事務局長談話

 
2020年07月17日
政府の「経済財政運営と改革の基本方針2020」に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長     相原 康伸

1.コロナ禍で露呈した課題の解決に全力を
 7月17日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)を閣議決定した。今回のコロナ危機により、フリーランスなど曖昧な雇用の脆弱性や格差が浮き彫りになるとともに、マイナンバー制度活用やデジタル化の遅れが表面化し、事業・生活再建の遅れなどにつながった。方針が掲げる「未来を先取りする社会変革」に取り組むうえで、こうした課題の解決をはかることが今後の第2波や災害等の危機に備えるためにも不可欠であり、早急に進めるべきである。また、財政規律の観点が棚上げされたことは看過できない。巨額の借金で財政支出を行った今こそ、財政健全化に向けた具体的な道筋を国民に示し、将来世代への責任を果たさなければならない。

2.安定的でディーセントな雇用の創出と社会保障分野の人材確保に取り組むべき
 方針で掲げる「雇用・事業・生活を守り抜く」ために、雇用保険の国庫負担割合を原則に戻すとともに、安定的でディーセントな雇用の創出支援や職業訓練の拡充など、国は積極的な役割を果たすべきである。また、副業・兼業やテレワークなどについては、長時間・過重労働などのリスクを明確に示したうえで、労使による十分な議論を行うべきである。
 「ウィズコロナの経済戦略」とされる検査体制の拡充、医療提供体制の充実、治療薬・ワクチンの開発の加速などの実現には人材が欠かせない。命を守り、安心を提供し、重度化予防の実効を上げるために、保健所を含め社会保障分野の人材確保に全力を挙げ、体制強化をはかることが極めて重要である。また少子化対策・女性活躍については、雇用形態や性別にかかわらず、誰もが仕事と育児を両立できる就業環境の整備に取り組むと同時に、実効性あるポジティブ・アクションを進めるべきである。

3.経済の好循環継続には最低賃金の引き上げが必要
 最低賃金については「より早期に全国加重平均1000円になることをめざすとの方針を堅持」としているが、全国加重平均の目標では地域間格差をさらに拡大しかねない。「誰もが時給1000円」を早期に実現したうえで、ナショナルミニマムとしてふさわしい水準まで引き上げる必要がある。他方、「今年度の最低賃金については、中小企業・小規模事業者の置かれている厳しい状況を考慮し検討を進める」としているが、最低賃金の改定を決定するのは地方審議会であり、公労使三者構成原則での議論が尊重されるべきである。「経済の好循環の鍵となるのは賃上げ」であり、デフレ回帰の動きを惹起させないためにも、最低賃金を引き上げていくべきである。

4.安心で持続可能な社会の実現に向け全力で取り組む
 
連合は、新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、構成組織・地方連合会、さらには労働相談で寄せられた声を政策として取りまとめ、政府・政党などへの政策要請をはじめ、様々な活動を通じてその実現に取り組んできた。コロナ禍で再認識されたわが国のセーフティネットの脆弱性や、今後大きく変容する働き方や社会の動きを踏まえ、安心で持続可能な社会の実現に向けて、引き続き全力で取り組んでいく。

以 上