- (1)介護保険制度は2000年に創設されて以来着実に普及し、サービス受給者数、介護保険の総費用は年々増加している。今後のさらなる高齢化にともなう重度化の進行や単身・高齢夫婦のみ世帯、認知症の人の増加により、介護サービスに対する需要は加速度的に増大し、多様化することが見込まれる。
- (2)一方、少子高齢化が進行する中、とりわけ人材確保の面で、介護保険制度の持続可能性が揺らいでいる。さらなる処遇改善を継続的に行うことで、人材確保につなげることが不可欠である。また、訪問介護など在宅ケアを支えるサービスの確保や、介護予防・日常生活支援総合事業については、サービスの量や質の地域間格差を拡大させないようさらなる充実が欠かせない。介護が必要になっても安心してくらせる社会、介護と仕事の両立推進、「介護離職ゼロ」の実現に向けて、良質な保険サービスの給付と制度の持続可能性の確保の両立が求められている。
- (3)また、介護人材は慢性的に不足している。厚生労働省試算で必要とされている介護労働者数に実数が追いついていない。介護分野における有効求人倍率は全職業平均を大きく上回り、賃金も全産業平均と比較し依然として格差がある。介護人材の確保・定着、賃金・労働条件の改善は喫緊の課題である。また、外国人介護人材に係る人員配置基準上の取り扱いの見直し等が行われており、介護分野における外国人材の受入れに対して、サービスの質や労働条件の確保が課題である。
- (4)高齢者虐待の市町村への相談・通報件数や虐待判断件数は増加傾向にある。また、認知症患者数は、2025年に700万人を超える見込みである。誰もが住み慣れた地域で良質な環境のもとで自分らしくくらし続けられるよう、虐待の防止や成年後見制度等の権利擁護、認知症の正しい理解、本人や家族への支援体制の整備、在宅医療・介護の連携・充実が大きな課題である。
- (6)介護保険給付は実質的に高齢者に限られており、年齢にかかわらず介護を必要とする人が必要なサービスを受けられる普遍的な制度とすることが大きな課題である。