- (1)患者が疾病と診療内容を十分理解できるようインフォームド・コンセントを医療法で義務づける。また、セカンドオピニオンや、根拠のあるデータにもとづく医療(EBM)、国民・患者の参加による標準的な診療ガイドラインの普及を推進する。
- (2)医療機関および保険者に「診療情報の提供等に関する指針」を周知徹底し、個人情報保護法にもとづきプライバシーの保護に十分留意しつつ、患者の申出に応じて理由を問うことなくカルテおよびレセプトを開示し、患者による自己の医療情報へのアクセスを保障する。また、患者にとって有益な医療情報の利活用のあり方について、患者参画の下で検討を進める。
- (3)すべての医療機関に対し、患者の自己負担の有無を問わず、システム改修が必要な場合などの例外なく、明細書の無償発行を義務化する。
- (4)正確で客観的なカルテ記載のため、「診療情報管理士」を国家資格とし、当面一定規模以上の病院への配置を義務づける。
- (5)すべての医療機関において電子カルテおよびレセプト電算処理システムの導入を徹底するとともに、電子カルテとレセプトデータの保存期間を延長する。
- (6)都道府県による医療機能情報提供制度の掲載項目に、医師の履歴、技術、経験や手術のアウトカム情報、経営状況や財務情報、看護師や専門職員数等を含めるなど、患者の医療機関選択に資する情報を充実する。また、日本医療機能評価機構による医療機関の評価・認定システムを国民・患者へ周知する。
- (7)良質の医療を受ける権利、身体的安全が確保される権利、情報を得る権利、医師や医療機関、治療方法を選択する権利などを規定した「患者の権利法」を制定する。
- (8)すべての医療機関における医療安全管理体制の強化に向けて、医療安全管理委員会や医療安全管理部門の設置を推進する。また、有床の医療機関における医療安全管理者の専従配置の義務づけに向け、医療安全管理者のサポート体制を強化する。
- (9)医師の行政処分に係る「医道審議会」における審議の透明性を確保するとともに、審議会委員に保険者と患者代表を入れる。また、医師免許取消など処分の基準を明確にする。
- (10)医療事故、不正請求、脱税、犯罪などによる保険医療機関・保険医指定の取消基準を明確化し、国の権限を強化し厳格に適用する。また取消事案の具体的内容を公開する。
- (11)指導・監査における不正防止に向け、地方厚生(支)局から厚生労働省本省への報告を徹底する。また、指導・監査体制を強化し、保険者や民間保険会社などと情報共有を行いながら医療機関による不正請求への対応を強化する。
- (12)国や各都道府県に医療従事者、保険者、労使や患者代表、弁護士などで構成する医療に関し苦情の処理・解決をはかる中立の第三者機関を設置する。
- (13)患者と医療従事者の信頼関係を構築する観点から、医療事故調査制度について、医療事故調査・支援センターによる調査権限の強化、調査対象の拡大を行うとともに、調査にもとづく医療事故の原因分析と再発防止に取り組むことを法的に位置づける。また、患者と医療従事者の双方を救済するため、無過失補償制度の法制化に向けた検討を進める。
- (14)希望する人が安全・安心に子どもを産み育てることができる環境整備に向けて、出産に関しては、正常分娩も含めて健康保険適用(現物給付)とする。
-
(15)全国どこに住んでいても、妊産婦や子ども・子育て世帯が、妊娠期から子育て期までの切れ目のない支援を受けられるよう、妊娠期や産後ケアなどの好事例を横展開するなど地方自治体の取り組みを支援する。また、妊婦健康診査は、実態や費用内訳を把握・検証するとともに、地域間や施設間の差が生じないよう、地方自治体の取り組みを支援する。
-
(16)産科医療補償制度については、掛け金は自己負担とせず、国の責任で制度運営を行うとともに、補償対象の拡大を検討するためのデータ収集を進める。同時に、同制度を通じて脳性麻痺発症の原因究明と同様事例の再発防止策を医療機関へ周知徹底する仕組みを確立し、安全な産科医療の標準化と質の向上をはかる。また、脳性麻痺発症の発症リスクを国民に周知・啓発する。
- (17)自らが希望する医療やケアについて自分自身や周囲の家族等と話し合う「人生会議」(ACP※)の普及・定着に向けた国民への広報と相談支援体制の構築を推進するとともに、医師や家族との情報共有を促進し、患者の尊厳と自己決定権を尊重した医療を推進する。また、疼痛緩和や精神的ケアの充実、コーチングなど様々な観点から環境を整備し、人生の最期における最善の医療を患者自身が選択できる体制を整備する。
※ACP:Advance Care Planningの略 - (18)難病法にもとづく医療費助成の実施状況を検証し、患者救済の⽴場から、対象疾病および⾃⼰負担のあり⽅を検討する。また、幼稚園・保育所、学校などにおいて医療的ケアが必要な障がい児への医療提供を確保するとともに、難病相談・支援センターの取り組みを周知するなど、難病患者や家族などへの⽀援を強化する。(「子ども・子育て支援政策」参照)
- (19)骨髄など造血管細胞の移植を必要とする患者への医療提供を推進するため、「移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律」を強化し、造血管細胞提供者の休暇取得など就業上の配慮を含め、患者と提供者双方への支援を充実する。
- (20)必要性の高い革新的新薬、希少疾病用医薬品、低侵襲で高度な医療機器・材料の研究開発を促進するため、安全性の確保や審査の透明性確保を前提に、国内治験環境の整備や国際共同治験の推進、承認審査の効率化・迅速化を進める。
- (21)薬害など医療被害の未然防止に向け、医療人材の養成課程で被害者の声を直接聞く学習を必須とする。薬害被害者救済には、「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」の機能強化とともに、国の安全監視体制の責任の下、厚生労働省、PMDAなどの監視および評価を行い、薬害防止のために適切な措置を講じる医薬品規制行政機関などから独立した第三者機関の設置につなげる。
- (22)一般用医薬品の販売店におけるリスク分類別の販売管理を徹底する。インターネットをはじめとする郵便等販売の実態把握と検証を進める。
- (23)セルフメディケーション※の推進にあたっては、すべての人の健康確保につながるよう、低所得者に十分配慮しつつ進める。また、登録販売者の研修を充実させるなど資質向上をはかり相談体制を強化するとともに、医師、薬剤師等との連携体制を確保する。さらに、国民の医薬品の適正な使用や予防・健康づくりに資する情報発信や意識啓発を強化する。
※自己の認識する病気や症状を治療するために個人が薬を選択し、使用すること
3.安心できる社会保障制度の確立|医療政策