかかわらず、あらゆる層がくらしの質の向上などの恩恵を受けられるよう、デジタルデバイドを解消していくことが重要である。
 デジタル化の推進により持続可能な社会へと構造変化を促し、連合がめざす「セーフティネットが組み込まれている活力あふれる参加型社会」「誰一人取り残されることのない社会」の実現に向け、連合は引き続き取り組んでいく。

以 上