連合
サイトマップヘルプ
連合英語版ホームページへ

ホームの中のくらし・政策の中の目指そう「ワーク・ライフ・バランス社会」の中のワーク・ライフ・バランス:連合の基本的考え方

ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の基本的考え方


このコーナーの目次


はじめに

 いまワーク・ライフ・バランスが国民的な課題として浮上し、各方面で積極的に論議が展開されている。
 その背景には、社会格差の拡大と働き方の二極化が進むなかで、メンタルヘルスを含めた健康障害が深刻化する一方、ワーキング・プアや格差の固定化が社会問題化し、急速な少子化の大きな要因ともなっていることがある。
 こうした状況を打開し、だれもが安心して働き続けることが可能になり、だれもが仕事と生活の調和が選択可能になる「ワーク・ライフ・バランス社会」を実現することは、労働組合が担うべき重要な使命である。このことは、働く者の立場から、現在進行しているルールなき、むき出しの競争社会に歯止めをかけ、労働の尊厳を回復し、持続的な社会を形成していくことに他ならない。
 そのためには、何よりもまず、各労働組合と労働者個々人が「働き方改革宣言」を発して、自らの意識やスタイルを変えていくとともに、企業や地域に対して主体的に働きかけていくことが出発点となる。
 そこで問われるのは、狭い意味の「少子化対策」や「子育て支援」を超えた、生活時間を取り戻すためのトータルな「働き方改革」であり、とりわけ長時間労働が恒常化し、家族的責任や地域参加の責任を担えずにいる男性正社員の働き方の見直しである。加えて、働く側にとっての多様な働き方を可能とする諸施策の推進、安心して子どもを生み育てられる社会的基盤づくり等が政策パッケージとして実行されていくことである。
 さらに、政策・制度の改善だけでなく、社会システム、労働慣行、さらには個人の意識改革も求められ、国、自治体、企業、個人のそれぞれのレベルでの役割を明らかにして取り組みを進めていく必要がある。

 この「基本的考え方」は、連合がめざす「ワーク・ライフ・バランス社会」の基本的な方向を共有しアピールしていくためのものであり、具体的な取り組み方針については、それぞれの課題ごとの方針で別途示すこととする。

1.われわれがめざす「ワーク・ライフ・バランス社会」

 連合がめざすワーク・ライフ・バランス社会とは、「すべての働く人々がやりがいのある仕事と充実した生活との両立について、自分の意思で多様な選択が可能となる社会、それを支える政策やシステム、慣行が構築されている社会」のことである。
 「1日8時間は労働のために、次の8時間は休息のために、残りの8時間は自分自身のために」――これは今から100年以上前に、アメリカの労働者が1日8時間労働を要求してデモ行進をした際に掲げられ、メーデーの起源となったスローガンである。ここには、労働に従属しない自由時間をまず確保するという考え方が明確に示されている。
 こうした視点に立って、個々の政策による対症療法ではなく、実現すべき社会の姿を明らかにした上で一体的な政策の立案と運用をしていくことが求められている。
 連合がめざすワーク・ライフ・バランス社会の基本方向は次の6点である。

(1)「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)」が保障されること

 ディーセント・ワークというのは、ILOが掲げた目標で、「安心して働き続けられる仕事」といった意味である。働く人々と家族が健康で安全な生活を送ることができ、生活できる賃金の保障を得て、働く人たちの権利が守られ、社会的対話に参加でき、必要に応じて社会的保護が受けられるものとされている。
 わが国においても、ILOが掲げた共通の目標に沿って、日本におけるディーセント・ワークを追求することが、ワーク・ライフ・バランス社会にとって不可欠である。

(2) すべての男女労働者に等しく保障されるものであること

 ワーク・ライフ・バランスは、男性であるか女性であるか、家族的責任を有しているかどうかにかかわらず、また正規であるか非正規であるかを問わず、いかなる形で働く男女労働者に対しても等しく保障されるものである。
 ワーク・ライフ・バランスを推進するには、これまでどちらかというと男性が主たる稼ぎ手として仕事面を主に担い、女性が主に生活面を担うという固定的な分業関係を見直し、仕事の面でも生活の面でも男女が共同に参加できる環境整備が求められる。

(3)働く側にとって選択可能な働き方であること

 多様な働き方は、働く側が選択するものであって、雇う側に選択されるものではない。そして、個人の選択によって転換ができるようなものでなければならず、生活やライフサイクルに合わせて働き方や労働時間を選択できるものでなければならない。そのためには、働き方に中立的な税・社会保障制度の確立と、労働条件の均等待遇の法制化が必要である。また、人材の育成と評価についての社会的な仕組みづくりが必要である。

(4) 子育て・介護等を支える社会基盤が確立されていること

 ワーク・ライフ・バランス社会は、誰もが仕事上の責任を果たしつつ、地域で支え合い、助け合うことによって安心して子どもを生み、育て、家族等の介護ができる社会を志向するものである。そのためには、公共サービスを中心に保育や介護を社会全体で支える制度を整備・拡充する必要がある。

(5) 個人生活を尊重し、質の高い働き方を求める企業文化、社会システムに転換すること

 連合が求めるワーク・ライフ・バランス社会は、政策・制度の改善だけで実現できるものではなく、社会システム、労働慣行の見直しが必要である。目に見えない拘束・支配による長時間労働、過重労働を生み出すような賃金制度、性役割に基づく働き方や責任分担等これまでのシステムや慣行を見直し、男性の育児休業取得が当たり前になる企業文化にしていく必要がある。

(6) 企業の社会的責任の観点からも積極的に推進すること

 企業が率先してワーク・ライフ・バランス施策を実行することは、CSR(企業の社会的責任)の観点からもきわめて重要である。
 ワーク・ライフ・バランス社会は働く側にとっての課題だけではない。企業にとってもメリットがある。仕事と生活のメリハリをつけたり、人材育成を進めることで生産性が向上し、業務効率も高まる。多様で柔軟な働き方の導入によって多様な能力をもった人材の確保や定着につながり、その結果、労働の質を高め労使双方にとってメリットのある働き方を実現することができる。

2.現状と課題

(1)仕事と生活の調和の現状

[1]働き方の二極化

 1997年以降の10年間で雇用は大きく変動し、正社員が減少を続けたのに対して、パート・派遣等の非正規雇用が一貫して増加傾向にあり、労働時間分布で見た場合には、週35〜60時間の労働者が減少する一方で、週35時間未満と週60時間以上の労働者が増えている。

[2]長時間労働の現状

 一般労働者の年平均総実労働時間は2001時間と高止まりしている。とくに30歳代の男性はおよそ4人に1人が週60時間以上働いており、統計には現れない不払い残業も後を絶たない。
 こうした働き方のもとでは、育児・介護休業等の制度が整っても、家族的責任のある労働者にとって仕事と家庭生活を両立させることは依然として困難であり、家庭で夕食をとることすらできない正社員は、家事・育児・教育等に関わることができず、結果として、多くの働く女性は仕事と出産の選択を迫られることとなり、少子化の一因ともなっている。
 また、仕事に時間をとられゆとりのない働き盛り世代は、本来なら住民として参加すべき地域の活動にも参加できず、地域社会の担い手不足という問題も生じている。
 さらに、長時間労働の常態化は健康障害を惹起し、メンタルヘルス不調者や過労による脳や心臓の疾患、さらには過労死、過労自殺の増加という深刻な事態を招いている。

[3]パート・派遣等労働者の現状

 パートや派遣で働く人たちの増加は、コスト競争の激化によって会社の都合で、安く柔軟に活用される労働者が増えているというのが主たる増加の理由であり、すべての人が家庭や個人のニーズに合わせて柔軟な働き方を選択できているわけではない。
 若年労働者をはじめ、正社員代替として増加したパート・派遣労働者の多くは、従来の職務補助的業務から基幹業務を担うようになり、働く目的も、家計の補助から生計費を得るための仕事へと変化している。しかし、賃金等の労働条件は低く抑えられることによって、「ワーキング・プア」(仕事をしているのに収入は生活保護費以下の労働者)が増大し、生計を立てるために職場をかけ持ちし、結果的に長時間労働を余儀なくされる労働者も少なくない。
 とくに、母子世帯の状況は深刻であり、若い世代でのいわゆる非正規労働者の増大と固定化は、少子化問題や社会保障制度の危機に直結しているだけでなく、将来にわたる人材育成の点からも大きな問題となっている。

[4]危機的なアンバランス状況

 以上のように、一方で過度な長時間労働が常態化した正社員、他方で、雇用の不安定で将来を見通せないパート・派遣労働者が広がるなかで、どちらにとっても仕事と生活のバランスは危機的な状況に直面しているといえる。
 こうした状況は、急速な少子化の大きな要因となっている。2006年度の政府人口推計では、50年後には子どもの数が2005年の1,760万人(総人口比13.8%)から750万人(同8.4%)に激減すると分析されている。日本はますます子どもが生みにくく育てにくい国になろうとしている。
 結婚や出産に関する希望と実態の乖離に関する厚生労働省の調査によると、結婚については「収入・雇用の不安定さ」、第1子出産については「長時間労働」と「就業継続の見通しのなさ」、第2子出産については「女性に偏った家事・育児負担」が躊躇する原因として挙げられている。
 さらに、日本では家族・児童関係の社会支出のGDP比が0.75%、教育関係支出が3.7%。それぞれ2%以上、5%以上を占めるヨーロッパ諸国に比べて著しく低く、大きく立ち後れていることも見逃せない。

[5]背景にある企業経営と政府の政策運営のあり方

 こうしたアンバランスの背景にあるのは、企業経営と政府の政策運営の変化である。
 90年代以降、バブル崩壊後の長期不況と経済のグローバル化が急速に進み、世界的な大競争時代の中で、コスト削減、産業の国際競争力強化が叫ばれ、企業行動や働き方にも大きな影響を及ぼしてきた。
 また、経済苦境を乗り切るためには「3つの過剰」(過剰債務、過剰設備、過剰雇用)の削減が必要とされ、政府はそのための支援策を打ち出し、個別企業においても大リストラが実行された。
 グローバル化、ポスト工業化社会の下で低価格競争が、仕事と生活のアンバランスに拍車をかけていることも無視できない。(連合評価委員会は、こうした状況に対して「マネーゲーム化した資本主義の荒廃や、不平等・格差の拡大という不条理に対する怒りがあまり感じられず、その運動に迫力が欠ける」と指摘している。)
 なお、長時間労働の背景には、24時間365日サービスの提供を求める消費行動もあることから、自らのライフスタイル見直しも重要な課題である。

(2)仕事と生活の調和をめぐる内外の動向

[1]欧米の動向 〜男女双方対象に大きく変化

 欧米諸国においても、仕事と生活の調和は女性を対象とした両立支援の課題と位置づけられていたが(1965年のILO勧告等)、70〜80年代に入ると、企業の人事制度や政府の政策等で大きな変化が見られるようになり、男女双方の課題として広がっていった。
 1979年の国連女性差別撤廃条約を経て、1981年のILO第156号条約では、[1]家族的責任をもつ男女労働者の平等実現、[2]家族的責任をもつ労働者と一般労働者との平等実現が明記され、とくに後者は一般労働者の時間外労働抑制を課題としていた。
 企業のワーク・ライフ・バランス施策は80年代初期に、アメリカやイギリスを中心に増加したワーキングマザー向けのワーク/ファミリーバランスとして始まったが、90年代初期からはワーキングマザーだけでなく、独身や子どものいない従業員向けの諸施策も提供するようになり、フランスやドイツの政策展開も含め拡充していった。
 こうした流れのなかで、仕事と生活の調和については、デンマーク(積極的労働市場政策)、スウェーデン(国による支援)、オランダ(コンビネーションモデル)、アメリカ(市場依存)等、特徴あるタイプが生まれている。

[2]日本の動向 〜女性の両立支援の域を出ず

 日本の労働モデルというのは「男性が仕事をして女性が家事や育児をする」というもので、70年代までの政府や組合の政策は、「男性稼ぎ手モデル」に従って作られてきていた。一方で、伝統的な労働モデルを前提としつつも、働く女性たちは労働組合に結集し、自らの健康と就業環境整備を求める運動や保育所設置を求める運動を展開してきた。この結果、「男性稼ぎ手モデル」は次第に修正を余儀なくされるようになった。女性労働者の地位向上を求める運動が70年代初頭から次第に高まり、女性労働者の要求は「働く女性の権利確立」から「女性の働く権利確立」へと質的に転換し、結婚後や出産後も働き続けるための法律の改正を政府や労働組合に求め、女性の就業も徐々にではあるが増えていった。しかし、出産・育児を個人の責任と捉え、「育児を理由に仕事を休むのは女性の職場への甘え」とする企業文化は根強く、多くの女性労働者は出産と職業の二者択一を迫られる状況に置かれている。
 法制面では、勤労婦人福祉法(1973年)とそれを全面的に改正した男女雇用機会均等法(1985年)において「働く女性」に限定された「職業生活と家庭生活の調和」が掲げられていた。ILO第156号条約の批准に伴って育児・介護休業法(1995年)が制定されるとともに、均等法改正(1997年)の際に「職業生活と家庭生活の調和」の文言が削除された。その後、男女共同参画社会基本法(1999年)が成立、内閣府に男女共同参画会議が発足し法令と制度の枠組みは男女適用となり、次世代育成支援対策推進法(2003年)も制定され、ファミリー・フレンドリー企業表彰等の啓発・普及や地域の次世代育成支援計画に基づく保育の基盤整備も広がりつつある。
 しかし全体として見ると、仕事中心社会のままで、生活とのバランスがとれているとはいえず、仕事と生活の調和施策についても、育児休業取得率の極端な男女格差が示しているように、実態としては「働く女性の育児・介護支援」の域を大きく出ているとはいえない状況にある。

(3)直面している課題

[1]ほとんど変わっていない男性正社員モデル

 「男女双方」に大きくシフトした欧米の動向に比べて日本の現状が大きく立ち後れている最大の要因は、男性正社員の仕事と生活のスタイルが全くといっていいほど変わっていないことである。つまり、企業が求める仕事最優先の従業員像は長時間労働を前提としており、その結果として、家事・育児・介護や地域活動にはほとんど携われないようなスタイルが働き方の「基準」とされてきた。その基準から外れる場合は、「一般職」や「非正規」として位置づけられてきたといえる。
 その結果、主として女性の就業形態の「多様化」が進んできたが、女性の働き方が変化しても、生活領域の性別分担は変わっておらず、仕事と生活のアンバランスの負荷はもっぱら女性に集中しているのが実態である。
 したがって、ワーク・ライフ・バランスの実現には、何よりもまず職場における働き方基準そのものを見直すことが不可欠となる。

[2]ワーク・ライフ・バランスに逆行する労働条件の低下

 長時間労働が蔓延している背景には、行きすぎた規制緩和による過度な競争の激化と、それに呼応して際限なく下方にシフトしている労働条件の切り下げがある。
 すべての働く人々がワーク・ライフ・バランスを享受できるようにするには、残業収入に依存しなくても済むような所得保障や、仕事に応じた賃金の均等処遇、さらに生活できる水準を保障する最低賃金の引き上げ等が不可欠となる。

[3]ワーク・ライフ・バランス論議の問題点

 最近になって、各省庁が設置した諸会議をはじめ仕事と生活の調和やワーク・ライフ・バランスに関するさまざまな動きが見られることは歓迎すべきことであるが、部分的な施策や小手先の施策にとどまるのであれば、結果として現状のアンバランスを助長することにもなりかねない。

  • 現状の働き方を前提とした女性の両立支援策だけであれば、結果的にいま問われている性別役割分業を固定化する危険性がある。
  • 今、アンバランスに直面している人の当面のニーズ対応だけに終わるならば、働き方のトータルな見直しや全体の仕組みは何ら変わらないまま、個人の自助努力の支援に矮小化される可能性がある。
  • 仕事と生活の調和の実現には「自律的な働き方」が必要だとして、労働時間管理や労働時間規制の適用除外をさらに拡大する動きが強まっている(アメリカのホワイトカラー適用除外やイギリスのオプト・アウト制度の導入論等)。これらは、むしろ長時間労働をさらに助長するものであり、われわれが求める仕事と生活の調和とは、正反対のものと断言せざるをえない。

3.求められている政策パッケージ

 ワーク・ライフ・バランス社会は、個々の政策ではなく、総合的な戦略の下に実効ある複数の政策パッケージによらなければ実現は不可能である。これは先行する先進諸国でも経験済みのことである。
 わが国では、まず正社員に対しては、長時間労働を是正するとともに、出産や子育て等によってキャリアが中断されず、平等な社会参加が可能となる仕組みを作る必要がある。
とくに、仕事中心の生き方が当然となっている男性に対しては、長時間の仕事や企業の拘束から解放し、家庭や地域で過ごす時間と心身の健康を保障する必要がある。
 パート・派遣労働者に対しては、正社員との均等な処遇のルールと転換可能な働き方を保障する必要がある。さらに、子どもに対しては、「社会で育てる」仕組みと環境の整備とともに、子育て世代に対する経済的負担の軽減策等が必要である。

(1)生活時間の確保と長時間労働の抑制

 長時間労働を抑制しすべての労働者が生活時間を確保できるよう、労働基準法を改正するとともに、職場における労働時間の取り組みを促進するため、労働時間等設定改善法を「仕事と生活の調和法」(仮称)に改正する。

  • 労働基準法の改正
    時間外労働限度基準の法制化
    (特別条項のあり方や最長労働時間規制の検討)
    夜勤時間数や回数規制等
    時間外割増率の引き上げ
  • 労働時間等設定改善法の改正
    仕事と生活の調和を目的に
    年間総労働時間の数値目標設定
  • 24時間365日サービスの提供体制の見直し
    (営業時間の見直しや正月三が日の休業化等)

(2)働く側にとっての多様な選択肢

 生活のニーズやライフスタイルに合わせて、個々人が主体的に働き方を選択できるよう、各企業における制度を整備するとともに、労働条件の均等待遇や最低保障等の法整備を行う。

  • 生活重視の柔軟な働き方
    短時間勤務制度の拡大(自己啓発等取得要件の拡大)
    短時間正社員制度の拡大
    男性の育児休業取得促進措置
  • 労働条件の均等待遇法制化
  • フルタイム労働とパート労働の相互転換制度の拡大
  • キャリア形成に対する支援策の拡充
  • 生活できる水準を確保する最低賃金引き上げ
  • 新たな最低生活保障制度の構築:[1]社会・労働保険の機能強化、[2]非正規労働者、長期失業者、貧困層等の自立支援に向けての「就労・生活支援給付」の創設、[3]生活保護制度の抜本改革

(3)働き方に中立的な税・社会保障制度

 一層の核家族化の進行、働く女性の増加、少子化の進行、男女共同参画社会の実現の視点から、就労等の選択に中立、公平な税制、社会保障制度を実現する。

  • 配偶者控除を「扶養控除」に統合
  • 給与所得1,000万円以下(夫婦合算所得)の納税者が選択できる夫婦合算均等分割制度(二分二乗制度)の創設
  • 扶養控除(中学3年までの子)を児童手当の増額に振り分ける
  • 社会保険(雇用保険)の全員適用
  • 失業中も障害年金や遺族年金の受給権を確保するための厚生年金(所得比例部分)への継続加入制度の創設
  • 遺族厚生年金の支給要件(年収850万円未満)の段階的引き下げ
  • 個人事業等の雇用労働者である国民年金第1号被保険者の育児休業中の保険料免除制度の創設

(4)育児・介護の社会化

 男女がともに働きながら、安心して子どもを産み育て、家族のケアができるよう、社会全体で子育てと介護を支える制度を整備・拡充する。

[1]育児・介護のための時間保障

  • 休業制度・短時間制度の拡充
  • 本人の選択を前提とする勤務の柔軟化(在宅勤務、評価制度見直し、要員確保等 )

[2]経済的負担の軽減

  • 児童手当の拡充(一律1万円、義務教育終了まで、所得制限なし)
  • 公的奨学金制度の充実
  • 保育料負担の半減、児童手当や育児休業給付の拡充
  • 保育サービス、児童手当、育児休業給付等の財源を統合し、総合的な次世代育成支援制度の確立に向けての「子育て基金」(仮称)の創設

[3]生活インフラの公的整備

  • 保育サービス等の拡充(0歳から小学校卒業までの切れ目のない保育サービスの確保、潜在的保育ニーズを考慮した保育所定員増と保育所待機児童の解消、病児・病後児保育、子育て支援センターの拡充、学童保育の整備等)
  • 介護保険制度の拡充(介護保険の被保険者・受給者範囲の拡大等)
  • 地域医療の整備(母子保健・小児医療・緊急体制の強化、妊娠・出産にかかる費用の健康保険適用、乳幼児医療費の無料化等)
  • 子育て世帯への民間賃貸住宅供給の増加

[4]子どもを権利の主体と位置づけた子どもの権利条約の理念をふまえた保育施設体系の確立

  • 児童福祉法に規定する国・地方自治体の責務の堅持

4.推進に向けた枠組みと各分野の役割

 ワーク・ライフ・バランス社会を実現するためには、推進するための枠組みを作り、それぞれのセクターが役割を発揮していくことが求められる。
 国、自治体、産業、企業のそれぞれのレベルにおいて合意形成を図り、労使も参加した枠組みを作っていくことが重要である。
 その際、労働組合は、自ら「働き方改革宣言」を発して自己改革に取り組み、各レベルの労使協議を積極的に進めるとともに、支え合い基盤の強化に向けて労働福祉団体やNPOと連携を強めていく必要がある。

(1)国レベルの課題

[1]政労使による合意形成

 ワーク・ライフ・バランス社会への転換の必要性と方向性について、政労使による 合意を図り、国民的なアピールを行う。

[2]ワーク・ライフ・バランスに向けた施策

 国は、必要な法整備を行うとともに、地方自治体や企業における計画作成を義務づ け、そのための支援措置を行う。

  • ワーク・ライフ・バランスに向けた法整備と運用強化
    労働時間法制の改正(労基法、労働時間等設定改善法等)
    均等待遇の法制化
    最低賃金の大幅引き上げ
    優越的地位の濫用防止等公正な取引関係の実現
    ILO第94号条約(公契約における労働条項)の批准と国内法整備
    国や地方自治体における公共工事入札の際の総合評価方式へワーク・ライフ・バランス推進に関する項目の導入
    24時間365日サービスの提供体制の見直し
  • 自治体や企業における計画策定への支援
    地方の取り組みに対する支援措置
    自治体による計画策定の支援
    自治体による次世代育成支援計画の拡充
    企業・産業労使の取り組みに対する支援措置
  • ワーク・ライフ・バランス指標の開発
    企業評価、公契約取引、CSR(企業の社会的責任)の取り組みへの活用

(2)地方・地域における課題

[1]自治体と労使団体による合意形成

地方における「三者共同宣言」採択、地方議会での決議や条例制定等

[2]自治体と労使団体による計画策定

公契約における総合評価方式によるワーク・ライフ・バランス実践企業の積極的評価
労働時間短縮・柔軟化の施策
子育て支援の施策
介護支援の施策
地域活動・文化活動の活性化
ワーク・ライフ・バランス実践企業に対する支援
24時間365日サービスの提供体制および消費行動の見直し

[3]自治体が策定する次世代育成支援地域計画の充実

  • 地域で親・養育者が行う子育てへの支援

(3)産業・企業における課題

  • 産業・企業における合意形成と労使協議
  • 企業における計画策定(次世代育成支援計画との関係整理も視野に)
  • ワーク・ライフ・バランスに配慮した取引先等との関係構築
  • 24時間365日サービスの提供体制の見直し

(4)労働組合の課題

 ワーク・ライフ・バランス社会の実現に向けて主導的な役割を発揮していくため、まず労働組合や労働者個々人が「働き方改革」にチャレンジしていくとともに、各企業や政府・自治体に対して積極的に働きかけていく。

[1]自らの「働き方改革宣言」の発信

  • 各組合における職場討議と「宣言」の確認(「参考」の宣言を参照)

[2]「宣言」を具体化するための行動計画の策定

 上記の「宣言」を具体化するため各組合は行動計画を策定する。その際に、下記の課題についても留意する。

  • 有給休暇の完全取得促進
  • 不払い残業の撲滅と労働時間管理の徹底
  • 働く人のキャリア形成に向けた取り組み
  • 24時間365日サービスを求める消費行動の見直し等

[3]労使協議の推進

 国、産業、企業、地方、地域のそれぞれのレベルでの労使協議の推進

[4]支え合い基盤作りの取り組み

  • 地域における労働組合活動の活性化
  • 支え合い基盤拡充
    ワンストップサービス活動の強化
    さまざまなNPO組織との連携

以上

<参考>

私たちの働き方改革宣言

 私たちは、「だれもがやりがいのある仕事と充実した生活の両立が選択可能となるようなワーク・ライフ・バランス社会、それを支える政策やシステム、慣行が構築されている社会」をめざします。

 私たちがめざすワーク・ライフ・バランス社会は、女性労働者の仕事と育児・介護の両立にとどまりません。男性か女性か、家族的責任を有しているか否か、正規か非正規かを問わず、すべての労働者にとっての仕事と生活のバランスの回復です。
 そのため、まず各企業においては、労働時間短縮を進めるとともに、残業が恒常化し家事・育児・介護・教育や地域活動に携わる機会が極めて少ない働き方モデルを見直し、働く側にとって多様な働き方が可能となるような職場作りをめざします。

 また、政策・制度面では、残業規制等のワークルール確立とともに、労働条件の均等待遇ルールの確立や最低賃金の大幅引き上げを求めていきます。とくに、ワーク・ライフ・バランスの名の下に労働時間管理の適用除外を広げていくことは認められません。
 同時に、男性労働者が家計を支えることを前提としてきたこれまでの税・社会保障を始めとする国・社会の制度や企業の制度についても見直し、仕事面でも生活面でも男女が平等に参加していける環境を整備していきます。
喫緊の課題である子育て・介護支援策はもちろんのこと、仕事と生活の調和を阻害する企業間取引や過当競争を制限する施策の拡充を求めていきます。

 ワーク・ライフ・バランス社会の実現には、上記の企業や国・社会における取り組みと併行して、個人やカップルの意識改革が不可欠です。
 私たちは、これまでの固定的な性別役割分業の見直しや、便利さや効率だけを追求するライフスタイルの見直しを行っていくとともに、一人ひとりが仕事と生活のそれぞれの場面にしっかりと軸足を据えられるよう「働き方改革」にチャレンジしていくことを宣言します。

関連資料


このページの先頭へ