事務局長談話

 
2019年08月28日
2019年「将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」の公表に関する談話
日本労働組合総連合会
事務局長 相原 康伸

  1. 財政検証では基礎年金の給付水準は約4割低下、制度改革が急務
     厚生労働省は8月27日、公的年金の2019年財政検証結果を公表した。前回と比べ検証結果の公表が遅れたことは大変遺憾である。検証結果(ケースⅣ)では、モデル世帯の基礎年金の給付水準が2019年に対し2040年には約22%低下、2053年には約36%低下するという見通しも示された。団塊ジュニア世代が高齢期に差し掛かる2035年以降を見据え、すべての人が安心してくらせる年金の実現に向けて早急に社会保障審議会年金部会で抜本的な制度改革議論をはじめるべきである。
     

  2. 経済の実勢や将来の不確実性を十分に踏まえていない経済前提
     財政検証の経済前提において、年金改革法(2016年成立)の国会附帯決議で「より経済の実勢や国民のニーズに合った財政検証の態様の見直しを検討する」ことが要請されていたにもかかわらず、実質経済成長率の計算にかかわる全要素生産性(TFP)上昇率が高めに仮定されたことで、年金財政に影響の大きい賃金上昇率も高めの設定となっている。公表された結果については楽観的に受け止めるべきではないと考える。
     

  3. 厚生年金のさらなる適用拡大などによる給付改善を
     オプション試算では、厚生年金のさらなる適用拡大によって給付改善が図られるとともに年金財政の安定にも資するとの結果が示された。雇用形態や企業規模等の違いにより厚生年金に適用されないのは不合理であるため、これらの試算結果を踏まえ、すべての労働者に厚生年金を適用させる方向で検討を行うべきである。
     また、保険料拠出期間の延長によって基礎年金の給付水準が3.7~3.8%上昇するとの結果も示された。基礎年金の給付改善は急務であり、その検討にあたっては、被保険者や受給者等における公平性や納得性を十分に踏まえる必要がある。
     

  4. 連合は、公的年金の機能強化と真の皆年金の実現に向け全力で取り組む
     すべての人が安心してくらせる年金の実現のためには、基礎年金の給付改善と厚生年金のさらなる適用拡大などによる公的年金の機能強化が急務である。連合は、将来世代を含むすべての人が安心してくらし続けられる真の皆年金の実現に向け、社会全体に対して連合の考え方を訴えかけ世論喚起をはかるとともに、構成組織・地方連合会・連合本部が一体となった取り組みを全力で進めていく。


以 上