事務局長談話

 
2020年06月05日
社会福祉法等改正法案の可決・成立に対する談話
日本労働組合総連合会
事務局長   相原 康伸

1.複雑かつ複合化した支援ニーズに対応するための第一歩として評価する
 「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律案」が6月5日、参議院本会議で可決・成立した。介護、障がい、子どもおよび生活困窮に関する包括的な相談支援、参加支援(社会とのつながりや参加の支援)、地域づくりに向けた支援を一体的に実施する事業(重層的支援体制整備事業)が創設されたことは、複雑かつ複合化した支援ニーズに対応するための第一歩として評価する。一方、介護分野については、人材確保が論点にされながら、処遇改善には踏み込んでおらず、早急な対応が求められる。
 

2.地域の実情に応じた重層的支援体制の全国における構築を
 老々介護や独居高齢者の増加、ひきこもりなど本人や家族の社会的孤立、8050問題やダブルケアなど、これまでに解決できなかった社会問題や地域住民の抱える課題が結び付き、複雑化・複合化している。そのような状況で、重層的支援体制の全国的な普及と、支援を必要とする人に寄り添った継続的な支援の実施体制の構築が求められている。今回は、実施を希望する市町村の任意事業とされたが、全国で実施されることが重要である。国は国会での附帯決議を踏まえ予算の確保に努めるほか、地域の実情に応じた事業と実施体制の構築、事業全体の充実・標準化のための支援を都道府県とともに積極的に行うべきである。また、包括的支援に携わる相談員や支援員が継続的に事案に携わることができる体制整備と処遇改善を進めるべきである。

3.介護・障がい福祉人材の処遇改善について、引き続きの検討が求められる
 介護や福祉分野の人手不足は年々深刻化しており、処遇改善による人材確保対策の一層の強化が求められている。今回の束ね法案では、人材確保策に関する介護保険法も改正されたが踏み込み不足である。こうした中で、立憲民主党、国民民主党など野党共同会派は、介護事業所で働く者に月額一人1万円の処遇改善を行う法案を提出したが、今回、成立しなかったことは残念の一言に尽きる。また、介護福祉士養成施設卒業者への国家試験義務づけに関する経過措置をさらに5年間延長することは、介護職の社会的地位や人材確保に影響を及ぼす問題である。政府はこの措置の終了に向けて速やかに検討を開始すべきである。

4.誰もが住みなれた地域で安心してくらせる社会の実現に取り組む
 新型コロナウイルス感染症の広がりから、感染防止策の徹底と相談支援の実施の両立は急務である。人との接触が限定されるなかで支援ニーズに応じたアウトリーチでの取り組みが求められるという相反する新たな課題が生じており、重層的支援体制の具体化に向け情報共有と好事例の周知等が求められる。介護や福祉は私たちの生活を維持するために不可欠なインフラであり、全国的な実施体制の維持・確保が求められる。連合は、2021年度介護報酬改定の議論において一層の処遇改善を求めていくとともに、誰もが安心してくらせる共生社会の実現、介護離職のない社会の実現をめざし、審議会対応をはじめとした取り組みを進めていく。

以 上