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「協会けんぽ(全国健康保険協会)」の財政問題について(解説)


このコーナーの目次


 全国健康保険協会(以下、「協会けんぽ」という。)の財政悪化に伴い、厚生労働省は大幅な保険料上昇を抑えるため、2010年の通常国会に健康保険法の改正を含む「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」を、2月12日に衆議院に提出しました。

 連合は、協会けんぽ運営委員会(連合から逢見直人副事務局長が参加)、社会保障審議会医療保険部会(同)、政府および与党に対し、協会けんぽへの国庫補助の引き上げ(法定水準への復帰)を強く求めるなど、被用者健保の安定的な運営に向け取り組んできました。

 「皆保険」は世界に誇れるセーフティネットです。各被用者健保の加入者及び保険者の理解と協力の上に「皆保険」は成り立っています。「協会けんぽ」の財政問題を被用者全体の課題として組合員が受け止めることができるよう、本解説を活用してみてください。

1.「協会けんぽ」の財政状況について

 協会けんぽは、勤労者の約5割、約1960万人が加入する国内最大の健康保険の保険者である。旧社会保険庁の政府管掌健康保険の廃止に伴い2008年10月に発足しました。
  協会けんぽの財政は、[1]高齢者医療への支援金等の増大、[2]2009年夏以降の被保険者の総報酬(賃金・一時金等)の急激な低下による保険料収入の大幅減、[3]新型インフルエンザによる保険給付増―など(資料1資料2)により、今年度(2009年度)4,500億円の赤字(単年度収支差6,000億円のマイナス)が生じることが明らかとなりました(資料3)。この赤字を埋めるためには、同額の借入金を立てることが必要となります。また、2010年度以降、[1]国庫補助を引き上げる(現行13%)、[2]保険料を引き上げる、[3]保険者間の財政調整を行う―ことにより、資金調達しなければ「皆保険」に重大な支障を生じかねない事態となっています。


資料1

資料2

資料3

2.2010年度「協会けんぽ」保険料率について

 協会けんぽの保険料率は、政府管掌健康保険時代の2003年に保険料の総報酬制導入に伴い8.5%から8.2%(労使合計)に見直されて以来7年間8.2%が維持されている(資料4)。
  協会けんぽは、健康保険法の規定により単年度財政均衡の原則がとられている。2009年度の赤字4,500億円は借入金で賄わなければならないが、2010年度からは同借入金の返済に加え、保険料収入の減少を踏まえた財源確保が必要となる。協会けんぽが「協会けんぽ運営委員会」に示した試算では、2010年度1年間で借入金を返済すると仮定した場合、2010年度の保険料率は9.9%に引き上げる必要があることが明らかとなった(資料5)。

資料4
資料4
資料5
資料5

  協会けんぽは、保険者機能の強化のため、2009年9月(10月源泉徴収分)より都道府県単位保険料率がとられている。そのため、料率の高い支部では、健康保険法の上限である10%に達するおそれが出てきた。

  社会保障審議会医療保険部会(連合から逢見直人副事務局長が参加)において、健康保険組合連合会(健保連)、協会けんぽ、連合などが議論を重ね、政府の予算編成過程において、政府が協会けんぽ「財政再建のための特例措置」を行う方針を固めた(資料6)。さらに、2月12日に同措置を行うための「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出した(資料7)。これにより、2010年度の協会けんぽの平均保険料率は9.34%に抑えられることになる(資料8)。

資料6
資料6
資料7
資料7
資料8
資料8

3.2010年度の「協会けんぽ」の都道府県保険料率について

 協会けんぽの保険料率は2008年10月の発足時は全国一律8.2%とされたが、2009年9月より都道府県単位保険料率に移行した。都道府県単位料率は、都道府県別医療費を元に算出した調整前の料率と平均料率との差を、年齢構成と所得水準によって調整して決定するが、それによると料率格差が大きくなることが協会の試算で明らかとなった。健康保険法の附則の規定により、5年間に限り激変緩和措置を置くことができることから、厚労省は初年度は本来の料率と平均料率との差(かい離幅)の1/10にとどめることを決定(告示事項)。協会が8.26%(北海道)から8.15%(長野県)の範囲で都道府県単位料率を定款で定めた。

  2010年3月から平均料率を9.34%に改定することに伴い、協会けんぽは都道府県単位料率の改定を検討。5年間の激変緩和措置期間に残る9/10の差を埋める必要がある一方で、平均料率自体が大幅に引き上げられることを勘案し、厚労省がかい離幅を1.5/10に圧縮することを告示(資料8)。

  健康保険法では、「協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、あらかじめ、理事長が当該変更に係る都道府県に所在する支部の支部長の意見を聴いた上で、運営委員会の議を経なければならない。」(第160条第6項)とされている。そのため、協会けんぽは支部長からの意見を踏まえ、9.42%(北海道)から9.26%(長野県)の範囲で都道府県単位料率を引き上げる改定案を、第17回協会けんぽ運営委員会(2010.1.27)に提案。同案は了承された(資料9)。同法では「協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、理事長は、その変更について厚生労働大臣の認可を受けなければならない。」(第160条第8項)ため、現在認可手続きが行われている。

資料9
資料9

4.「協会けんぽ」保険料率の設定に当たってとられた保険料軽減措置

 政府は2月12日、「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、同日に衆議院に提出した。同法案の中には、協会けんぽの保険料軽減措置のための健康保険法等の改正案が含まれている。
  その内容は、2010年7月以降2012年度までの間、以下に掲げる4,500億円解消のための特例措置を実施する(資料7資料10資料11)。

  • 協会けんぽへの国庫補助率を16.4%に引き上げる。(2010.7.1施行)
  • 引き上げ財源所要額(約1800億円)の半額程度(910億円程度)は、後期高齢者支援金に係る国庫補助を1/3削減し、その分を被用者健保(協会けんぽ、健保組合、共済組合)間の負担額の算出方法を加入者割から総報酬割にすることで捻出する。そのため、健保組合と共済組合に対し、年間500億円(初年度330億円)の負担増を求める。なお、健保組合・共済組合への高齢者医療運営円滑化等事業を拡充し、160億円の追加支援を行う(初年度は実質170億円の負担増)。(2010.7.1施行)
  • 協会けんぽは2009年度末の赤字4,500億円を2012年度までの期間内に償還する。(2010.4.1施行)

 なお、国庫補助率16.4%への引き上げ財源の約920億円はいわゆる「真水」として、政府の2010年度一般会計予算政府により手当される。


資料10

資料11

5.「協会けんぽ」保険料軽減措置による被保険者等、健康保険組合、共済組合への影響

 協会けんぽは上記のとおり、[1]協会けんぽの保険料率の引き上げ、[2]健康保険組合と共済組合の協力、[3]国庫補助率の引き上げ―により、2010年度以降も運営が持続可能となる。4.の措置をとることで、[1]協会けんぽの被保険者・事業主の保険料負担、[2]健康保険組合・共済組合の負担する後期高齢者支援金―に影響を与えることとなる。

【協会けんぽ被保険者・事業主への影響】

  2010年度の協会けんぽ保険料率が9.34%(全国平均)に引き上げられることにより、同年4月の源泉徴収分から労使合計で年間42,000円(平均)の負担増となる。同時に介護保険料率が1.50%(現行1.19%)に引き上げられるため、協会けんぽと介護保険の保険料を合わせて年間約5万円(平均)の負担増となる。(被保険者各自の具体的な負担の増加額は、給料の金額、居住する都道府県により異なる。)
なお、保険料軽減措置にとして後期高齢者支援金の一部に総報酬割が導入されることにより、協会けんぽの同支援金の負担は現状より850億円減少する。同減少分は健康保険組合と共済組合の負担増により賄われる(資料11)。

【健康保険組合・共済組合】

  後期高齢者支援金の一部に総報酬割が導入されることにより、健康保険組合と共済組合の後期高齢者支援金の負担総額は、それぞれ500億円(2010年度は330億円)、350億円(同230億円)増加する(資料11)。
総報酬割は、全国1484の健康保険組合および共済組合の被保険者の給料総額(総報酬)に応じて同支援金の負担額を決めるものである。これに対し、現行の加入者割は、同支援金を家族を含めた加入者の人数で按分するものである。総報酬割の導入により、給料水準の低い従業員が多く加入する保険者ほど負担が軽減されることになる。
厚生労働省の試算によれば、同支援金の総報酬割の導入により、健康保険組合の約4割にあたる、約550の健康保険組合の負担が軽減される(資料10)。
さらに、健康保険組合等の負担増に対応し、健康保険組合の前期高齢者納付金の負担を軽減するため、健康保険組合等に対する国の支援を、現行の約160億円から約320億円に倍増することが2010年度一般会計予算政府案に盛り込まれた。

6.3年間の保険料軽減措置の終了後について

 今般の協会けんぽの保険料軽減措置は、2010年度から2012年度までの3カ年の時限措置とされている。政府提出法案には3年後については特に規定はない。協会けんぽは勤労者の健康に関わる重要なセーフティネットであることから、被保険者等の保険料負担が急増することがないよう、国庫補助の確保・充実が不可欠である。
  政府は2009年12月、高齢者医療制度改革会議を設置(連合から小島茂・総合政策局長が参加)。後期高齢者医療制度の廃止後の高齢者医療制度の在り方について議論が行われており、2010年夏に中間とりまとめ、同年末に最終とりまとめを行い、2011年の通常国会に法案を提出。2013年4月の施行の方針を掲げている(資料12)。
  2013年度以降の各保険者の高齢者医療に関する負担については、新たな高齢者医療制度の姿によって大きく変わってくる。連合は、被用者保険と地域保険の2本立てによる医療保険の再構築を目指し対応していく(資料13)。


資料12

資料13

7.「協会けんぽ」財政問題への連合の対応

【審議会等への対応、共同要請の実施】
  連合はこの間、協会けんぽ保険料の引き上げ幅と、健康保険組合・共済組合の負担増を抑えるために、「国庫負担の本則復帰」を医療保険部会等で意見反映を行うとともに、「政府・連合トップ会談」、厚生労働省との協議、財務省との協議、民主党(企業団体委員会、副幹事長)への要請を繰り返し行った。
  また、連合は健保連、日本経団連と「協会けんぽの国庫補助拡充を求める」3団体共同要請(12月15日)を行った(資料14)。しかし、協会けんぽ財政への支援は民主党のマニフェスト外の課題であったため、財務当局は当初厳しい対応を見せた。


資料14

【厚生労働副大臣―事務局長間で協議】

  こうした取組みを続けた結果、2009年12月17日、長浜副大臣から、南雲事務局長に「総報酬割1/2、加入者割1/2」(国庫負担増460億円)の案が示されたが、翌18日に「受け入れ難い」旨の連合、健保連の意向を伝え、以下の「連合の4条件」を提示して、さらに国庫負担増の努力を厚労省に求めた。
これを踏まえて同20日、長浜副大臣から、「総報酬割1/3、加入者割2/3」とし、国庫負担増を920億円(本則復帰1,800億円の半額)とし、「国庫負担率16.4%への復帰を法律に明記する」案が示された。

参考

「協会けんぽ」財政問題(国庫補助拡充)への対応

2009.12.18

(原則)

◆国庫補助率の本則復帰(13%→「16.4%〜20%」、要財源:1,800〜3,700億円
◆過去の減額分(16.4%−13%)の返却(協会けんぽ財政が厳しい時こそ戻すべき)

(今回の財政調整問題への4条件)

[1]「協会けんぽ」の国庫補助率の本則復帰の明示が前提。
[2]今回は、最低でも16.4%への復帰(1,800億円)が必要であり、まずは、この国庫負担増を1,800億円に如何に近づけるかが、前提である
[3]暫定措置(3年間)として、「後期支援金」に「総報酬割」を入れるのであれば、関係者の「理解と納得」が不可欠。特に健保組合(健保連)の「理解と納得」が不可欠である。
[4]高齢者医療制度の早期見直しと、前期高齢者医療(65歳〜74歳)への公費負担増の前倒し実施。

【常任役員会で対応を協議】

  連合は第11回常任役員会(12月21日)、前日に長浜副大臣から示された再回答に対する対応を協議し、下記の対応を行っていくこととした。

  • 「満足できる内容ではない」が、厳しい国の財政状況を踏まえ、政府・厚労省・財務省の「努力と誠意」を受け止める。
  • 最終案を含めた政府予算案の閣議決定に対する談話でこの主旨を表明する。
  • 「法案化」に向け、「本則復帰の時期の法律への明記」を求めていく。
  • 年明けの三役会、中央執行委員会で報告し、対応について確認する。

【2010年度予算案談話等で対応を報告】

  政府からの提案を受け入れた結果、政府は12月23日に「財政再建のための特例措置」をとることを表明(資料6)。2010年度一般会計予算政府案に同措置に係る予算が盛りこまれたことから、「十分ではないが一定の前進が図られた」とする、「2010年度政府予算案に対する談話」を発出(資料15)。


資料15

 さらに、この間の連合の対応についてアットマークれんごう第11-00213号(2009年12月28日)で「『協会けんぽ』の財政問題に対する経過報告」を発出。第2回地方連合会事務局長会議(2010年1月14日)及び第4回中央執行委員会(1月21日)において、この間の取組みについて事務局から報告し、全組織に対し今回の措置及び連合の対応について理解を求めた。

【法案閣議決定の事務局長談話を発出】

  連合は、「医療保険制度の安定的運営を図るための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」の閣議決定に関し、2010年2月15日に事務局長談話を発出(資料13)。厳しい財政状況の中で、ぎりぎりの国費負担増がはかられたことについて一定の評価をするとともに、「皆保険」を守るため、各被用者健保の加入者及び保険者の理解と協力を求めていくとともに、2013年度以降の健康保険財政等への国の財政支援の強化、高齢者医療制度および国民健康保険制度の再構築に向け、引き続き取り組んでいくことを表明した。

(おわりに)

  日本の医療保険制度は、明治時代に近代産業が勃興する影で、多くの労働者が劣悪な労働条件のなかで傷病を負ってきた歴史の中で、互助組織として民間、官営企業等で発足した共済組合が起源である。そして、労使のたゆみない努力の賜である健康保険組合を礎に、今日の「皆保険」がつくり上げられてきた。「皆保険」は世界に誇れるセーフティネットである。各被用者健保の加入者及び保険者の理解と協力により、社会連帯を再認識し、皆の努力の下に「皆保険」を守っていくことが求められている。

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