事務局長談話

 
2019年06月26日
「労働政策基本部会報告書~働く人がAI等の新技術を主体的に活かし、豊かな将来を実現するために~」についての談話
日本労働組合総連合会
事務局長  相原 康伸

  1. AI等の新技術が雇用・労働に与える影響について一定の方向性を示す
     本日、労働政策審議会労働政策基本部会(部会長:守島基博 学習院大学経済学部教授)は、報告書を取りまとめることとした。2018年7月に発出された報告書に続き、今回は「AI等の新技術」(以下、AI等)が雇用・労働に与える影響についてさらに検討を深めたものである。今回の報告書では、[1]質の高い労働の実現のためのAI等の活用、[2]AI等の普及により求められる働き方の変化、[3]働く現場でAI等が適切に活用されるための課題の3点について、一定の方向性が示された。

     

  2. AI時代においても労使のコミュニケーションの重要性を示唆した点は評価
     報告書では、AI等を導入する際には、「労働者にとって必要な取組を労使のコミュニケーションを図りながら進めていくことが重要」であるとした。また、労働組合が存在しない職場における労使のコミュニケーションの在り方について議論を深める必要があるとしており、集団的労使関係の重要性を示唆した点については評価したい。「人間中心のAI社会原則」でも言及されているとおり、AI等は「高度な道具として人間を補助」すべきものであり、AI等を導入する際には、現場の諸課題を熟知する労働者の声を十分に踏まえる必要がある。
     

  3. 一般財源による中長期的な能力開発のための環境整備を
     報告書では、スキルアップ・キャリアチェンジに向けた支援や、AI等の変化に対応できない労働者を社会全体で支える必要性についても言及している。AI等の普及により、求められるスキルも今後変化していくことを踏まえれば、政府・自治体・企業が総力を挙げて労働者の中長期的な能力開発に取り組む必要がある。とりわけ、政府においては、一般財源を投入した能力開発のための環境整備が急務である。また、AI等の変化に対応できない労働者には、就労支援等を通じた「働く場」の確保をはじめとするセーフティネットの強化が不可欠である。
     

  4. 「働く者」が主役の社会に向けて諸課題の解決に取り組む
     今後は、労働政策審議会において本報告書を議決した後、関係分科会等において、雇用類似をはじめとする諸課題の検討が期待されている。AI等の普及により社会構造が大きく変化しようとする時代においても、「働く者」が主役でなければならない。そのためにも、AI等は、企業・労働者への多様なメリットのみならず、ディーセント・ワークや雇用の安定性をも担保すべきである。連合は業種・産業レベル、地域レベルを含むそれぞれの段階における政労使による対話を通じ、「働くことを軸とする安心社会」の実現に向けて全力で取り組む。
    以 上