7.公正なグローバル化を通じた持続可能な社会の実現|国際政策

2-26-4.多国籍企業が社会的責任を果たしていくよう、日系および外資系の多国籍企業に関する取り組みをより一層強化する。

  1. (1)多国籍企業における建設的な労使関係の構築と労使の対話による紛争回避のため、在外公館や関係省庁が連携し、各日系企業がILO「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言」(注4)や「OECD多国籍企業行動指針」を遵守するよう、周知徹底をはかる。また、「行動指針」加盟国の在日商工会議所などに対しても周知をはかる。
  2. (2)政府は、企業の社会的責任(CSR)履行の観点から、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」(注5)に基づき日本政府が策定した「ビジネスと人権に関する国別行動計画」に沿って、サプライチェーンを含め責任ある企業行動を支援する。策定から5年後の計画に見直しに向け、政府とステークホルダーの対話を充実させる。また、労使による国際枠組み協定(グローバル枠組み協定)締結、国連グローバル・コンパクト登録、児童労働撲滅、フェアトレード実施などに積極的に取り組む企業への優遇策について検討する。
  3. (3)政府は、策定した「ビジネスと人権に関する国別行動計画」に沿って、日本NCP(注6)の運用改善のため人的・財政的な拡充をはかる。また、日本NCP委員会(注7)がOECD多国籍企業行動指針の普及に加え、労使紛争の早期解決に関して実質的な議論を行う場となるよう努め、必要に応じて、在外企業の労務管理に精通した専門家を加える。
  4. (4)政府は、開発途上国、新興国におけるソフト面のインフラ整備支援に、「労使関係についての人材育成」を組み込むことにより、多国籍企業における建設的労使関係の構築や、生産性の向上、労働安全衛生の確保などの取り組みを促進し、当該国の発展に寄与する。その実施に当たっては、(公財)国際労働財団(JILAF)などを活用する。
  5. (5)政府は、租税回避防止のための国際的連携の動きが強まる中、租税回避地対策の強化や租税条約の締結などに取り組む。(「税制改革」より再掲
  6. (6)政府は、グローバル企業の低税率国への利益移転等に伴う国際的な課税ベースの浸食を食い止めるため、「BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクト」の勧告を踏まえ、中小企業の負担増に配慮しつつ国内法を整備する。また、国境を越える資金の流れの透明化に向けたルールを策定する。(「税制改革」より再掲
  7. (7)CSR調達の取り組み促進に向けて、2025年日本国際博覧会協会は、「持続可能性に配慮した調達コード」に則り、全ての物品・サービスの受注者(サプライヤーおよびライセンシー)がILO中核的労働基準をはじめとする労働に関する国際的な基準を遵守するよう周知徹底をはかる。調達コードの不遵守またはその疑いが生じた場合の通報受付窓口については、効果的なものとなるよう整備する。国・地方自治体は同コードを採用する。(「産業政策」より再掲
  1. (注4)ILO「多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(2017年改訂版)」~2017年3月のILO理事会にて改定。サプライチェーンやデューデリジェンスについての言及があり、また、同宣言の実施メカニズムについて規定されている。
  2. (注5)国連「ビジネスと人権に関する指導原則」~2011年に国連人権理事会で承認された、全ての国と企業が尊重すべきグローバル基準。人権を保護する国家の義務、人権を尊重する企業の責任、救済へのアクセスの3つの柱で構成されている。2020年10月、政府は同「国別行動計画」を発表した。
  3. (注6)NCP(ナショナル・コンタクト・ポイント)~『OECD多国籍企業行動指針』の普及・実施、問題解決の支援のために、各国政府等に置かれている連絡窓口のこと。日本NCPは、外務省、厚生労働省、経済産業省により構成されている。
  4. (注7)日本NCP委員会~『OECD多国籍企業行動指針』の普及・実施のため、日本NCP、連合、経団連で構成される委員会。

 

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