4.社会インフラの整備促進|交通・運輸政策

2-15-3. 災害に強い交通・運輸体系を構築し、交通・運輸全般の安全強化と輸送の安定確保を両立する。

  1. (1)国・地方自治体は、東日本大震災をはじめ想定外の自然災害が多発する現状をふまえ、災害に強い交通・運輸体系を構築する。(「東日本大震災からの復興・再生および防災・減災政策」参照

    ①地方自治体は、災害に強い物流システムの構築に向けて、物流総合効率化法にもとづき広域物資拠点として機能すべき特定流通業務施設(民間物流施設)の選定を進め、非常用電源を完備する。また、自治体等の関係者などから構成される協議会を活性化し、地域事情に応じた支援物資輸送を実現するための広域連携体制を構築する。

    ②国は、港湾の事業継続計画(港湾BCP)の策定を支援するとともに、民間事業者との連携を進め、「災害救援フェリー」による救急輸送ネットワークを整備する。また、海上輸送については、レーダー等の施設整備、航路標識の耐震・耐波浪補強、航路用電源の自立型電源化(太陽電池化)を支援する。

    ③国・地方自治体は、発災時に被災地の支援を可及的速やかに実施するため、燃料備蓄を進めるとともに、代替輸送手段を迅速に確保できるよう、平時から輸送モード間の連携を促進する。

    ④国・地方自治体は、交通運輸インフラの耐震・津波・浸水・土砂災害対策や老朽化対策に対する支援を拡大し公共輸送機関の安全を確保するとともに、ICTを活用した渋滞情報・規制情報の提供などによる道路交通対策を行う。

  2. (2)国は、自動車運転者の労働時間の短縮など労働環境の改善をはかり、ワーク・ライフ・バランスおよび安全輸送の観点から、自動車運転者の長時間労働の改善および公正競争の確保のために、労働環境や賃金体系が適正なものとなるよう関連法規を厳格に運用する。

    ①国は、自動車運送事業における監査体制の強化、自動車運転者の過労運転防止のための運行管理の高度化などを通じて、安全対策を強化する。

    ②国は、自動車運転者の長時間労働による過労死および事故を防止するため、労働時間の正確な把握のもと、改正労働基準法の時間外労働の上限、60時間超の時間外割増50%の中小企業への適用、限度時間超過にかかわる手続き、改正「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(告示)の周知、および施行後の違反に対する監督指導および運輸支局との相互通報を徹底する。あわせて、告示の運用状況を検証し、最大拘束時間の見直しをはかるとともに、事業者に連続休息期間の確保を義務づける。また、自動車運転業務に対する労基法一般則の適用に向けた検討を速やかに開始する。

    ③国は、改善基準告示の連続運転時間違反の解消に向けて、絶対数が不足している高速道路のSA・PA、道の駅における大型車やトレーラーの駐車マスを拡充する。また、まちづくりの観点から、大規模な工業団地や物流団地、荷主の庭先等における大型トラック等の駐車場設置を推進する。あわせて、ETCの深夜割引適用方法の見直しにより午前0時直前の滞留問題を解消する。

    ④国は、すべての事業用自動車へのデジタルタコグラフおよびドライブレコーダーの搭載や、衝突被害軽減ブレーキシステムの義務化の対象外となる使用過程車への衝突警報装置の導入を推進する。また、すべての事業者に定期的な電子監査を義務づける。

    ⑤国は、規制緩和による過当競争や賃金体系における過度な歩合制が低賃金・長時間労働の原因であるため、安全輸送の観点から累進歩合制度の禁止を法律に明記する。また、需給調整規制や運賃規制などにより、不適切な事業者を排除する制度を構築する。

    ⑥国は、「適切な賃金(報酬)・労働時間を無視した」発注(発注業者・荷主・顧客)を規制するため、トラック輸送の「標準的な運賃」や貸切バスにおける「公示運賃」、または「確保すべき適正な人件費」を含めた適正な運賃・料金を収受しない事業者への指導を強化する。また、道路運送法にもとづく適正な人件費の算出にあたっては、全産業平均給与額を基礎とする。

    ⑦国・地方自治体は、「定額乗り放題タクシー」等と呼称される新たな輸送サービスに対し、地域の公共交通全体の持続可能性や旅客の安全性を踏まえ、採算性を無視した過度な低価格運行等を抑制する措置を講じる。

    ⑧国は、事業への参入要件を厳格化するとともに、事業者に対する事業継続の許可について、事業場の労働者の労働・社会保険への加入状況をより厳格に精査する。

  3. (3)国・地方自治体は、いわゆる「ライドシェア」などの新たな有償旅客運送事業について、既存の公共交通で保障されている利用者の安心・安全が確保されない限り、導入しない。また、空港、港湾、観光地において、訪日外国人旅行客を対象とした違法な白タク・白バス類似行為が目立つことから、道路運送法をはじめとする法令違反として厳正に対処する。
  4. (4)国は、運転代行における随伴用自動車に代わり、折り畳み式原動機付自転車等(電動キックボード・自転車を含む)を使用した自動車運転請負サービスについて、自動車運転代行業法の類型に加えるとともに、利用客の車両は代行運転普通自動車とみなし、第二種免許を運転の要件とする。
  5. (5)国は、貨物自動車運送事業にかかわる現行の基準が、輸送の安全確保に最低限必要なものであるという原則に立ち、事業法による規制の対象とならない自家用自動車による有償貨物運送については容認しない。
  6. (6)国は、車内・機内・船内における迷惑行為・危険行為・暴力行為に対する関連法規を周知徹底し、厳格に運用する。また、必要な法整備も視野に当面は安全阻害行為等の類型の見直しなど運用の改善により当該行為の抑止をはかる。なお、あおり運転などの妨害運転罪にあたる行為を抑止し交通事故を防止する観点から、映像記録型ドライブレコーダーの更なる普及に向けて必要な環境整備を行う。その際、ドライブレコーダーで収集した個人情報を、事故などの検証以外に使用する場合は、その目的を事前に明らかにする必要があることの周知徹底をはかる。
  7. (7)国は、飲酒や薬物中毒による運転の根絶に向け、交通事故発生時には飲酒検査等を必ず実施し、交通事故証明書に結果を記載する。
  8. (8)国・地方自治体は、交通事故・負傷者の減少、交通事故死亡者ゼロをめざす。

    ①国・地方自治体は、急発進や急ブレーキをしないエコ運転の推進、交通安全教育の充実、運転技術の維持向上、安全な車とまちづくりを促進する。

    ②国・地方自治体は、高齢運転者による交通事故防止対策として、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置が搭載された普通自動車(サポートカー)の購入支援や、サポートカー限定免許の申請促進に向けた施策など、ハード・ソフト両面からの環境整備をはかる。あわせて、代替移動手段の拡充など、運転免許の自主返納後の支援をはかる。

    ③国・地方自治体は、訪日外国人旅行客による交通事故の防止や事故被害者の利益を守るため、車線規制や速度規制、交通標識などの国内交通ルールや、事故発生時にとるべき行動などについて、運行供用者による外国人自動車運転者への周知を徹底する。

    ④国・地方自治体は、特定小型原動機付自転車(16歳以上であれば運転免許不要、ヘルメット装着が任意となる最高時速20キロ以下の電動キックボード)について、人・自転車・自動車(二輪車などを含む)など既存の道路交通との安全が阻害されないよう、厳格な走行ルールを設定し、その周知徹底に向けた安全運転講習の拡充、および違反に対する取り締まりを強化する。また、運転者自身の安全のためにも、努力義務となっているヘルメット着用について、その重要性を周知する。

    ⑤国・地方自治体は、自転車事故の防止に向け、2024年11月から罰則化されたルール(運転中のながらスマホの禁止、酒気帯び運転およびほう助の禁止)や、運転時のヘルメット着用の重要性について、周知徹底する。

  9. (9)国は、改正自動車損害賠償保障法により恒久化された自動車事故対策事業について、被害者支援事業や事故防止にむけた施策の充実化を推進するとともに、一般会計に貸し出されている「自動車ユーザーが支払った保険料」全額を早期に返還する。
  10. (10)国は、航空機を利用したテロ・ハイジャックなどの犯罪防止をはじめ航空輸送の安全確保に向けて、国が検査の実施主体となるなど、財源を含め、その責任を一層強めるとともに、旅客・荷主の義務の周知など航空保安体制を強化する。
  11. (11)国は、民間機優先の空域再編を実施するとともに、国土交通省・防衛省(自衛隊)・在日米軍に分かれている航空管制を国土交通省へ一元化し、航空安全を強化する。
  12. (12)国は、一元的な海上交通管制のもと、船舶の動静監視および情報提供体制を整えた、海上交通センターの機能向上をはかる。
  13. (13)国は、座礁をはじめ海難時における海洋汚染に対する被害者保護のため、改正船舶油濁損害賠償保障法の周知徹底をはかるとともに、油流出防止対策や油濁損害の防除に対し、省庁横断的に対処して地方自治体への支援を実施する。
  14. (14)国は、国内空港における外国航空機による運送(シカゴ条約)、国内港間における外国船舶による旅客・貨物の沿岸輸送(船舶法)を認めないカボタージュ規制について、国内輸送の安全性を担保するため、一元的に制度の維持・運用をはかる。
  15. (15)国は、混雑が著しい港湾・浅瀬・狭水道における船舶航行の安全対策の強化・通航制限の解消のため、航路整備の推進、航路内漁網の排除、新規埋立事業・大型浮体構造物設置に際しての港湾機能・海上交通との調整、わが国に寄港する外国籍船舶への水先人の乗船・タグボート使用の義務化や責任制限の整備など各種対策を強化するとともに、事業停止・許可取消も含めた罰則強化・責任追及を推進する。
  16. (16)国は、貨物輸送ユニットの収納のための行動規範(注9)や改正SOLAS条約(注10)と陸上輸送の整合性をはかるため、海上輸送コンテナに関して、積荷内容(重量、危険・有害物質等)・積付方法などの情報提供を荷主に義務付ける「国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律(案)」(注11)の再提出を検討する。危険・有害物質輸送に関する国内規制に関して、危険・有害物質表示を国際基準に統一する。
  17. (17)航空貨物にかかわるKS/RA制度(注12)について、国がKS認定を行うなど保安検査の実施主体を見直す。

  18. (18)国は、航空・船舶・陸上輸送貨物および郵便への無申告危険品の混入を防止するため、改正商法に規定された危険物に関する通知義務を周知・徹底するとともに、荷主・梱包業者・代理店に対して、危険品を取り扱う責任に関する教育を義務化し、違反者への罰則を強化する。
  19. (19)国は、海上輸送の安定・安全性確保のため、日本籍船舶と日本人船員の確保、海賊・武装強盗などへの対応強化に向けた国際的な連携・協力など、必要な措置を講じる。
  1. (注9)貨物輸送ユニットの収納のための行動規範~IMO(国際海事機関)/ILO(国際労働機関)/UNECE(国連欧州経済委員会)により2015年1月に発行された、コンテナ運送中の事故を防止するための具体的な貨物の収納及び固縛方法等が記述された規範。SOLAS条約においてコンテナ内の積み付けを適切に実施するためのガイドラインとして参照されている。

  2. (注10)SOLAS条約~海上における人命の安全のための国際条約。2016年7月に発効した改正条約では、計量・証明されたコンテナ重量情報の発荷主から船長への提供の義務付けも盛り込まれた。

  3. (注11)「国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律(案)」~輸送の責任を明確にし、荷主、船社、港運、運送会社と港湾関係に携わる労働者の安全を守るための法案。関係者の合意が得られぬまま2012年の第181臨時国会において審査未了・廃案となったが、(注10)などのとおり再度の検討を後押しする方向性は見られる。

  4. (注12)KS/RA制度~Known Shipper(特定荷主)/Regulated Agent(特定航空貨物利用運送事業者)制度:国際民間航空機関(ICAO)の国際標準などにもとづき、セキュリティレベルを維持しつつ物流の円滑化を図るため、荷主から航空機搭載まで一貫して航空貨物を保護する制度。

 

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