1
デジタル社会インフラの整備促進と産業構造の変化への対応および中小企業への支援強化
- ○経済や産業の構造変革に対応するため、社会基盤やあらゆる産業において、AI・IoTなどのさらなる活用をはじめ、DXの実現に向けた環境整備を積極的に支援する。また、「デジタル・ガバメント」を実現し、国民生活の利便性向上や非常時におけるセーフティネットの構築につなげる。その際、国内IT産業の育成を支援するとともに、政府の情報システムの安全性を強化する観点で、機密性の高い情報から国産クラウドサービスの採用を進める。
- ○DXやGXなどの進展により起こり得る、産業・経済・社会への様々な変化について、具体的な対応策を検討するための労使が参画する枠組みを早急に構築する。また、企業における人的投資、設備投資、研究開発に対する支援を着実に実施する。特に、雇用形態や企業規模にかかわらず、変化に対応した働く者の学び直しや企業主体の職業能力開発に対する支援を強化する。
- ○サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正な分配の実現に向けて、「働き方」も含めた取引の適正化を実現する。あわせて、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の公共調達部門も含めた周知浸透と対応の徹底を働きかける。また、「パートナーシップ構築宣言」の取り組みを推進・拡大するとともに、中小企業への各種支援策を拡充および周知し、手続きを簡素化するなど利用しやすい環境を整備する。
2
「公平・連帯・納得」の税制改革の実現
- ○低所得者の負担軽減と就労支援に向けて「給付付き税額控除」の仕組みを構築し、社会保険料・雇用保険料(労働者負担分)の半額相当分を所得税から控除する「就労支援給付制度」や、基礎的消費にかかる消費税負担分を給付する「消費税還付制度」を導入する。
- ○税による所得再分配機能の強化に向けて、金融所得課税を抜本的に強化するとともに、将来的な所得税の総合課税化を検討する。
- ○退職所得控除について、ライフスタイルに合わせた多様な勤労形態などを踏まえ、勤続年数にかかわらず控除額を一律にした上で、現行制度と比較して退職所得控除額が勤続60年までは減額とならない年60万円とする。
- ○物価動向などを踏まえ、所得税の課税最低限を引き上げる。その際、基礎控除額は所得額にかかわらず一律とし、現行制度も含め見直しをはかる。その上で、人的控除はできるだけ社会保障給付や各種支援策等に振り替え、残すものは高所得者ほど税負担の軽減額が大きくなる所得控除から税額控除に変えることを基本とする。
- ○自動車関係諸税について課税根拠を総合的に整理し、ガソリンなど燃料課税の暫定税率や自動車重量税の廃止など税の軽減・簡素化をはかる。その際、地方財政に配慮し、必要な税財源を確保する。
3
マイナンバー制度の理解促進と一層の活用
- ○マイナンバー制度の活用によってめざす社会の国民への理解を深めつつ、公正・公平な税制と安心・信頼の社会保障制度を実現するため、正確な所得捕捉による真に支援を必要とする層へのプッシュ型支援制度の構築と、金融所得課税を含む所得税の総合課税化の実現に向けて、マイナンバーとすべての預貯金口座のひも付けを行う。
- ○マイナンバー制度に対する国民の信頼回復に向けて、未だ生じる誤登録などの再発防止を徹底するとともに、個人情報管理体制をより一層強化する。そのうえで、マイナンバーカードの普及促進をはかる。あわせて、デジタル行政の促進による国民の利便性の周知を徹底するとともに、さらなる利便性向上をはかるため、行政手続きのデジタル化やマイナポータルの活用を促進する。
4
雇用の安定と公正労働条件の確保
- ○現行の外国人技能実習制度および特定技能制度で就労する外国人の就労面に加え、日本語教育などの支援を強化するとともに、適正な受入に関する指導・監督を強化する。また、見直し後の育成就労制度および特定技能制度の実効性確保に向け、制度所管省庁・業所管省庁における十分な予算確保、人手不足の状況や賃金水準の動向、日本人の就業率等についての調査および統計整備、評価試験の適正化などを行い、安易な受入れ拡大は認めない。
- ○雇用労働に近い働き方をしているにもかかわらず労働法の保護を受けることができない者について、フリーランス新法にもとづく契約ルールの適正化やハラスメント防止などの実効性を確保するとともに、最低報酬の設定、仲介業者に対する法規制など法的保護の実現をはかる。あわせて、労働者と類似の作業に従事する個人事業者等に対して労働者と同様の安全衛生水準を確保する。また、早急に「労働者概念」の見直し・拡大に着手する。
- ○不当な解雇を拡大しかねない解雇の金銭解決制度は導入しない。
- ○就職氷河期世代を含め、世代ごとの課題に対応した良質な雇用・就労機会の実現に向け、当事者の個別の事情や希望を踏まえつつ、将来を見据えた中長期的な能力開発を実施し、適切な就職支援・定着支援を行う。また、そのために、ハローワークなどの支援機関の相談体制の強化をはかる。
- ○担保法制の見直しに際し、労働債権および労働者保護を確実にはかるため、ILO第173号条約(労働債権の保護)の趣旨を踏まえ、担保権より労働債権を優先させる制度を新たに創設する。また、事業譲渡、合併など、あらゆる事業再編において、労働組合などへの情報提供・協議を義務づけることや、労働契約などの承継に関する規定を設けるなど、労働者保護をはかるための法制化を行う。
- ○今後の雇用失業情勢の変動などに対応し得るよう、雇用調整助成金などに必要な予算措置を講じるとともに、労働保険特別会計への一般会計からの機動的な繰り入れなどを通じて財政の安定化をはかる。また、雇用保険制度の国庫負担割合を引き上げ、雇用保険が本来果たすべき機能を強化するとともに、他の施策などとも連携し、雇用の維持・安定をはかる。
- ○地域における産業の発展と安定した雇用を確保する観点から、国・地方自治体による地域雇用活性化などの事業を強化する。また、ハローワークなどによる職業訓練、相談援助、マッチング機能を強化するとともに、ミスマッチを減らすため、求職者等への職場情報提供の充実をはかる。
- ○働く者の技術・技能やキャリア向上に向けて、非正規雇用で働く者や障がい者などを含め、誰もが希望する能力開発等の機会を確保されるよう、「人への投資」に関する財政支援を拡充するとともに、中小企業等へのノウハウの提供や相談援助の強化、制度の周知徹底をはかる。
- ○労働基準法等については、労働者保護の基本原則を堅持した上で、労働組合を中核的担い手とする集団的労使関係の強化や、労働時間規制の強化など、働く者のための労働基準関係法制の実現に向けた見直しをはかる。また、時間外労働の上限規制が確実に遵守されるよう監督・指導を徹底し、長時間労働を是正する。
- ○労働教育の推進を通じて、安心して働くことができる社会を実現するため、「ワークルール教育推進法」の策定をはかる。
- ○最低賃金について、中期的に一般労働者の賃金中央値の6割水準をめざし、早期の実現にむけた一層の引き上げと環境整備をはかる。あわせて、監督体制の強化などを通じ、履行確保を徹底する。
- ○ILO「仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶」に関する条約の批准に向け、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設する。また、職場におけるハラスメントを行ってはならないことの規範意識の醸成に向け、カスタマー・ハラスメント(以下、カスハラ)対策についても、中小企業を含め、足並みを揃えて一体的に取り組むように厚生労働省が消費者庁、警察庁、業所管省庁などと連携し、各業界や企業の取り組みを支援する。あわせて、取引先の労働者などによるカスハラの相談窓口の整備、求職者がハラスメントを受けた際の相談体制の整備・周知と事業主への助言・指導などを行う。
5
ジェンダー平等で多様性を認め合う社会の実現
- ○政府の「第5次男女共同参画基本計画」で定めた目標に対する進捗に遅れが見られること、世界の潮流は2030年までの完全なジェンダー平等の実現(いわゆる203050)であることを踏まえ、女性の参画拡大を喫緊の課題とし、2025年12月の閣議決定をめざして検討が進められている「第6次男女共同参画基本計画」においてはさらに踏み込んだポジティブ・アクションなどの「具体的な取り組み」を策定し、その実行を通じた早期の目標達成をめざす。
- ○結婚により姓を変更している圧倒的多数は女性であり、その不利益や負担が著しく偏っていること、政府が進める旧姓の通称使用には限界があること、ならびに2024年10月に国連女性差別撤廃委員会から導入を求める4度目の勧告が行われたことを踏まえ、男女不平等を是正し、人権の尊重、個人の尊厳を基底に置いた社会実現のため、選択的夫婦別氏制度をただちに導入する。
- ○多様性の尊重に逆行する動きが世界の一部にあるが、日本はそのような動きに流されることなく、性的指向・性自認の多様性に関する差別・偏見をなくし、すべての人の対等・平等、人権が尊重される社会の実現に向けて取り組む必要がある。まずは、2023年6月に施行された性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律が定める「基本計画」および「指針」をただちに策定し、国民の理解増進に関する施策を実行するとともに、性的指向・性自認(Sexual Orientation and Gender Identity:SOGI)の多様性に関する差別を禁止する法律を制定する。
6
すべての世代が安心できる社会保障制度の確立
- ○ひとり親世帯やヤングケアラーなど多様で複合的な課題を抱える人への支援強化に向けて、支援する側の課題も把握しつつ、居住確保や子どもの学習・生活支援など重層的な支援体制を構築するとともに、現場を担う人材の確保に向けた処遇改善策の実行と財源を確保する。
- ○切れ目のない効率的な医療提供体制の構築に向けて、外来・在宅医療を含めた医療機関の機能分化・連携を着実に進めるとともに、地域間・診療科間の医師偏在是正に向けて、規制的手法を中心とした取り組みを進める。また医療人材の確保に向けて、診療報酬改定などを通じてさらなる処遇改善施策を実行する。
- ○訪問介護の実施状況など介護報酬改定による影響の実態把握を丁寧に行い、質の高い在宅ケアの拡充に資する対策を講じるとともに、現場を担うすべての介護人材の確保に向けて、さらなる処遇改善施策を実行する。また人員配置を緩和することなく、業務負担軽減の観点から、ICTやAIなど新技術の活用促進を支援する。
- ○被用者保険の適用拡大を早期に進めるとともに、第3号被保険者の生活実態を分析するなど、将来的な第3号被保険者制度の廃止に向けた会議体を早期に設置する。
- ○安全で質の担保された子ども・子育て支援サービスの提供体制の確保に向けて、保育中の事故の未然防止、災害時の安全確保などをはかる。こども基本法にもとづき、子どもの権利擁護、子ども・子育て政策の立案・実施、子どもに対する体罰の禁止などを周知徹底するとともに、児童相談所や児童養護施設などの体制を強化する。また、子ども・子育てにかかわる職員の賃金・労働条件の改善や人材確保をはかる。
7
脱炭素社会実現に向けた「公正な移行」の具体化と予算措置
8
東日本大震災からの復興・再生と防災・減災対策の充実
- ○被災地などの農水産物や食品に関する風評対策として、安全証明や販路拡大の支援を徹底するとともに、国内外に向けて迅速かつ正確な情報発信を行う。
- ○若年層を中心に、被災のために心のケアを必要とする人が、中長期的な支援を継続的に受けられるよう、心のケアセンターや各自治体の心のケア事業の予算確保と体制維持・拡充をはかる。
- ○地域コミュニティの希薄化など、自然災害の被災地が抱える問題の複雑化・多様化を踏まえ、被災者が安心して生活を再建できるよう、アウトリーチ型の見守り機能や相談体制を含む重層的な支援を強化する。激甚化・頻発化する自然災害に備え、早期復旧に向けたライフラインの整備、多様な意見を踏まえた個別避難計画の策定、避難所のあり方や住宅の確保など、人命を最優先にした防災・減災対策を推進する。
9
教育機会の均等実現と学校の働き方改革を通じた教育の質的向上
10
民主主義の基盤強化と国民の権利保障
- ○投開票の簡素化・効率化、疑問票の削減、海外赴任者の選挙権保障などの観点から、端末での電子投票を可能とする。また、有権者の投票機会のさらなる確保のため、投票当日投票所の維持はもとより、共通投票所設置の拡大や期日前投票時間の延長、移動期日前投票所の拡充について、十分な人員配置と財政措置を講じるとともに、高齢者、障がい者、傷病者、妊婦などの選挙権保障のため、郵便等投票制度の手続きの簡素化を進める。
- ○若者の政治意識の醸成に向けて、義務教育段階から主権者教育を行う。
- ○参議院選挙の合区については、都道府県という単位の政治的重要性に鑑み、地方の事情に精通した全国民の代表としての活動など、参議院に二院制のもとでの独自の役割を定めることによって解消する。
- ○インターネット等を利用する方法による選挙運動の解禁により発生した、Webサイト等を利用する場合の取り扱いと文書図画の頒布・掲示に関する規制の不整合を是正する。また、選挙運動期間中に、インターネットを介して当該選挙に関連する動画等を掲載し利益を得ることを禁止する。
- ○立候補者の公平・公正な選挙運動実現のため、わたり規定(公職選挙法第178条の3)に該当する場合を除き、同一の選挙か否かにかかわらず、候補者が他の立候補者の当選に資する行為を行うことを禁止する。
- ○選挙妨害をはじめとする行き過ぎた選挙運動事例に鑑み、立候補者が選挙運動を妨げられることなく安全に活動できるよう、また有権者の適正な参政権行使が保障されるよう、「選挙の自由妨害罪」(公職選挙法第225条)を厳格に適用する。
- ○選挙運動期間中の選挙従事者への実費弁償・弁当提供に関する制限については、経済・物価情勢を踏まえて見直しを行う。
- ○政治資金や選挙に関する法令遵守の徹底のための独立した専門機関を早期に設置し、公職選挙法や政治資金規正法を実効性あるものとする。
- ○政治分野における男女共同参画推進のため、クオータ制導入および女性議員の割合に応じた政党交付金の傾斜配分について法整備を行う。また、候補者・議員の仕事と生活の両立を支える環境整備や、あらゆるハラスメントを対象とした対策の強化を行う。
11
未批准のILO中核条約の批准を通じたディーセント・ワーク実現