2020年10月16日
旧労働契約法第20条に関する最高裁判決に対する談話
1.均衡考慮がなされなかったことは残念
10月13日および10月15日、最高裁判所第3小法廷および第1小法廷は、旧労働契約法第20条違反であるとして、有期契約で働く労働者が賞与、退職金、扶養手当を始めとする各種手当の不支給の是正を求めた3つの事件(大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件、日本郵便事件)の判決を下した。日本郵便事件においては、是正を求めた各種手当および休暇制度について「不合理である」との判断を下した。一方、大阪医科薬科大学事件およびメトロコマース事件について、均衡考慮がなされなかったことは残念である。
2.賞与・退職金も均等・均衡を考慮すべき
アルバイト職員および契約社員が、賞与・退職金の不支給について正社員との待遇の差の不合理を争っていた大阪医科薬科大学事件とメトロコマース事件では、2018年のハマキョウレックス事件・最高裁判決を踏まえ、「職務の内容」「職務の内容及び配置の変更の範囲」の考慮要素について、一定の相違を認め、正社員への登用制度等を「その他の事情」として考慮した。しかし、同じ最高裁判決で示されていた、旧労契法第20条は「有期契約労働者について無期契約労働者との職務の内容等に応じた均衡のとれた処遇を求める規定」という均衡処遇については、賞与・退職金の性質・目的は有為な人材の確保にあるとし、判断を示さなかった。だが、格差是正のためには、賞与・退職金も均等・均衡を考慮すべきである。
3.「相応に継続的な勤務」の見込みを評価
時給制・月給制契約社員が扶養手当を始めとする各種手当および休暇について正社員との待遇の差の不合理を争っていた日本郵便事件では、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情について、相応の相違があることを考慮した上で、手当等の性質・目的に照らし、相違があることは不合理と認めた。また、扶養手当・病気休暇については、その目的が「継続的な雇用を確保する」ものであるとした上で、時給制・月給制契約社員についても、「相応に継続的な勤務が見込まれる」のであれば、その目的に該当すると認め、相違について不合理と判断した。
4.パート・有期雇用で働く者の均等・均衡待遇実現に向け、全力で取り組む
連合は、旧労働契約法第20条を承継し、2020年4月より施行されたパート有期法に先行し、パート・有期雇用で働く者の待遇の改善、公正な処遇の実現を方針に掲げ、労働条件の改善に取り組んできた。2021年4月にはパート有期法が中小企業にも適用される。働く現場においては、パート・有期雇用の仲間が基幹的役割を果たし、責任ある仕事を任されていることも多い。連合は、組織化・労使交渉を通じ、基本給・賞与等も含めた待遇の改善、格差の是正に全力で取り組んでいく。
以 上