いま政府では、社会のキャッシュレス化・デジタル化を促進するため、
毎月の賃金を「〇〇ペイ」のような、
キャッシュレス決済口座(そのような口座を持つ事業者を資金移動業者といいます)に
振込むことにしてはどうか?という検討がされていることを知っていますか?

給与の支払い方法って決められているの?
毎月支払われる賃金は、「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(労働基準法第24条)と決められているんだよ。現金で直接払うのが原則なんだ。
でも、私は銀行振込で受け取っているけど、それはいいの?
現金払いが原則だけど、銀行振込と証券口座への振込は、「例外」として認められているんだよ。
キャッシュレス決済口座と銀行口座への振込みは何が違うの?
「〇〇ペイ」のような、キャッシュレス決済口座は、「資金移動業」という、銀行とは違う業者が開設しているんだ。大きな違いは次のような点だよ。
  銀行 資金移動業
監督官庁 金融庁 金融庁
許認可 許可制 登録制
保全方法 預金保険制度 供託、保証、信託
(現状はほぼ供託)
保全額 1,000万円を上限 全額
払戻までの期間 数日 最低3カ月~半年程度
不正利用された
場合の補償
預金者保護法
(無過失の場合は全額、
軽過失でも3/4は補償)
個社の約款による
(法による共通の
保護規定は無い)
供託:金銭や有価証券等を国の機関である供託所(法務局等)に提出し、管理を委ねること。
資金移動業は銀行のような許可制じゃないんだね。何が違うの?
銀行は大事な資産を預かる機関として、突然倒産したりすることなどが無いよう、資産要件など、厳しい要件が定められていて、それを満たすことを審査して許可されたところだけが営業できるんだ。登録制の資金移動業は、登録要件を満たせば、営業することができるんだよ。
破綻したら、資金移動業は払戻に時間がかかるんだね。
そうなんだ。最低3カ月から半年近くかかるんだよ。その間は引き出すことができないんだ。そうなると、毎月の支払いにも困るよね。
でも、全額保全する仕組みがあるんだったら、1,000万円が上限の銀行より手厚いよね?
供託の場合は、毎日その日預かっている全額を供託しているんじゃないんだよ。最大で10日間ほどのタイムラグがあるから、場合によっては破綻した時にお金が足りないという事態も起こり得るんだ。
スマホ一つで入金と支払いができちゃうから、不正利用された時も怖いね。
銀行については、不正利用された時の補償の仕組みは預金者保護法という法律で定められているよ。でも、資金移動業の場合、どのような時に補償されるのか、個々の会社で決めていて、(法律で定められた)共通の補償規定はないんだ。
賃金やその使い道などの個人情報が集まるけどセキュリティの面では大丈夫なの?
どこの会社から賃金が幾ら支払われているかというデータや、その賃金をどこで、何を買うために使っているかといった様々なデータが資金移動業者には集まることになる。でも、そうした個人情報の保護やデータの利用制限などについても、十分検討されているとは言えないよ。

賃金は労働者にとって、毎日の生活を送る上で、とても大切なものだよね。連合は、補償や安全性が担保されていない口座に賃金を振込むべきではないと主張しているんだ。