今どきネタ、時々昔話
第38回 クミジョの休日

今は昔とは違う

連載を1ヵ月スキップさせていただいた間にいろんなことがあった。
7月28日の夕刻、「熊本地方で震度7」というテロップが流れた。何かの間違いでは?と思ったが、2016年4月の熊本地震から10年を経て、再びのマグニチュード7.1の大地震。今年1月下旬、私は「季刊RENGO」2026春号の取材で熊本を訪れたばかりだった。2016年の熊本地震については、「月刊連合」で被災状況や労働組合の支援の取り組みを伝えたが、それから10年の節目に改めてその経験と教訓を共有しようという特集企画。連合熊本・地協の全面的な協力を得て、当時を知る役員やOBから話を聞き、復興が進む街並みや記念碑、連合救援ボランティアのベースキャンプとなった施設などを案内してもらった。その記事は、RENGO ONLINEにも転載されているが、再びの大地震の報を聞いて、取材にご協力いただいた方々はご無事だろうかと居ても立ってもいられない思いだった。8月上旬には連合熊本の事務所は無事で、迅速に対応に当たられていると伝え聞くことができたが、被災地の皆さまに心からお見舞い申し上げたい。

8月中旬から9月にかけては、全国各地で豪雨災害が頻発中。東京東部に住む私にとって千葉豪雨は他人事ではなく、眠れない一夜を過ごした。9月8日には、愛知県・岐阜県に線状降水帯が発生し、名古屋市の中心部も冠水。同市に住む友人に「大丈夫?」とラインしたら、「自宅は高台にあるから無事だけど、地下鉄が止まって家族が帰宅困難者になっている」とのこと。彼女と私は三重県尾鷲(おわせ)市の出身である。尾鷲市と言えば、かつて降水量日本一と教科書に記載されたこともある多雨のまち。三方を山に囲まれた地形で、あっというまに雨雲が発生し、滝のような雨が降り注ぐ。東京に出てきたばかりの頃は、都市の雨ってなんて優しいんだろうと驚いたものだ。「でも」と友人は言う。「尾鷲人は都市部の雨を甘く見がちだけど、今は昔とは違う。どこにいても信じられないような大雨が降る時代。おごりは捨てて正しく恐れないといけないと思ったよ」。まったく同感である。

湿度80%超えで悪化する「顔汗」

気候変動が新たなフェーズに入ったことを実感させられるが、東京はこのところ、秋雨前線が停滞して雨や曇りの日が続き、残暑は厳しくないものの、湿度は80%超。9月の日照時間は統計開始以来最低レベルになりそうだという。洗濯物が乾かなくて困るが、もっと困るのは、「顔汗」が悪化することだ。
首から上だけ汗が噴き出す症状を自覚したのは、40代の終わり頃だったと思う。ある蒸し暑い日、取材のために連合会館に到着し1階の洗面室に入ったのだが、鏡を見て驚愕した。ファンデーションがグダグダに崩れ落ち、アイシャドウはパンダ状態、前髪は額にペタリと貼り付いていた。自宅から連合会館までは約30分。炎天下を長時間歩いたわけでもないのに、この惨状はどういうことか。慌ててメイク直しを試みたが、ファンデがよれてますます酷い状態になる。ハンカチで顔を隠しながら会議室に入ると、編集長(当時)から「どうしたの? 顔、真っ赤だよ」と言われ、さらに顔から汗が噴き出したのだった。

原因は更年期の症状だと思われた。そこから、「メイク崩れしない化粧品」探しの旅が始まった。「崩れない」をキーワードに検索していくつものファンデや下地を試した。高価な外国製品にも手を出したが、日本の多湿には力及ばず…。でも、救世主は存在した。顔汗が噴き出しても、大きく崩れることなく、重ね塗りしてもよれない、奇跡のようなブランドに出会うことができた。難点はお値段がそれなりすることだが、こんなにもジメジメとした多湿の日が続くと、絶対に手放せないのである。

労働組合がなければできないこと

同年代の美容友だちは、もっと研究熱心だ。加齢によるいろんな悩みを解消してくれる化粧品やグッズを探し出しては情報を送ってくれる。時々、一緒にデパコス売場に出かけたりもする。
先日、久しぶりに銀座で待ち合わせて近況報告。「最近、首回りが気になるんだよね」と言うので、絶対に効くネック&デコルテ用クリームをすすめたのだが、「もういいの。高いし…」とうつむくのでびっくりした。均等法第一世代として、仕事と育児の両立の時期を乗り越え、50代に入ってからは順調に昇進。必要経費&自分へのご褒美だからと、化粧品も洋服もアクセサリーもいつも大人買いしていたのに…。
「どうしたの?」と聞くと、7月に定年になったのだと言う。役職はそのままで仕事も責任も変わらないけど、ボーナスや諸手当がなくなって年収は激減。モチベーションもダダ下がり状態なのだそうだ。均等法第一世代が定年を迎える時期になったのかと思うと感慨深いが、同じ仕事をしているのに処遇が大きく切り下げられるのは、納得しがたいことだろう。

高年齢者雇用安定法では、希望者全員の65歳までの雇用確保が義務づけられているが、継続雇用後の賃金水準などについての定めはない。この法改正が行われた時、「月刊連合」で特集を組んだ記憶がある。取材させてもらった労働組合は、定年前と同じ仕事をしているのに処遇が大幅に下がるような制度は問題があると考え、仕事の内容や責任に見合った処遇制度を労使で制度設計していた。残念ながら美容友だちの会社に労働組合はない。定年後の納得できる処遇制度づくりは、労働組合がなければできないことの1つなのかもしれないと思ったりした。

クミジョの大先輩の姿に重ねて

さて、この夏、胸が熱くなる時間をくれたのが、ドキュメンタリー映画『女性の休日』(パメラ・ホーガン監督、2024年製作)だ。国際婦人年の1975年、北欧アイスランドの女性たちが、職場でも家庭でも女性の働きが公正に評価されていないことに疑問を持ち、「女性の労働がなければ、社会は1日だってまわらないことを示そう」と、「ストライキ」を計画。これを「休日」と言い換えて、すべての女性に参加を呼びかけた。そして、10月24日には、本当に全女性の90%が仕事も家事も一斉に休んで、全国各地の決起集会へ。歴史的な「女性の休日」を1つの契機としてアイスランドはジェンダー平等への社会変革を進め、ジェンダーギャップ指数16年連続世界1位のジェンダー平等先進国になったのだという。
映画は「連合2026年度男女平等講座」のプログラムの1つとして上映された。その報告は、9月20日発行の季刊RENGO2026秋号に掲載しているので、ぜひお読みいただきたいが、ここでは私自身の個人的な感想を。映画では、半世紀前に「女性の休日」を企画・決行した女性たちが、楽しげに当時の運動を証言しているのだが、私にはその姿がクミジョの大先輩の方々と重なりあって見えてきた。2万5000人が詰めかけた首都レイキャビクの大集会で最後に演説したのは、労働組合の女性リーダー、アザルヘイズル・ビャルンフレズドッティルさん。その力強いスピーチが女性たちに勇気と感動を与えたというシーンでは涙がこぼれた。

これはアイスランドだけの話ではない。日本でも、同時代、女性たちのムーブメントがあり、クミジョの大先輩たちはその運動の一翼を担っていたのだ。「女性の休日プロジェクト実行委員会」を立ち上げた小安美和さん(株式会社Will Lab代表取締役)によれば、今春に全国各地で開催された上映会の主催者の7~8割は70・80代だったとのこと。同時代を生きた女性たちは健在なのだと少しうれしくなった。

私はグループディスカッションにもちゃっかり参加し、若手の女性役員に「国際婦人年の頃、日本にも雇用平等を求める大きな運動があって、だから今、均等法や両立支援制度があるんだよ」なんて言ってしまったのだが、日本のジェンダーギャップ指数は低位をさまよい、「選択的夫婦別氏」すら、いまだ実現できていない。昔語りをしている場合ではない。今、改めて社会を変えるムーブメントが必要なんだと反省した。

そんなもやっとした気持ちでいたら、RENGO ONLINEの連載『クミジョ・ファイル』でおなじみの本田一成先生(武庫川女子大学教授)からうれしいメールをいただいた。
「男女平等月間にあわせて、クミジョ応援ソング『クミジョの休日』をつくりましたので聴いてください。作曲・歌は柊ルイスさん、作詞本田一成です。けっこうハイになります」。
「クミジョのバトンが はっきり見える」というフレーズが心に沁みる。使用許可は不要、拡散希望とのこと。前向きになりたい夜にぜひ聴いてみて!

映画『女性の休日』公式サイト:https://kinologue.com/wdayoff/


★落合けい(おちあい けい)
元「月刊連合」編集者、現「季刊RENGO」編集者
大学卒業後、会社勤めを経て地域ユニオンの相談員に。担当した倒産争議を支援してくれたベテランオルガナイザーと、当時の月刊連合編集長が知り合いだったというご縁で編集スタッフとなる。

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