福島県飯舘村は東日本大震災の原発事故による全村民の避難から約9年半、避難指示解除から3年半となり、ハードの復旧はほぼ出来上がり帰村者も増えつつあるが、生活の利便性、コミュニティ、伝統文化の復興など、心の復興はまだ途上にある。BHNはコミュニティ、健康維持、子ども達の励ましおよび帰村支援に焦点を当てて各種の支援活動を行なってきたが、今年の花桃植樹会を最後に、足掛け10年にわたる支援活動を終了した。
●避難直後から6年間の活動
①仮設住宅やみなし仮設の自治会事務所(29ヶ所)にパソコン、プリンタ、光回線を設置し、
100回以上のパソコン研修会と自治会ホームページの作成協力を通じて、円滑なコミュニ
ティ活動を支援した。
②医師、看護師の協力を得ての健康相談会(106日/967人)をはじめ、歩数計を配布した歩
け歩け運動(歩数計622人)、マッサージ会(173日/1,426人)を通じて、避難生活中の健康維
持・向上、心のケアを支援した。
③子ども達の激励・教育支援のため、高校へのパソコン寄贈(30台)、小学生には昭和基地と
衛星テレビ回線で結んだ南極教室、幼稚園園児への体操着ザック(47個)、マスク(約200
個)等のプレゼントを行った。
●7年目から現在までの活動
避難指示が解除された2017年4月から村民の帰村が始まり、この時から村の復興への営みが本格化した。BHNは活動の軸足を、帰村の促進と新しい生活の構築に移して支援活動を継続した。
①高齢者は突然のケガや健康急変の不安がつきまとっており、帰村後の高齢世帯や一人世
帯の場合、緊急の連絡ができるか否かが課題となっている。BHNはボタンプッシュ一つで
家族に緊急通報できる装置を希望世帯(24世帯)に設置してきた。また首にかけるペンダン
ト端末にもボタンがついており、畑仕事や入浴中でも何かあれば直ちに緊急通報が可能で
あり、村民の生活の安全・安心につながっている。
②村を離れていた6年の間に村の住宅周辺は雑草が繁茂し、都会と異なり敷地は広いうえ、
腰丈、肩丈まで伸びた家も多く、高齢世帯では帰村の大きな妨げにもなっていた。BHNは村民の希望を受けて、2017年春に7週間にわたり週2日の「草刈り大作戦」を実施し、34軒の家周辺の草刈りを実施した。
③飯舘村は「日本で最も美しい村連合」に加盟を許されるほど美しい村であったが、全村避
難で人の手がかけられなくなり、さらに放射線除染に伴う廃棄物が田畑を覆い、美しい景
観は失われてしまった。帰村が始まってから村民は昔の美しい村を取り戻すための努力を
続けており、当会は村民の熱い思いを受けて、2017年から「花桃」の植樹を続けてきた。植
樹当日には、家族連れを含む多くの村民が集まり和気あいあいと植樹を楽しむ会にもなっ
ていた。これまでに村立の公園、スポーツセンターに植樹を行ってきたが、2020年7月に
新設の村営パークゴルフ場で植樹会を実施し、これをもってBHNの足掛け10年の支援活
動を終了した。これまでに植えた合計600本の花桃が春に紅白の花を咲かせ、今後長きに
わたって村民の心を和ませてくれるものと期待している。
●愛のカンパ助成
本活動においては2015年度から2019年度の5年間にわたって連合・愛のカンパの助成をいただいた。安定的な資金のおかげで長期の支援活動を成し遂げることができたことに、深く感謝を申し上げたい。
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