雇用保険は、失業した場合や、職業に関する教育訓練を受けた場合などに給付され、
雇用されて働く人すべてのセーフティネットとして機能しています。

仕事探し中・失業の防止・育児や介護

雇用保険制度は労使と国の共同事業です。
財源は、労働者負担の保険料・事業主負担の保険料、国費から成り立っています。
費用の一部を国庫で負担しているのは、雇用保険の保険事故である失業は政府の
経済政策・雇用政策とも関係が深く、政府もその責任を担うべきとの考えによるものです。
ところが、国庫負担には政府の雇用政策に対する責任を明確にする意義があるにも
かかわらず、国庫負担割合を見直そうとしています。

積立金と雇用安定資金の現状

雇用保険の失業等給付の積立金が枯渇するって記事を見たよ。
雇用保険は失業者の急増などに対応するため、一定の失業等給付の積立金を維持しつつ運営されているんだよ。積立金は2015年度には約6.4兆円に達していたんだけど、2017年に国庫負担割合を大幅に縮小したことで減少し始めたんだ。さらに、新型コロナウイルス感染症で、雇用安定資金から雇用調整助成金(雇調金)の支給が 増えたことも影響して、ほぼゼロになりそうなんだ。
「雇用安定資金」ってなに?
雇用保険二事業といって、休業した人や転職した人を支援するための事業があるんだ。キャリアアップ助成金や雇調金もここに含まれるよ。雇調金の原資となるのが雇用安定資金なんだ。雇用安定資金は事業主が負担しているんだけど、2019年度末にあった約1.5兆円を使い切っていて、失業等給付の積立金から借り入れている状況だよ。
雇調金があって助かっていたけど、積立金も雇用安定資金もカツカツなんだね...。
事業主負担の保険料、労働者負担の保険料、国庫負担

労働政策審議会での議論

2022年1月、厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会は、
今後の方向性を示した「雇用保険部会報告」をまとめました。
新型コロナウイルス感染症対策の観点から、以下が盛り込まれました。

  1. 基本手当の暫定措置教育訓練支援給付金の3年間継続
  2. 求職者支援制度の特例措置の次年度継続
  3. 休業支援金の次年度継続

など、各種暫定措置の延長

その一方、最大の検討課題とされたのが「失業等給付の国庫負担」です。
 連合は、「早急に本則(1/4)に戻すべき」と繰り返し主張してきましたが、
厚労省は過去の雇用保険部会報告や衆参厚生労働委員会の附帯決議、
そして今回の部会の議論内容に反して、
雇用情勢および雇用保険の財政状況が悪化している場合にのみ本則と同じ1/4とし、
それ以外の場合には1/40に見直すこととしました。

主な変更点
国の責任は? 繰入制度というけど、機動性・実効性が担保されていない!!

こうした内容が盛り込まれた雇用保険法等改正法案が
第208回通常国会に提出されます。

連合の考え方

雇用保険は、今後も雇用の危機的状況に対応できるよう、
健全な保険財政を確保することが重要です。
そのためにも、今こそ政府は雇用政策の担い手としての責任を示すべきです。

1 失業等給付に係る国庫負担割合を直ちに本則(1/4)に戻し、
財政基盤を整える。

1 雇用保険料の負担増による影響に配慮し、
料率の最大限の抑制をはかる。

連合は、雇用のセーフティネットである雇用保険が
将来にわたり安定的に運営され、支援を必要とする労働者が保護されるよう、
引き続き全力で取り組んでいきます。

用語解説

一般会計からの繰り入れ
国の予算には通常の会計(一般会計)と特定の目的のための会計(特別会計)があります。雇用保険は特別会計により運営されていますが、雇用調整助成金等のうちコロナ禍に対応した上乗せ分や、被保険者以外の分などは一般会計から充当されています。
基本手当の暫定措置
基本手当(いわゆる失業手当)は、失業して仕事を探している労働者に対する給付です。通常の給付日数は最大150日ですが、リーマンショック時以降暫定的に、雇止めによる離職者について、解雇・倒産等による離職者と同じ最大330日に引き上げています。
教育訓練支援給付金
教育訓練制度の一つである専門実践教育訓練を初めて受講して、修了する見込みのある45歳未満の方に対して、離職前の賃金(基本手当日額)の80%を給付する制度です。教育訓練中の生活を支える暫定的な制度として運営されています。
求職者支援制度の
特例措置
求職者支援制度は、雇用保険に加入していない方(1週間の所定労働時間が20時間未満の方)が、月10万円の給付金を受給しながら無料の職業訓練を受講する制度です。月収8万円以下の方が給付金の対象ですが、 シフト制で働く場合は月収12万円以下も対象とするなど、コロナ禍の特例により要件が緩和されています。
休業支援金
新型コロナウイルス感染症などの影響で休業しているにもかかわらず、休業中の賃金(休業手当)を受けることができなかった労働者に対して、本人の申請に基づいて給付する制度です。現在、暫定的な制度として運営されています。