- (1)労働者保護の視点から、内定取消しの法理など確立した判例法理を条文化するなど、労働契約法の内容を強化し充実化する。
①労働契約法が対象とする労働者の範囲を拡大する。
②ILO第158号条約(使用者の発意による雇用終了に関する条約)を批准する。
- (2)整理解雇4要件については、判例で確立した4要件は緩和しない。また判断の基準を明確にするため、4要件を法制化する。
- (3)不当な解雇を拡大しかねない解雇の金銭解決制度は導入しない。
- (4)労働基準法第15条の労働条件の書面による明示の徹底をはかるとともに、いわゆる「固定残業代」のトラブルが生じていることを踏まえ、労働基準法施行規則を改正し、書面の交付にて明示しなければならない労働条件に「法定労働時間を超える労働時間があるときの時間外割増賃金の計算及び支払の方法」を追加する。
- (5)労働基準法における就業規則の作成・届出義務の対象は、10人以上から5人以上に拡大する。
- (6)過労死問題や、若者の使い捨てが疑われるいわゆる「ブラック企業」問題に対しても適切に対処するため、国および地方自治体における労働行政を充実・強化する。
①労働基準監督官をILO が提唱する基準(労働監督官1人当たり最大労働者数1万人)まで増員する。監督の強化に向けた根拠規定を整備し、違反した場合に企業名を公表するなど労働基準法違反への適正・厳格な対応をはかる。また、派遣・請負・個人請負など、多様化する雇用・就業形態に対応できるよう改革する。
②労働基準監督署の再編整理に関する具体的な計画は、労働政策審議会の調査・審議事項とする。
③国は、地方自治体が行う労働相談への支援や労働関係調査の委託事業の充実など、集団的労使関係を扱う地方における労政行政の充実・強化をはかる。
④国は労働者の基本的な権利・義務の周知・啓発を行う労働者教育施策を行うとともに、都道府県が行う労働者教育施策について支援を行い、労働者の権利に関する理解を促進する。
- (7)事業譲渡、合併など、あらゆる事業再編において、労働組合などへの事前の情報提供・協議を義務づけるなど、労働者保護をはかるための法制化を行う。
①分割・統合やM&Aに際し、企業に労働者に対しての責任をもたせるため、会社法の中に「労働者」という概念を導入して労働者の要件を法的に明確にし、労働者が不利益にならないような措置を講じる。
②すべての事業組織の再編において、労働契約の承継や解雇の制限、その他雇用の安定に必要な措置を強化する。
③労働組合などへの事前の情報提供・協議を義務化する。
- (8)民法(債権法)改正に対応して、労働者保護の観点から労働関係法の整備をはかる。
労働基準法第115条の消滅時効の期間については、民法(債権法)と同様の5年とする。
- (9)雇用・就業形態の多様化や企業組織の変化を踏まえ、親会社および親会社経営者が子会社従業員の雇用・使用者責任を負うべきことを明確化するとともに、純粋持株会社、グループ企業、派遣先企業、投資ファンドなどにおける使用者概念を明確化する。また、グループ企業などにおける労使関係のあり方について検討を行う。