5.くらしの安心・安全の構築|東日本大震災からの復興・再生および防災・減災に関する政策

2-20-1.東日本大震災からの復興・再生を着実に推進する

  1. (1)復興財源の確保および被災自治体への継続的支援を行う。

    ①とぎれのない震災復興をはかるべく、第2期復興・創生期間(2021年度~2025年度)における復興財源を確実に確保するとともに、被災自治体の復興事業の進捗や財政状況にきめ細かく配慮した支援を行う。また、復興の進捗等のチェックを通じて、予算が適正に執行されていることを確認する。

    ②地域の特性を活かし、農林漁業の6次産業化の推進や、医療・介護分野、再生可能エネルギー分野などの成長産業の育成、観光産業における需要喚起施策など、複合政策を推進するとともに、それらの産業に従事する労働者の人材育成を支援する。

    ③中小企業等のグループで融資を受ける補助金制度(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)を継続するとともに、より利用しやすい制度とすべく、手続きを簡素化・効率化する。

    ④被災地における人口減少対策として、UJIターンを促進するとともに、起業や企業誘致などに対する必要な支援を行う。あわせて、地域交流や高齢者の見守りなどのボランティアに対する財政的支援を検討する。

    ⑤国内外の風評払拭に向け、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」にもとづき、政府が主体となった広報活動による正確で分かりやすい情報発信、アジア各国を中心とした諸外国への働きかけによる輸入規制の緩和・撤廃の実現など、風評対策を強力に進める。

    ⑥震災の記憶を風化させないために、 被災地の現状や復興に向けた活動等を内外に発信するとともに、震災語り部の育成や震災遺構の保存などに対する支援を行う。

    ⑦復興・再生に必要な地域の行政機能を回復し、住民のニーズに対応するため、被災自治体における専門的分野に対応できる職員の配置や、適切な要員の確保など必要な措置を講じる。また、被災自治体の人材確保を支えるため、震災復興特別交付税措置を継続・強化する。

    ⑧防災集団移転元地について、土地利用計画策定に必要な土地に関する取得要件を緩和するなど、市町村による利活用の取り組みを支援する。また、復興に必要な区画整理における土地所有者不明時の手続き簡素化など特例措置の法整備を求める。

    ⑨生活支援相談員等による被災地における生活支援・相談活動を行う社会福祉協議会や、NPOなど中間支援組織の体制強化に向け、補助金など各種支援のさらなる充実を求める。

    ⑩福島第一原子力発電所事故からの復興・再生に向けて、国内外の原子力研究機関と連携した事故の収束および放射性物質の除染を早期かつ着実に進めるとともに、モニタリングポスト周辺や生活する家屋周辺での放射線線量に関する情報提供や定期的な健康診断などを継続・徹底する。

  2. (2)被災地域の雇用のミスマッチ解消につながる職業訓練の充実と雇用の確保、復興事業における労働安全衛生対策の強化をはかる。

    ①被災地経済の早期復興、地域の雇用創出の核となる事業への雇用支援措置の継続などを通じ、質・量ともに十分な雇用を確保する。
    a)特定求職者雇用開発助成金(被災者雇用開発コース)の継続などにより、被災した離職者や被災地域に居住する求職者の就職を支援する。
    b)事業復興型雇用確保事業については、被災地における雇用創出の状況などを踏まえ、必要に応じて事業期間を延長する。
    c)被災者の自立支援に向け、住宅補助制度(住宅の現物給付または家賃補助)、就労支援のための融資制度などの拡充をはかる。

    ②雇用のミスマッチ解消に向けて職業訓練メニューや公共職業安定所(ハローワーク)の人材確保対策コーナーの拡充をはかるとともに、労働局や公共職業安定所(ハローワーク)が地方自治体と連携して就職支援体制を強化する。

    ③復興計画を着実に推進し、地元雇用を創出する。
    a)復興計画の担い手となる労働者に対して職業訓練の必要がある場合は、国がその職業訓練を支援する。職業訓練の実施にあたっては、地域の実情やニーズに即した職業訓練となるよう、地域職業能力開発促進協議会を活用する。
    b)公共事業を発注する際は、被災地域の労働者の雇用に配慮するとともに、公契約条例制定の考え方をふまえ、労働基準や労働安全衛生基準の遵守などを要件化する。
    c)復旧・復興事業において必要とされる資格・技術(建設機械・大型自動車運転免許など)を習得するための公共職業訓練・求職者支援訓練の周知を徹底する。
    d)労働者の安定的な就労への移行が円滑に進むよう、医療や介護など、地域の雇用創出の核となる事業に関連した訓練メニューを強化する。
    e)復旧・復興事業に従事する要員が不足している地方自治体への人的支援を強化する。
    f)低賃金による人手不足等を理由とする安易な外国人労働者の受入れは行わない。

    ④復旧・復興事業に際してのアスベスト・危険有害物質のばく露、過重労働などを防止するための、労働安全衛生教育および労働災害防止対策を徹底する。
    a)労働基準、労働安全衛生基準が遵守されるよう、指導・監督を強化する。また、現行基準の緩和は行わない。
    b)復旧・復興事業に従事する労働者の過重労働を防止するため、労働安全衛生法に定める産業医との面接指導の実施、労働時間の管理を徹底するなど、企業への指導・監督を強化する。
    c)復旧・復興事業における高所からの墜落防止、重機災害の防止などの労働安全衛生管理や、未熟練労働者に対する労働安全衛生教育を徹底する。

    ⑤福島第一原子力発電所の廃炉作業に従事するすべての労働者について、離職後も含めた被ばく線量の管理徹底、過重労働防止のための十分な交替要員の確保、熱中症対策や墜落制止用器具の適切な使用による転落防止など、労働安全衛生・健康管理対策を強化する。
    a)作業に従事する労働者の被ばく線量については、電離放射線障害防止規則(電離則)に則って管理を徹底するよう指導を強化する。特に、内部被ばく防止策を徹底するよう指導・監督する。
    b)電離則に規定された特別教育を、作業に従事するすべての労働者に実施するよう指導・監督する。
    c)放射線被ばくについては、離職後を含めた長期的な被ばく線量管理にもとづく長期的な健康管理が重要であるため、緊急作業従事者の被ばく線量、健康診断結果などの情報のデータベース化による健康管理に加え、緊急作業に従事しなかった労働者についても、一定量以上の放射線を被ばくした場合には長期的な健康管理の対象とする。
    d)作業に従事するすべての労働者に対する、保護具の適切な装着、健康診断の受診を徹底するとともに、熱中症対策や作業環境の改善、メンタルヘルス対策にも万全を期すよう指導・監督する。また、国としても必要な援助を行う。
    e)電離則に規定された被ばく線量の限度超過により、一定期間原発業務に従事できなくなる労働者に対する、解雇などの不利益な取り扱いがないよう、企業への指導を徹底し、当該企業による配置転換や職業訓練、転職支援などに対して、必要に応じて国としての助成を行う。

    ⑥18歳未満の者や外国人技能実習生の除染業務就労や、偽装請負や違法派遣などの労働法令違反がないよう、指導・監督を強化する。国が発注する除染などの業務において、下請を含めたすべての労働者に特殊勤務手当(除染手当)が確実に支払われる仕組みを早急に構築する。また、除染手当の中間搾取を行っている業者などに対する指導・監督を強化する。

    ⑦除染特別地域等およびその周辺で働く労働者に対する安全衛生対策を強化する。
    a)一定の放射線量を超える環境下で働く労働者に対し、特別教育、保護具の適切な装着、被ばく線量の適切な管理、健康診断の受診など、除染電離則の遵守を徹底する。
    b)上記以外の場合であっても、労働者の安全確保のため関連3ガイドライン(除染等業務ガイドライン、特定線量下業務ガイドライン、事故由来廃棄物等処分業務ガイドライン)の遵守を徹底する。

    ⑧原発事故収束および廃炉作業完了までには長期間を要し、多数の労働者が従事することから、放射線量の状況や健康への影響などに関する正確な情報を、政府として一元的に収集・把握し、速やかに開示する。

    ⑨原子力規制委員会「放射線審議会」に委員として労働災害の専門家を加えるとともに、その審議状況を定期的に労働政策審議会安全衛生分科会に報告する。

  3. (3)防災性・環境性能が高く、社会保障サービスの提供体制が確保された「ひとが中心のまちづくり」の実現をはかる。

    ①電気・ガス・上下水道・情報通信などのライフラインなどの基幹設備や管路の耐震化を進め、災害時におけるバックアップ機能を充実させる。

    ②ハザードマップや集団移転・高台居住などのまちづくり計画を踏まえ、医療・介護・教育・交通などの機能を集約した、防災性が高くひとに優しいまちづくりを推進する。

    ③仮設住宅から災害公営住宅への移転を進めるため、災害公営住宅の管理6年目から段階的に縮小され11年目で通常家賃となる家賃低減措置を拡充し、家賃負担の軽減をはかる。災害公営住宅への移転を進めるにあたっては、グループでの入居を促したり、集会施設を併設したりするなど、新たなコミュニティを構築しやすい対策を行う。

    ④地域コミュニティの希薄化や被災者が抱える問題の複雑・多様化を踏まえ、被災者の心身のケア、孤独・孤立、生活困窮などに対応し、安全・安心な生活を再建することができるよう、アウトリーチ型の見守り機能や相談体制を含む重層的な支援を強化する。また、被災者が差別を受けずに地域でくらせるよう地域住民への意識啓発を行う。

    ⑤「福島再生加速化交付金」を継続し、避難指示解除が見込まれている地域の避難住民が早期帰還・定住を実現できるよう、安心・安全な生活拠点形成のための対応を着実に進める。

    ⑥被災地で安心して医療・福祉・介護を受けられるようにするため、サービスを担う人材の養成・定着に資するよう、地域枠を活用した養成の促進や、住宅の確保など生活基盤への支援策を継続する。特に福島第一原発事故の影響で人材確保が困難な地域においては、地域包括ケアシステムのモデル事業を積極的に実施するなど、安心してくらし続けられるまちづくりに向けた支援策を強化する。

  4. (4)放射性物質により汚染された廃棄物・表土の迅速な処理と除染実施後のフォローアップを徹底する。

    ①放射性物質により汚染された廃棄物や除染後の表土などの処理について、地元・近隣住民・地方自治体の合意を得つつ、中間貯蔵施設など処理に必要な施設の整備を進め、仮置き場・仮々置き場に山積している残土を含め迅速に対応する。また、大量の残土などを処理施設に輸送する際には、通学時間や渋滞時間帯を避けるなど、地域住民や一般の道路利用者への影響を抑えつつ、安全を確保する。

    ②現地の復興作業に従事した車両や機械設備類の除染と、当該機材の除染完了後の線量検査などに対し必要な支援を行う。

    ③帰還困難区域を除く面的除染が完了した区域については、住民の安心・安全の確保に向け、継続的に線量の測定を行うなど、除染実施後のフォローアップを行う。

  5. (5)放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物・加工食品に関する安心・安全を確保する。

    ①放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物や食品に対し、法定による生産・出荷時の検査体制を維持するための地方自治体等への公的補助を継続し、検査結果にもとづく適切な流通管理を通じて食の安心・安全を確保する。

    ②放射性物質の影響が懸念される地域・産地で生産された農水産物や食品を取り扱う流通・販売事業者において、事業規模にかかわらず広く放射性物質の検査体制整備・強化がはかられるよう公的補助を行い、風評被害の回避を進める。

  6. (6)安心して学び遊べる教育環境を整備する。

    ①被災による心的ストレスを抱える子どもや、特別な配慮を必要とする子どもにきめ細かな支援を行うため、養護教諭の未配置校への配置および配置校への複数配置を行う。また、スクールカウンセラーおよびスクールソーシャルワーカーを常勤配置する。

    ②福島県において、運動不足に伴う子どもの肥満傾向や体力低下が続いていることから、「福島再生加速化交付金」を継続し、子どもたちの運動機会を確保するため、運動施設の整備を進める。

    ③子どもたちが安心して学べるよう、保育料や入園料、小中学生に対する学用品費や給食費の援助など、「被災児童生徒就学支援等事業交付金」による教育費に関する公的支援を継続する。

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