2.雇用の安定と公正労働条件の確保|雇用・労働政策

2-6-2.失業から良質な雇用に早期に復帰・移行できるセーフティネットを拡充する。

  1. (1)雇用保険制度の充実をはかる。

    ①雇用形態にかかわらず、すべての雇用労働者に雇用保険を適用することとし、雇用保険の適用対象の拡大(週所定労働時間10時間未満の労働者、日雇労働求職者給付の受給資格要件の緩和など)をはかる。

    ②基本手当について拡充する。

    a)法定賃金日額・所定給付日数・給付率を2000年改正前の水準にまで回復する。

    b)特定受給資格者以外(一般離職者)に対する給付制限期間(1ヶ月)について、期間短縮などの見直しを行う。

    c)災害時における雇用保険の特例措置(実際に離職していなくとも基本手当の受給が可能となる措置)について、制度利用後に雇用保険被保険者資格を取得した場合、休業又は一時離職前の雇用保険の被保険者であった期間も通算できるようにする。

    d)所得再配分と生活保障の観点から、「最低保障手当額」(仮称)の創設、家族を扶養する求職者の基本手当の手当額加算など、セーフティネットの拡充を検討する。

    ③2026年度までの暫定措置である特定理由離職者(雇止めなどによる離職者)の所定給付日数の拡充については、制度の恒久化や雇止め離職者を特定受給資格者の対象へ追加するなど、有期契約労働者のセーフティネットを確保する。

    ④雇用保険の国庫負担については、失業時の生活の安定をはかることは国の責務であり、国庫負担割合の1/4への回帰に取り組む。

    ⑤雇用保険の積立金は、給付の改善と財政運営の安定性のバランスを考慮し、適正な水準とする。なお、雇用保険の積立金は、労使が拠出した保険料のみで構成されており、その使途については労使の意見を最大限尊重する。

    ⑥雇用保険料率(失業等給付および雇用保険二事業)のあり方については、雇用失業情勢などを十分に踏まえ、雇用保険財政の安定的な運営の確保と給付水準の回復の観点から、安易な料率の引き下げは行わない。

    ⑦教育訓練給付制度については、能力開発やリスキリングの推進が国の重要な政策課題とされていることから、国の責任により一般財源で実施するよう見直しを行う。

    ⑧雇用保険を財源とする育児休業給付・介護休業給付については、少子高齢化対策が国の重要な政策課題であることから、国の責任により一般財源で実施するよう見直しを行う。

    ⑨労働保険特別会計の雇用保険二事業および労災保険の社会復帰促進等事業については、より効率的・効果的な事業として見直しを行いつつも、必要な事業は引き続き実施する。なお、雇用関係委託事業の委託先事業者の決定にあたっては、入札価格のみならず、事業内容の質を適正に評価した選定を行う。

    ⑩雇用維持の観点から高い政策効果を有する雇用調整助成金については、その仕組みを堅持した上で以下の対応をはかる。

    a)雇用失業情勢の変化に応じて要件を緩和するなど、機動的に運用する。

    b)受給申請において、虚偽の報告(労働者への休業手当が支払われていなかったなど)を行った企業への罰則を強化する。

    c)雇用調整助成金の適用対象外である「事故又は災害により施設又は設備が被害を受けたことによるもの」および「行政処分又は司法処分によって事業活動の停止を命じられたことによるもの」に伴う経済的損失を「経済上の理由」として適用対象とする。

    d)産業雇用安定助成金を恒久的な制度とするとともに、雇用調整助成金の在籍出向も活用し「失業なき労働移動」を実現させる。また、個々の労働者の希望を踏まえたマッチングが実現できるよう、出向先の確保も含め、体制の強化をはかる。

    ⑪労働移動支援助成金については、離職を余儀なくされる労働者の再就職支援に必要な場合にのみ適用されるよう、支給要件を見直し、厳格に運用する。

    ⑫65歳以上の多重就労者を対象に試行中の2つの事業所の労働時間を合算して適用するマルチジョブホルダー制度については、試行結果を踏まえ、65歳未満への適用拡大や、多重就労時の週所定労働時間の合算のあり方について検討を行う。また、対象となる労働者に対し、十分に周知・広報を行う。

    ⑬求職者支援制度の財源は、雇用保険制度から分離・独立した制度として全額一般財源で負担するよう見直しを行う。

  2. (2)公共職業安定所(ハローワーク)の機能を強化する。

    ①ILO第88号条約(職業安定組織の構成に関する条約)にもとづき、無料職業紹介、雇用対策(企業指導)、雇用保険(失業認定と失業給付)は国の指揮監督と責任により、全国ネットワークで一体的に運営する。

    ②国と地方自治体が連携して就労支援・生活支援を行う「一体的実施事業」を推進する。その際、運営協議会への地域労使の参画をはかり、求職者・利用者の利便性を向上させる。

    ③ハローワークの常勤職員を増員し、非常勤職員の常勤職員への転換を進めるなど、組織・人員体制を強化する。

    ④新卒者や3年以内の既卒者の支援を行う「ジョブサポーター」や、求職者の状況に応じたきめ細かな支援を行う「就職支援ナビゲーター」の増員、障がいや難病を抱える求職者の就労支援を行う専門サポーターの増員、「ジョブ・カード制度」の技能・評価情報の活用などを通じ、キャリア・コンサルティング機能を向上させ、マッチング機能を強化する。

    ⑤就労を希望する高齢者に対し、ハローワークの生涯現役支援窓口等を活用しつつ、本人の意向を踏まえた適切な就労支援を行う。

    ⑥障がい者の就労促進に向け、ハローワークを中心に地域の就労支援機関などと連携した「チーム支援」を強化する。

  3. (3)求職者保護のため、2022年改正職業安定法の周知・徹底するとともに、適正な履行を確保する。また、募集情報等提供事業者の規制のあり方については、実態を把握した上で引き続き検討を行う。

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