3.安心できる社会保障制度の確立|介護・高齢者福祉政策

2-9-1.地域包括ケアを推進し、利用者が安心して住み慣れた地域でくらし続けることのできるサービス提供体制を強化する。

    1. (1)国および地方自治体は、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域でくらすことができるよう、医療・介護・生活支援などが一体的に提供される地域包括ケアを全国的に推進するため、以下のとおり対応する。

      ①市町村(保険者)の介護サービスの総合的な推進機関としての役割を強化する。

      ②介護や地域生活にかかる総合的なコーディネーターとして、地域包括支援センターが地域のニーズに則し、在宅・施設介護の総合相談・支援、寝たきり・認知症予防対策、介護総合相談・ケアラー支援など、一定の水準を確保した機能を発揮できるよう、十分な財政支援と人材の確保の強化、業務の効率化を進める。

      ③地域が抱える課題把握や有効な地域資源の発掘に資するよう地域ケア会議を充実する。そのため、都道府県・市町村や地域の医療・福祉・介護等関係者の役割を強化すべく支援するなど、各地の特性に応じた対応を促す。

      ④事業所における家族や介護者等からの苦情や要望への対応が増加している実態を踏まえ、利用者がより適切なサービスが受けられるよう利用者と事業所の話し合いに対して斡旋や仲介等の支援を行う第三者機関の設置を検討する。

    2. (2)高齢者人口が減少し、サービス需要が減少する地域においては、サービスの維持・確保に向けて、以下のとおり対応する。

      ①配置基準の弾力化は、サービスの質の低下、職員の業務負担の増加とそれに伴う離職の誘発で人材不足の加速化が懸念されるため、行わない。

      ②訪問系サービスの報酬体系は、「回数」を単位として評価しており、利用者の事情による突然のキャンセルや利用者宅間の移動にかかる負担が大きいため、包括的な評価の仕組みを導入する。その際は、地域間格差、利用者負担の公平性、訪問に要する時間・コストの負担のあり方なども考慮する。

      ③訪問・通所などサービス間の連携・柔軟化をはかり、職員が行き来できるようにするためには、サービスの質の確保とともに、職員の業務負担の増加とならないようにする。

      ④事業者によるサービス提供が難しい地域においては、サービス提供と人材確保の観点から、市町村が直接的な事業として実施する枠組みや、複数の市町村が合同で介護保険の運営を行う広域化について、市町村が選択できるようにする。

      ⑤経営の協働化・大規模化については、サービスの維持や間接業務の効率化などの利点はあるものの、地域に根差した小規模事業所の廃業のリスク、効率化重視による職員の削減やサービス縮小などの懸念もあり、丁寧に検討する。

    3. (3)国および地方自治体は、在宅ケアを支えるサービスの充実に向けて、以下のとおり対応する。

      ①急性期医療から在宅医療、リハビリテーション、在宅介護への切れ目のない支援体制の構築に向けて、訪問診療・看護などの在宅医療、訪問介護・リハビリテーションなどの在宅介護を利用者の状態に合わせて組み合わせ、必要な時に必要なサービスを提供して在宅生活を支える体制を確保する。

      ②介護と医療を一体的なインフラとして提供するため、複合型サービスや人的連携など、総合的にコーディネートしていく仕組みを整備する。

      ③利用者のニーズ、QOLの確保に対応するため、看護師(専門看護師)の一定の医療行為、介護職員の一定の医療行為については、医療・介護ケアの基礎的インフラとして安全性の担保など一定のルールのもとで実施可能にする。また、医療類似行為も含め、公費による研修の整備および認証、責任の所在など法律による規定を整備する。

      ④限られた財源とサービスを効率的に供給するため、医療費の増大の抑制という観点からも、中間施設や在宅生活を支える小規模多機能型などの複合型介護サービスの供給量を拡大する。

      ⑤「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」など夜間サービスや訪問介護における利用者・介護労働者の安全を確保する観点から、職員の恒常的な複数名訪問のための支援を強化する。

      ⑥訪問看護ステーションの整備と大規模化を推進するとともに、キャリアパスのあり方などを検討し、看護師の確保を進める。

      ⑦要介護者が身近で迅速かつ適切な医療的処置を受けることができるよう、研修を受けた介護労働者の配置を評価する報酬とするとともに研修体制等を強化し、要介護者に安心の医療を提供できる体制を確保する。なお、その場合介護報酬上、医療行為を評価する。

    4. (4)国および地方自治体は、家族など介護者(ケアラー)の支援を強化するため、以下のとおり対応する。

      ①地域包括支援センターなどを拠点とした家族などの介護者への情報提供・相談支援、レスパイトケア、ヤングケアラーに対する生活支援や就学支援など、包括的な支援提供体制を整備する。

      ②仕事と介護の両立を行う家族など介護者の介護離職防止に関する相談窓口の充実など情報提供・相談体制づくり、介護休業制度の拡充と社会保険料の免除、家族の介護による経済的困窮者への金銭貸付制度など一定の経済的支援などを行う。

      ③職場における勤務時間の短縮など就業環境の整備を推進するとともに、働く場と地域包括支援センターなどをつなぐ機能を提供する。

      ④やむを得ず離職した人に対しては、個人情報保護措置を講じることを前提に介護離職者の登録制度を創設し、ハローワークや自治体などと連携しつつ地域包括支援センターを拠点に介護サービスやNPO、介護者のネットワークなどの様々な資源に関する情報提供や、離職者が持つ能力を地域や職場で活かせるようスキルの把握などにつなげ、再就職支援の契機をつくるといった支援を行う。

    5. (5)国は、要介護者の状態が軽度化したケースに対する介護報酬による適切な評価や、軽度化に向けた利用者ならびにケアマネジャーの動機付けを強化する仕組みを創設する。その際、心身の状態の改善が進みにくい要介護者の介護サービスの利用が妨げられることにならない仕組みを検討する。
    6. (6)国および地方自治体は、利用者本位で公正・迅速な要介護認定の実現に向けた取り組みを進める。

      ①全国統一の要介護認定基準にもとづき、客観的かつ統一的な認定が行われるよう、訪問調査員、認定審査会委員の公正・中立かつ適正な調査・判定の実施に資する研修の改善や調査指導員の養成を拡充する。

      ②認定希望者が合理的な理由なく介護予防・日常生活支援総合事業にかかる基本チェックリストに誘導され、要介護認定審査が受けられないことがないよう、運用の周知・徹底を行う。

    7. (7)国および地方自治体は、認知症の人を含め、高齢者が尊厳を保持しつつ希望を持ってくらすことができる社会の実現に向けて、以下のとおり対応する。

      ①地域包括支援センターが中心となり、地域の介護施設、保健所、医療機関との連携をはかり、認知症の予防と早期発見、治療、情報提供、家族への相談・支援などの包括的なサービス提供体制を整備する。

      ②本人の意思が尊重され、住み慣れた地域で良質な環境のもと自分らしくくらし続けられるよう、ICTやAIなど新技術を活用した在宅ケアなどを拡充するとともに、安易な精神病院入院や施設入所を回避し、早期の治療、生活、就労、移動支援など、地域の見守り体制づくりを行う。

      ③利用者の尊厳と生存権を尊重した看取り介護の改善をはかるため、自らが希望する介護について自分自身や周囲の家族などと話し合う「人生会議」の普及を徹底し、延命の可否を含め「利用者に最善の介護」を選択できる体制を整え、在宅や施設におけるターミナルケアを充実させる。

      ④若年性認知症を含めた認知症に関する理解促進に向けて、認知症サポーターの養成推進をはじめ、関係省庁が連携し、子どもや学生、若年層などへの啓発に取り組むとともに、事業主による従業員への理解啓発などを支援する。

      ⑤認知症の人やその家族が雇用継続されるよう、若年性認知症支援コーディネーターの配置を進めるとともに、事業主による就労上の配慮や、他の従業員の理解啓発などを支援する。

      ⑥認知症の予防と治療やケア技術に関する研究開発など認知症対策をより一層強化する。

    8. (8)国および地方自治体は、介護事業者の防火対策や消火設備の設置、防災訓練、事故発生時の避難訓練、罹災後や感染症発生後の速やかな事業活動再開に向けた業務継続計画(BCP)の策定に対する支援を強化するなど、総合的な安全対策を講じる。
    9. (9)自治体が事業者に対して行う指導監査を充実するため、労働法令遵守を含めた監査基準の明確化と人材確保・育成をはかり、国はそのための財政措置を行う。
    10. (10)国および地方自治体は、施設での身体拘束や虐待の根絶に向けて、以下のとおり対応する。

      ①すべての施設における虐待の発生またはその再発を防止するための措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めること)、適切な対策の検討とその結果の従業者への周知徹底が行われているかを確認し、指導監督を徹底する。

      ②介護保険適用外の施設における身体拘束・虐待に対する行政指導を厳格化するとともに、市町村は地域における高齢者住居の実態把握を徹底する。

    11. (11)国および地方自治体は、利用者への虐待などハラスメントを根絶するため、高齢者虐待防止法について住民への周知をはかるとともに、事業者、介護労働者への研修、指導を充実、徹底する。また、利用者やその家族からの相談・通報に対し迅速に対応できるよう体制整備を行う。
    12. (12)国および地方自治体は、判断能力が十分ではない人の権利擁護を推進する。

      ①「市民後見人」の育成・支援を進める。また、後見実施機関(成年後見センター)をNPOや社会福祉法人への業務委託等により設置し、支援体制を強化する。

      ②成年後見人制度を利用した際に法的能力等において過度の制限を受けることがない仕組みに見直した上で、その利用にかかる費用負担を減らすとともに、同制度の周知や人員確保など権利擁護の体制を整備する。

    13. (13)国は、居宅介護支援について、利用者の自立支援や軽度化に資する質の高いケアプランの策定を促進する観点で、以下の通りの対応をはかる。

      ①ケアマネジャーの独立性を確保するため、独立型の事業所を報酬上評価するなど支援を行う。また、特定事業所集中減算は、優良なサービスの利用が阻害されるなど、利用者の便益を損なう懸念があるため、独立性の確保により利用者の囲い込みを生じさせない仕組みを検討しつつ見直しを行う。

      ②ケアプランの質を向上させるため、ケアマネジャーの研修内容をさらに充実させるとともに、ケアマネジャーの経済的・時間的負担が大きい更新研修を見直す。

      ③利用者の状態把握やサービス担当者会議などを十分行えるように、事務の簡素化や文書負担軽減を進める。

      ④管理者要件が原則として主任介護支援専門員となることから、その資格を取得しやすいよう、研修機会の充実などをはかる。

    14. (13)国および地方自治体は、高齢者の尊厳を守り、QOLの向上に寄与する観点から、高齢者の良質な住まいの確保に向けて、以下のとおり対応する。

      ①住み慣れた自宅で生活すること、やむを得ず施設入所の場合には個室ユニットを基本とし、自立的な生活と生活の場を確保する観点から、特別養護老人ホームや老人保健施設における多床室の新設は認めない。

      ②1ユニット定員の拡大がケアの質の低下と職員の過度な負担につながらぬよう、夜間・深夜の職員配置を確保するための指導を徹底する。

      ③サービスの質の確保を前提に、サービス付き高齢者向け住宅や優良賃貸住宅を整備するとともに、公営住宅などをリノベーションなどによる老朽化対策を講じたうえで活用する。また、全国にある空き家も積極的に活用する。

      ④施設入居に関しては、施設も居場所であり住まいとみなし、低所得者には社会手当として住宅手当を支給するなど、個人の住まい・居場所が確保されるよう体制を整備する。あわせて、住宅セーフティネット制度をより活用すべく、制度を積極的に周知するとともに登録手数料の平準化や居住支援協議会などによる支援強化などを行ったうえで、住居を失った人や失うおそれのある人が一定基準以下の所得である時に住居の現物支給ないし家賃補助などを行う。

      ⑤リバースモーゲージの活用や、低所得者に対する住宅給付の創設などを通して、利用者の負担の軽減と“居場所”確保をはかる。

    15. (14)国は、介護医療院について、長期療養と介護のニーズを合わせ持つ利用者の住まいを確保する観点で、以下の通りの対応をはかる。

      ①介護医療院は「生活施設」である観点から、最低でも一人あたり8㎡の床面積を前提とし、個室を基本とする。

      ②設備基準を満たせない介護医療院については、報酬の減額措置を検討する。

    16. (15)有料老人ホームなどについて、利用者が安心して生活できる住まいを確保する観点で、以下の通りの対応をはかる。

      ①国および都道府県は、未届老人ホームを無くすとともに前払金保全措置義務を確実に履行させるため、「有料老人ホームの設置運営標準指導指針」に沿って有料老人ホームへの指導・監督を徹底し、利用者が安心できる住まいの整備を進める。

      ②国および地方自治体は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどについて、入居に際して保証人がいない場合は、その代替として機関保証や成年後見制度を積極的に活用するとともに、入居者本人の意思に反して強制的に退去させないよう事業者に対して指導する。また、身元保証等高齢者サポートサービス事業者の監督体制を確立する。

    17. (16)国は、福祉用具について、利用者のQOLの向上や介護労働者の負担軽減に資するイノベーションのための支援に向けて、以下のとおり対応をはかる。

      ①福祉用具の貸与料金について、上限価格の設定による適正化を徹底するとともに、仕様や機能等に応じた客観的かつ公正な価格設定を行う体制を構築するなど、サービス提供への影響を把握しつつ公定価格化を含めて引き続き検討を進める。

      ②福祉用具専門相談員の質の向上・確保に向けて、より実践的なスキル取得のための実地研修等をカリキュラムに組み込むとともに、担当利用者件数の上限を設けることを検討する。

      ③保険収載にかかる手続きはデータにもとづき客観性と透明性を確保する。

    18. (17)国は、福祉用具について、利用者のQOLや介護労働者の負担軽減に資するイノベーションのための支援を行う。また、保険収載にかかる手続きはデータに基づき客観性と透明性を確保する。
    19. (18)国および地方自治体は、事業者指定について、以下の通り見直す。

      ①事業者の指定・更新要件に、労働関係法規の遵守と社会保険加入を追加する。

      ②在留資格「介護」または「特定技能1号」で働く外国人や技能実習生を含めた労働者について、賃金・労働条件が労働関係法規に違反している、または社会保険に加入させていない場合は、事業者指定の取り消しを行うなど、厳正な指導監査を実施する。

    20. (19)国は、地域の様々な人材を活用したネットワークを構築するため、自治体による地域支援事業の確実な実施を支援する。任意事業の介護給付費適正化事業、家族介護支援事業は必須事業とする。
    21. (20)国は、仕事と介護の両立支援を強化する観点から、職場における介護に関する従業員からの相談対応や法定および社内の両立支援制度の周知、介護保険制度に関する情報提供を徹底するため、事業主に対して「職業家庭両立推進者」の活用を促進する。(「男女平等政策」参照
    22. (21)介護予防・日常生活支援総合事業(以下、「総合事業」という)について、以下の通りの対応をはかる。

      ①国および地方自治体は、総合事業の展開について、各自治体の取り組み状況をモニタリングし、随時フィードバックを行う体制を構築し、サービス水準の底上げをはかる。

      ②地方自治体の財政状況によってサービス水準の格差が拡大しないよう、国および都道府県は必要な補填を行う。

      ③国および地方自治体は、総合事業にかかる基本チェックリストの運用については、要介護認定を受けるべき人が、窓口の主観的な判断によって省かれることのないよう、明確な運用基準を定める。

      ④国および地方自治体は、ボランティアの活動実態および就労状況を把握し、介護労働者との役割および責任範囲の違いを明確にするとともに、ボランティアについて適切な保護をはかる。

      ⑤地方自治体は、利用者の希望を尊重し生活実態を十分に踏まえ、いわゆる軽度の要介護者に対し、総合事業の利用を強要しないようにする。また、利用者のサービスへのアクセスを損なわないよう、多様な主体によるサービスの展開・普及を支援する。その際、安価な報酬によるサービスやボランティアの濫用によって労働者の賃金水準やサービスの質の低下を招かないようにする。

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