2.雇用の安定と公正労働条件の確保|雇用・労働政策

2-6-10.すべての働く者に対する職業能力開発施策と日本の成長と競争力を支える人材の育成を強化する。

  1. (1)安定した質の高い雇用へ向けた職業訓練を実施する。

    ①雇用形態や企業規模、在職・離職の違いにかかわらず、すべての働く者が自己の職業能力を最大限に開発・発揮し、安定した質の高い雇用に就くことができるよう、適切な職業能力開発機会を提供する。

    ②職業能力開発機会のより一層の提供に向けて、労働者や学生に対する職業能力開発施策に関する情報提供や啓発、事業主に対する助成制度の情報発信と周知徹底を行う。とりわけ、中小企業等における能力開発の促進を図るため、各種助成制度の周知・利用促進に加え、自社内での能力開発実施に向けたノウハウ提供や相談援助機能の強化を行う。

    ③独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が担っているセーフティネットとしての職業訓練やものづくり分野の訓練実施などについて、国の職業訓練機能を堅持した上で強化をはかる。その際、国・地方自治体・民間教育訓練機関・企業などの役割分担を明確化する。

    ④企業の事業転換や技術・技能の陳腐化により業種転換・職種転換・離職などを余儀なくされる労働者について、キャリア・コンサルティングの活用などにより、職業訓練・再就職に向けた支援を強化する。とりわけ、AIやロボットなどの新たな技術革新への対応や、政策的な人材移動を目的とした職業能力開発については、企業・個人への支援に必要な原資を一般財源で確保する。

    ⑤障がい者、ひとり親家庭の親(母子家庭の母・父子家庭の父)、生活保護受給者などについて、居住地近隣での職業訓練機会を拡充するとともに、地方自治体・地域の教育訓練機関・公共職業安定所(ハローワーク)などが一体となり、就労に向けたきめ細かな支援を行う。

    ⑥公共職業訓練施設について、訓練指導員の増員や土日・夜間・随時開講や託児施設の設置など、離職者・在職者が必要な職業訓練を十分に受講できる、受講しやすくなる環境整備を行う。また、オンライン開講に関し、受講者の通信環境や実技訓練などに配慮した支援を行う。

    ⑦在職者の自己啓発・職業能力開発を促進するため、労働時間短縮などの配慮や有給の教育訓練休暇を与える事業主への支援を行うとともに、個人が負担した自己啓発費用について一定額までの税額控除を認める「自己啓発税額控除制度」を創設する。

    ⑧国・地方自治体・地域の教育機関(高等専門学校・短期大学・大学・大学院など)が連携し、「リカレント教育システム」(学校教育を終えて社会に出た以降も、個人の必要に応じて教育機関に戻り、繰り返し再教育を受けられる循環型・反復型の教育システム)を構築し、受講促進にあたっては必要な財源を一般財源から確保する。

    ⑨正規雇用の経験が少ない者を安定した雇用に結びつける雇用型訓練について、企業側にとって活用しやすくなるような誘導策も含めて制度を整備する。

    ⑩技能者育成資金融資制度について、融資金額の増額、融資時期の前倒し、手続の簡素化、利率を独立行政法人日本学生支援機構の奨学金と同水準とすることなど、改正を行う。

  2. (2)雇用保険を財源とする求職者支援訓練と専門実践教育訓練について、積極的な利用促進をはかる。

    ①職業能力開発行政と職業安定行政の連携を強化し、公共職業安定所(ハローワーク)を拠点に全国的かつ公平・安定に一定の水準で提供できる体制を確立する。

    ②求職者支援訓練と専門実践教育訓練について、すべての対象者が受講でき、安定した質の高い雇用へつながるよう講座を開設する。特に専門実践教育訓練については、講座開設の地域偏在の早期解消にむけ、新規講座の開拓を進める。また、幅広い労働者層を対象とした、AI・ICT、バイオ、化学など今後さらなる活用が期待される技術に関する講座を指定・開設し、新技術を既存の業務に活用できる人材の育成を進める。

    ③求職者支援訓練について、ニーズに即した訓練コース整備や訓練機関の質の向上、就職支援の一体的実施など、実効性ある制度の運用に努める。また、人手不足分野における早期人材育成のために短期間の訓練コースを指定するなど、必要に応じて柔軟な運用を行う。

    ④求職者支援訓練を受講する雇用保険受給者で、基本手当受給額が求職者支援法の職業訓練受講給付金(月10万円)に満たない者への差額補填を行う。

    ⑤職業訓練受講給付金の不支給要件の1つである「直前に給付金の支給を受けた訓練の最初の支給単位期間の初日から6年を経過しない場合」について、訓練終了後に一旦就職したものの、非自発的理由により離職を余儀なくされた場合には6年のインターバル期間を短縮する。

  3. (3)労働者の技術・技能における企業横断的な「ものさし」となる職業能力評価制度を構築する。

    ①業種・職種・職務ごとに必要な技術・技能に関する企業横断的な職業能力評価制度を整備する。特に、制度の整備が遅れているサービス分野においては、早急に制度の整備・充実をはかる。

    ②国・業界団体・産業別労働組合は、連携して企業横断的な職業能力評価制度の積極的な普及をはかる。

  4. (4)労働者が職業人生を通じて主体的にキャリア形成できるよう、支援体制を整備する。

    ①離職者・求職者・在職者など、対象ごとのキャリア・コンサルティングの標準モデルを確立させ、有効なキャリア形成支援を実施する。

    ②労働者のキャリア形成を支援するキャリア・コンサルタントの質や専門性を確保する。

    ③ジョブ・カードについて、生涯を通じた訓練受講と技術・技能の証明書としての機能を果たすことができるよう、その活用を推進する。

  5. (5)「第11次職業能力開発基本計画(2021年度~2025年度)」の策定を踏まえ、状況に対応した必要な追加施策を検討する。

    ①事業主は労働者に対する能力開発の責任を有していることから、労働者へのキャリア・コンサルティングの機会を確保し、主体的・自立的な能力開発を支援する。

    ②日本の成長と競争力を支える人材を育成するとの視点にもとづき、政府(府省庁横断)・都道府県・教育機関・職業訓練機関などが連携し、バランスのとれた職業能力開発を実施する。また、その際、国と企業の果たすべき役割を踏まえ、産・学・官の持つ資源を最大限に活用する。

    ③公共職業訓練について、再就職や在職者の職業能力向上に結びつきやすいものとなるよう、産業構造の変化、技術革新、企業ニーズ、受講状況などを踏まえて訓練内容を見直し、高度化をはかる。

  6. (6)国・地方自治体・教育訓練機関・企業・労働組合・学校などの役割分担と相互連携を十分に行い、産業政策・雇用政策・教育政策と連携した職業能力開発施策を推進する。

    ①職業能力開発は雇用のセーフティネットであることを認識し、都道府県労働局や公共職業安定所(ハローワーク)との連携強化をはかり、職業能力開発行政に精通した職員を公共職業安定所(ハローワーク)に増員配置するなど、職業能力開発体制の充実・強化する。

    ②人材育成について、政府(府省庁横断)・労使・教育機関・職業訓練機関などが連携し、中・長期的視点から国としての人材育成戦略・施策を構築する。

    ③地域が主体となり、国・地域の労使・教育機関、民間職業仲介機関などの関係者が連携し、地域の特性や企業、求職者のニーズを踏まえた中期的な産業政策、人材育成施策、職業訓練プログラムを構築する。

    ④公共職業能力開発施設(国・都道府県設置)は、地域の「技術・技能センター」として位置づけ、国・地方自治体・企業が連携して、新卒者・離職者・転職者・在職者などに対し、ものづくりなどを重視した職業訓練を強化する。

    ⑤技術・技能の継承や人材の確保・育成などについて課題を抱えるものづくり産業の中小企業に対し、関係省庁の連携を強化し、人材投資促進税制の復活や高度熟練技能者の活用、人材の確保・育成に関する支援措置を拡充する。

    ⑥技能検定で複数の上位級を有する技能士について、その社会的地位を向上させるため、職業能力開発促進法上の資格として「複合技能士」(仮称)を創設する。

    ⑦雇用型訓練の1つである「実践型人材養成システム」について、本来の目的である企業における次世代を担う人材のさらなる育成をはかる。

 

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